2010年2月定例会  追加議案への質疑(3月9日)
田口かずと議員

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議員定数半減について


田口議員

民主主義を後退させる3つの問題点がある

定数半減案
現行 半減
千種 5 3
2 1
6 3
西 5 2
中村 5 2
2 1
昭和 4 2
瑞穂 4 2
熱田 2 1
中川 7 4
5 2
5 2
守山 6 3
7 4
名東 5 3
天白 5 3
75 38

【田口議員】
河村市長の提案は、市議定数を現行の75から38に削減するというものです。市内の選挙区16区のうち過半数の9区が、定数1ないし2になります。市長は記者会見で、1人区の小選挙区を設定したことに触れ「県議の選挙区に準じ、市民に分かりやすい形を優先した」と述べたと報じられています。名古屋市内の県会議員選挙の各選挙区の定数は1から3までであり、合計の定数は33です。市長の区割り案を県議選の選挙区に準じて考えますと、なるほどわかりやすい。問題点も大変わかりやすくなったと思います。

そこで、民主主義を後退させる3つの問題点を指摘し、市長にただしたいと思います。

2007年4月の時の
県・市議選挙での死票率
県議(定数)と
死票率(%)
市議(定数)と
死票率(%)
東区(1) 42.1 東区(2) 25.4
熱田区(1) 33.4 守山区(6) 19.1
港区(2) 20.4 熱田区(2) 18.6
緑区(3) 19.8 昭和区(4) 16.4
無投票区 5区 瑞穂区(4) 16.2

「死票」が大量に出て、少数意見切り捨てに

【田口議員】
第1は、1選挙区で1人しか当選できない小選挙区や、いわゆる「二大政党」による議席の独占をもたらす2人区では、議席に結びつかない「死票」が大量に生み出されるという問題です。

前回2007年の県議選の「死票」率は、定数1の東区で42.1%、同じく定数1の熱田区で33.4%、定数2の千種区では39%にのぼっています。同年の県議選の市内の「死票」率はトータルで18.8%であり、同時に行われた市議選の「死票」率11.6%を大きく上回っています。2003年、1999年のいっせい地方選挙でも、市議選の「死票」率が10%台であるのにたいして、市内の県議選の「死票」率は20%台であり、小選挙区ないし少数選挙区の県議選は、中選挙区を基本とする現在の市議選よりも、はるかに多くの「死票」を生み出しているのです。

「死票」が多いということは、少数意見の切り捨てを意味します。2007年の県議選では、議席の9割は民主党と自民党のいわゆる「二大政党」が占め、公明党を加えた3党で独占されました。日本共産党および無所属の候補者の得票率は、合わせて約15%でしたが、この約15%の少数意見は議席に結びつきませんでした。

市長の定数半減案は、現行よりも「死票」を大量に生み出し、少数意見を切り捨て、民意をゆがめるものです。

市長、あなたは、少数意見は切り捨ててもよいというお考えですか。お答えください。

当落をはっきりさせて緊張感を高める(市長)

【市長】
反対に当落をはっきりさせて緊張感を高めるという議論もあって、国会の場合は一応併設的に使った。どちらをとるかという議論と思います。

無投票が多くなるのに多様性や議員交代促進になるのか

【田口議員】
第2は、定数1ないし2の選挙区では、無投票となる選挙区が現れるという問題です。

2007年の県議選では、定数1の中区、定数2の西区、中村区、昭和区、守山区の5選挙区で無投票になりました。2003年の県議選でも、定数1の東区、中区、定数2の中村区の3選挙区が無投票となっています。定数が1ないし2という選挙区では、「二大政党」が議席を独占し、少数政党や無所属候補は排除されるため、「二大政党」以外は立候補自体をためらう傾向が生まれるのです。定数を半減し、1人区、2人区が多数になれば、県議選のように無投票となる選挙区が出現するでしょう。

市長は、提案理由説明の中で、現状を省みると、「議席の指定席化、長期在職化が進み、……様々な分野・職業の方が政治に参画する意欲や機会をはばんでいる」と述べられました。

それならば、市長に聞きたい。1人区、2人区では、市民が政治に参画する意欲や機会が、ますますはばまれるのではないですか。無投票でどうして議員が早く代われるのですか。これこそ指定席になるではありませんか。

任期制限か、報酬を改めない限り延々とやる(市長)

【市長】
確かに小選挙区になった場合には任期制限ないし、非常に高い報酬を改めない限り、延々とやることになります。特に二大政党になって2議席になるとこれが一番危ない。現に無投票になっとるケースが非常に多いです。基本条例のほうには3期までと規定がしてあります。小選挙区の場合、国においても絶対に配慮しなければいけなかったと思います。いまこのままやったら、予備選も何もないから、延々と新しい人は全く出れません。そういう現状は回避しなければいけませんし、そのための工夫は私の条例案には入っている。

定数半減で1票の格差が
拡大する区
(2005年国勢調査人口)
区(定数) 現行 河村案
港区(5→2) 1.16 1.49
南区(5→2) 1.10 1.41
西区(5→2) 1.09 1.40
中区(2→1) 1.35 1.39
東区(2→1) 1.30 1.34

