2010年2月定例会 2010年度予算案に対する反対討論(3月24日)
江上博之議員

金持ち・大企業市民税減税で、市民サービス低下をまねいた。市民不在の予算を改めよ


江上議員

江上博之議員は、一般会計予算案、および自公民3党の修正案について、反対の立場から討論をおこないました。

経済危機にどう市民を応援するか

【江上議員】
日本共産党名古屋市会議員団を代表して、新年度一般会計予算に対する原案、及び修正案ともに反対の討論を行います。

10年以上つづく自公政権による弱いものいじめの新自由主義、さらに、リーマンショック以後の派遣切り、下請け切りで、景気低迷、どん底の状態が続いています。働きたいのに働き口が無い、あっても、賃金が低い。仕事そのものがない。受注の準備のために工場を閉じるわけに行かない。生活保護受給も仕事と住まいを失った方が増えています。政治の流れを変えてほしい、この国民、市民の声が、昨年8月政権交替となり、それに先立つ4月新市長誕生となりました。

市民税減税で市民サービス後退

  • 税務事務所を4カ所に集約
  • 子ども会の中津川キャンプ場の廃止
  • 子ども医療費助成制度拡大の未実施は公約違反
  • 大気汚染常時監視測定局を縮小
  • ダイオキシン分析センターの廃止
  • 私立高校授業料補助の縮小
  • 城西病院の市営廃止と緑市民病院の民営化
  • 苗代保育園、汐見が丘保育園の廃止民営化

市民の暮らしより大型事業が優先

  • 本丸御殿の復元工事関連に6億8000万円
  • 天守閣木造再建の調査100万円(総額500億円)
  • 名駅四丁目4番南(中経ビル)や大井町1番南地区の民間再開発に補助(新年度は6億円余)
  • 名古屋高速に79億円
  • 陽子線がん治療施設2682万円(20年で245億円)
  • 木曽川水系連絡導水路
  • 中部空港2本目滑走路の建設促進の負担金
  • JR博物館周辺整備に2億7400万円

*特異な歴史観、政治観のおしつけなど

  • 武将都市ナゴヤのPRに3400万円
  • 名古屋弁を押し付ける「なごや科」など
  • 政治家接待等のための特別職秘書1200万円
  • 他都市からの企業や金持ち誘致に8500万円
  • 食肉公社に疑惑の解明もせず5億円を融資

市民との共同で市政を動かす日本共産党と市民の共同でみなさんの願いが実現

  • 国保料…均等割の3%引き下げ
  • ヒブワクチンなどの予防接種に半額助成
  • がん検診に前立腺がんを加え500円一律に
  • 水道料金引き下げ…月20立方メートルまで最大月84円下げ
  • 妊婦健診14回の継続と検査項目の拡大
  • 高校性入学準備金の対象者は80人から200人へ拡大
  • 児童扶養手当の父子家庭への拡大
  • 延長保育が民間3カ所増
  • 公立園65園での1時間延長
  • 費用弁償が廃止
  • 委員会のインターネット中継

*保育料の値上げと自動車図書館の廃止を中止させる

市民の暮らし応援の予算になったか

では、どう改善するのか。この10年間を見ると、労働者の賃金が低下しています。雇用者報酬は、279兆円から253兆円へ26兆円減っています。一方、10億円以上の資本金の大企業の内部留保は、140兆円から230兆円へ、90兆円近く増加しています。景気回復のためには、大企業に社会的責任を求め、この内部留保を取り崩し、非正規でなく正規労働者を増やし、中小企業の仕事単価を引き上げる。そのために名古屋市が何が出来るか、この方向で予算を編成することでした。

福祉の構造改革路線を強行する予算

社会保障2200億円づつ毎年削減され、暮らし・福祉が疲弊しています。福祉・市民サービスを充実拡大することが市民の願いです。この願いに沿って、今まで削減された予算を増額していく予算編成が求められています。

ところが、河村市長は、金持ち・大企業優遇の10%減税で、保育料の値上げをはじめ福祉・市民サービス削減で、ますます景気低迷に拍車をかけ、名古屋市の責任を放棄する、まさに、総選挙で否定された「構造改革路線」です。市民の期待に反するものです。それでも市長は、市民サービスは一切後退していないと、代表質問に対して回答しました。

私たちは、政治の流れを変えてほしいという市民の期待に沿った予算の実現を求め、組み替え案を発表しました。以下、予算に対する反対理由を述べてまいります。

市民税減税はやっぱり金持ち減税だった

第1に、市民税10%減税が、金持ち・大企業優遇で、低所得者・中堅層には恩恵が薄く、福祉・市民サービス削減になっている点です。

市長は、金持ちゼロの公約に反して、一律10%減税にしました。減税額161億円のうち、132億円が個人市民税の所得割の減税です。4人家族年収800万円以下の所得で区切った場合の減税は、納税者の83%にあたり62億円で、減税額132億円の47%分です。ということは、残りのたった17%の納税者の方が、減税の53%分を受けるという金持ちに偏ったものです。20年度ベースでは、大金持ちには2千万円。一方、減税ゼロ、あるいは、300円という低所得者がいるわけです。景気回復には、税制度によって、金持ちから低所得者にお金を回すことこそ必要なのに、まったく逆な方向にすすめているわけです。

法人市民税は、26億円の減税です。減税額2億円以上の大企業がある一方で、赤字中小企業への減税は5千円です。これも、景気回復につながらないことは明らかではないでしょうか。

やっぱり削られた福祉・市民サービス

第2に、市長の福祉は削らないとの言明とは裏腹に、わが党の指摘してきた通り福祉・市民サービス削減を行ったことです。いくつかの例を挙げます。1点目に、保育料を午後4時で区切り、4時以降を値上げしました。子育てと仕事を両立できるようにする支援策にまったく逆行しています。市長は、国の子育て手当の増額分240億円をあげて、保育料の値上げや、第3子の無料化をやめても子育て支援策は充実している、と主張しています。

しかし、保育料の値上げ、第3子の有料化で、最高で月額7万7千円以上の負担増となる保護者が出ます。1万3千円や2万6千円の子ども手当て、あるいは、ヒブワクチン助成があってもカバーできない大変な負担増ではありませんか。国の施策に上乗せしてこそ子育てするなら名古屋へと言えるのではありませんか。保育料値上げを正当化する理由はありません。

2点目に、自動車図書館の廃止です。活字離れがいわれ、図書館から遠いところに住む、子どもたちも高齢者も楽しみにしている自動車図書館を廃止する理由がありません。短期間にわが党市議団に寄せられた署名だけでも3500名あります。市民の存続を望む声が高まっています。この事業を拡大することが文化都市名古屋を作る本来の方向ではないでしょうか。

3点目に、私立学校への結核健康診断補助の削減です。今、改めて結核患者が増えており、健康診断の充実が必要です。ところが、市長は、病気の予防が大切といいながら1000万円余削減し、保護者に負担増まで押し付けようというのです。公私間格差も広がることになります。ヒブワクチンやがんの予防同様、この施策を大切にする必要があります。これらの施策は、市民の要望も強く、各党そろって、廃止反対や、復活を求めました。

そのほかにも、金額は少なくても、市民一人ひとりから見れば切実な施策が削減されています。国・県等の上乗せ・横だし事業の見直しを行い市の支出を削減しています。市民の期待は、今以上に暮らし・福祉を充実することであり、現状維持だからよいというものではなく、ましてや後退するなどとんでもないことです。

公約違反「中3までの通院医療費無料化」

第3に、中学校3年生までの通院医療費の無料化は、市民の市長選での熱い願いであり、市長の公約であったにもかかわらず、わが党への言明も無視して行わなかったことです。健康予防にとって、気軽にお医者さんにかかれる医療費無料化は何としても進めるべき施策です。医療機関にとっても、重要な施策です。