1票の格差を拡大し、法の下での平等に反する

【田口議員】
第3は、定数を半減する区割り案は、「1票の格差」を拡大するという問題です。

平成17年の国勢調査をもとにした「1票の格差」は、現行の定数では、最小の昭和区に対し、最大が中区の1.35倍です。ところが、定数半減の区割り案では、最小の千種区に対し、最大は港区の1.49倍であり、南区、西区も1.4倍を超え、現在より「1票の格差」が拡大します。

憲法は法の下での平等を保障しており、投票は 1人1票が原則です。ですから、本市議会は、「1票の格差」を可能な限り小さくするために、前回選挙まで十年余をかけて定数の是正に努力し、現行の定数へと改善してきたのです。ところが、市長は、「1票の格差」を逆に拡大させようとする。これでは、1票の重みにたいする市長の見識が問われるのではないでしょうか。

現在よりも「1票の格差」を拡大させるあなたの提案は、法の下での平等という民主主義の理念を後退させるものではありませんか。

市長の答弁を求めます。

1票の格差は縮小している

【市長】
1票の格差は縮小している。現行で、最大が中区の1.466倍、今度の条例案では、最大が港区1.461倍。わずかですが1票の格差は少なくなっている。

ネライは、議会の権限を縮小し、市長の強権体制の確立(再質問)

【田口議員】
1票の格差は、私は2005国勢調査で試算、市長の根拠は不明だ。2005年をもとに定数改善をしてきたので、それと比べると広がっている。

定数半減の区割り案には民主主義を後退させる問題点があることを、市長は否定できませんでした。任期の問題は定数とは関係ない。

私は、議員定数の問題は、「無駄を除く」という財政上の問題というよりも、市民の参政権の問題であると考えます。市民のみなさんは、一票を投じることによって議員を選び、それぞれの声を市政に反映させます。議員定数の削減は、市民の大切な参政権を狭め、多様な民意を切り捨てるものです。

このことに市長は反論できません。そこで、あなたは、議決に党議拘束がかかり、議員一人ひとりの意思を反映しないから、75人も議員は必要ないという論法を持ち出します。しかし、党議拘束というは政党会派の活動のあり方の問題です。定数問題とは関係がありません。定数は、市民の参政権に関わる問題であるにもかかわらず、党議拘束という次元の違う問題を持ち出さなければ理由付けができないところに、定数半減の道理のなさがあるのです。

市長の定数半減のねらいはどこにあるのか。先日の本会議でも申し上げましたが、市長は、地域委員会をボランティア議会になぞらえていますが、小・中学校区単位に「ボランティア議会」をつくれば、市町村の議会と議員はやがて無用になるという考えをお持ちです。あなたが、衆議院議員時代に発表した「河村ビジョン・庶民革命」のなかでは、市町村議会の「発展的解消」をうたっています。これは、憲法に反するたいへん危険な考えだといわなければなりません。

市長、あなたが、地域委員会をボランティア議会になぞらえて、これと対比させていわゆる「職業議員」による名古屋市議会の定数を半減しようとするねらいは、市議会の「発展的解消」を念頭に、議会の権限を縮小し、市長の強権体制を確立することにあるのではないですか。はっきりと、お答えください。

世界的に見て、明らかに75というのは多い(市長)

【市長】
ボランティアなり、ボランティアに準ずる市民並みの給与で3期ぐらいでやられる方は絶対妥協しませんよ。今度の地域委員の方もそうだと思いますよ。過去のしがらみから断ち切って本当の市民の代表者にふさわしい議員になってほしい、そういうことでいっとるんです。こんなけ長いこと続いちゃっては、新しい人は出れません。長いことやると権力は必ず癒着するんです。

議員の定数は際限なく多いほうがいいということになりますよ。そういうもんじゃない。世界的に見て、明らかに75というのは多い。

「議会改革」に名をかりたファッショ的なやり方を市民は断じて許さない(意見)

【田口議員】
任期が長いとかと、そういうことで定数の議論をすり替えるな。真摯な議論をしましょう。市長の定数半減などという極端なやり方にたいしては、市長の支援者からも異論が出ているのではないですか。「河村サポーターズ」の代表だった柳川喜郎さんも、昨年の12月10日、記者会見の場で、「『定数半減のような強烈なことはファッショ(独裁)につながる』と指摘」したと報道されています。「独裁につながる」という危惧の声は、先日開かれた名古屋市議会基本条例パブリックヒヤリングでも、来場者からあがっていました。定数削減については、このパブリックヒヤリングでも慎重な意見がほとんどでした。

市長が、「議会改革」に名をかりて、民意を切り捨て、民主主義を破壊し、強権政治をねらう、こうしたファッショ的なやり方を市民は断じて許さないでしょう。私たちは、良識ある市民のみなさんとともに、民主主義の破壊を阻止するために全力をあげる決意を表明して、質問を終わります。

 

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