城西病院を廃止

第4に、その医療機関である、市立城西病院の廃止、緑市民病院の指定管理者制度導入のため一般会計からの繰り出しを行うことです。昨年3月、5年を目途に、当面、20年度から22年度の3年間の計画として「名古屋市立病院改革プラン」を発表し、各病院が必死に取り組んでいます。そのプランに即して「名古屋市立病院のあり方を考える有識者会議」を昨年7月に発足させると、あっという間もない9月7日、城西病院の廃止と緑市民病院の指定管理者制度導入、要は、名古屋市の医療責任放棄政策が明らかにされました。あくまで、有識者の意見ですから、採用するかどうかは市が検討して決めるはずですが、河村市長は同日、「できる限り民間に任せたほうがいい」と発言し、市内部の検討もなくそそくさと廃止を打ち出したのです。一連の動きは患者や市民に全く知らされず、廃止ありきのシナリオなのではありませんか。以後、病院局は、市長の発言を推進する方向で動き、今回の予算編成になりました。

国の社会保障2200億円削減をやめ、医師不足解消や診療報酬引き上げの声が高まる時に、名古屋市は市民の命を守る病院を放棄するのでなく、維持すべきです。

環境行政を大幅に後退

第5に、環境問題です。10月にCOP10を開催するにもかかわらず、平針の里山を守ることには消極的な一方、環境科学研究所の廃止・見直しをする、大気汚染常時監視測定局を削減し、16区にある保健所の公害部門を4か所に縮小するなど、地球環境を守る科学的な施策を後退させるのは、時代の要請に逆行するものです。

児童福祉センター跡地などを売却

第6に、減税のために、昭和区のや、名古屋駅前の新明小学校跡地をはじめ総額70億円を超える土地を売払う問題です。歴史的に貴重な土地をいとも簡単に減税の穴埋めに売払っていいのでしょうか。その土地を確保するために先人が行った労苦を無視し、これからの名古屋の発展にも支障をきたすものです。

市債をどんどん発行、借金漬けに

第7に、市の借金、市債発行を増発する問題です。減税の穴埋めに、行政改革推進債50億円、臨時財政対策債80億円を増発します。行政改革の名で、福祉・市民サービスが削減されてきました。地方交付税のかわりの臨時財政対策債も地方交付税不交付団体の名古屋市には、国から元利償還金は、きませんから市には負担増です。大企業や金持ちのために市が借金する理由はありません。

そもそも景気回復策が必要なとき、市民税減税は効果があるのでしょうか。名古屋市が行った調査でも、「減税に伴う税収の減少分を補うほどの経済効果は見込まれていない」と述べているではありませんか。さらに、この調査は、歳入だけ見ていますが、市外からの人口増による歳出増には触れておらず、財政は厳しくなるばかりです。

地元応援より他都市の金持ち誘致

そこで第8に、まるはち総がかり住んでちょう!ナゴヤ大作戦です。8500万円は効果不明で、ムダ使いとなる点です。大企業、金持ち減税で、市外から人、企業を呼び寄せようという前に、景気回復のためには、市内の労働者や中小企業を実態調査し、工場の光熱費や固定費の援助こそ求められています。融資とともに仕事おこしです。3万人の職員が、この市内の中小企業をくまなく回り実態調査を行なってこそ意味があり、職員も仕事のしがいがあるでしょう。

特異な政治観・歴史観の押し付け

第9に、住民自治の拡大という位置づけとする地域委員会が、実は、名古屋市の行政責任を放棄した「福祉の受け皿」として行政機関として位置づけられ、さらに推進しようとしていることです。名古屋市政をチェックする議会となりえないことも明らかです。地域の自治を拡大する仕組み作りを地域の人たちと作っていくことこそ大切です。また、郷土学習「なごや科」の推進や「武将都市ナゴヤ」の発信など、河村市長の特異な政治観・歴史観を市民に押し付ける事業は中止すべきです。

疑惑解明もせず食肉公社へ5億円の貸付

第10に、財団法人名古屋食肉公社への5億円の貸付は食肉公社が行う冷蔵庫賃借契約には疑問点が解明されておらず、認められません。本会議では、この問題を追及したわが党議員の質問に対し、日ごろは、自由に答弁する市長が、用意された答弁を棒読みする姿は、真剣に行政責任を果たそうという意欲を感じないものでした。日頃から「外郭団体改革」といいながら、食肉問題では、このような姿勢となるのは、情けないではありませんか。公社の責任を明確にし、監査報告の通り、安易な税金投入はやめるべきです。

ムダと浪費の大型事業にメス入れず

第11に、本来、行財政改革というのであれば、市民生活にとってムダで浪費になるものを見直すことです。しかし、そういう行財政改革にはなっていません。名古屋城本丸御殿建設をなぜ急ぐのでしょうか。さらに、500億円といわれる天守閣の木造復元まで進めようというのです。名古屋城の整備では、石垣などすでにある文化財の保存こそ大切ではないでしょうか。目を向けるところがまちがっているのではないでしょうか。

陽子線がん治療施設建設も3ヶ月の凍結を経て、結局、継続です。名古屋市単独で行うものではないと、市長も認めるなら、もっと、国や東海三県の知事らに新建に要請すべきです。しかし、そういう市長の姿勢が見受けられず、それならば、一刻も早く撤退すべきでしょう。

徳山ダム導水路事業の凍結は当然ですが、国や関係各県に対する働きかけには疑問を持ちます。相手側から厳しい意見が出るのは名古屋市政としてもマイナスです。

巨額な内部留保をためこみ、JR東海の鉄道博物館づくりに名古屋市が多額の税金を投入することはやめるべきです。

さらに、大井町1番南地区などの超高層建築物への補助も取りやめるべきです。

市民運動で前進面も

以上、一般会計予算に対する反対理由を述べてまいりました。今回の予算には、国民健康保険料の均等割3%引き下げ、がん検診の充実、予防接種の助成、水道料金の引き下げなど、市民要求にこたえたものもありますが、効果は小さく、範囲も限られています。161億円の減税によって、福祉・市民サービスが削減されており、抜本的に見直す必要があります。

やっぱり組み替えが必要

そこで、私たちは、予算の組替を提案いたしました。

第1に、大企業・大金持ち減税を見直し、「行財政改革」の名による市民サービス削減をやめさせる。そのために、個人市民税減税は、低所得者や中堅層に限りました。また、法人市民税減税は行いません。第2に、経済危機から市民の暮らしを守り、福祉・教育・子育て重視の予算に転換する。中学校卒業までの通院医療費無料化の実現もできます。第3に、不要不急の大型事業は中止・見直し、財政の健全化を図ることを主な内容にしています。

3党修正案では本質が変えられない

では、三党修正案はどうでしょうか。保育料の値上げ中止など子育て支援の復活や、自動車図書館継続など市民運動や署名活動を反映したわが党との一致点はあるものの、修正案には、原案を抜本的に組替えて市民の暮らしを守り、景気を回復する予算とまではいえません。それは、金持ち減税を認め、福祉・市民サービス削減の減税を認めたうえでの修正だからです。さらに、四大プロジェクトをはじめ大型開発など市民にとって不要不急の事業にメスが入っていません。

減税を認めたことが間違いだった

私たちは、市民税10%減税について、1 市民生活の支援といいながら、非課税者など低所得者への施策がない、2 金持ち減税である 3 行財政改革の名の下に、福祉・市民サービスを削減するものである。と指摘してきました。市長は、この問題点の指摘に対し、公約に反対するものだと反論してきましたが、問題点の指摘に対し答えてこなかったのは市長です。今年1月になって、やっと具体的な内容を、福祉・市民サービス削減という形で明らかにしてきました。私たちの予想通りの市民生活削減でした。ところが、三党は、昨年の12月の段階で、もう、市民税10%減税に賛成していました。減税の問題点が明らかなのですから、改めて、金持ち減税に反対した上で、福祉・市民サービスを守り、景気回復策を実現する方向を明らかにすべきです。

政治の流れを市民本位に変える

政治の流れを変え、市政を市民の立場で、前へ進める予算の実現に全力をあげることを申し上げて一般会計予算の原案及び修正案に対する反対討論とします。

民自公の修正案の概要(歳入歳出それぞれ 361,258千円 減額する)

変更する内容 予定額  
総務費 総務管理費 特別職の市長秘書設置 △ 10,324 削除
地域委員会のモデル実施 △ 428,956 新規なし
まるはち総がかり住んでちょう!ナゴヤ大作戦 △ 25,000 削除
健康福祉費 公衆衛生費 子宮頸がんワクチン任意予防接種費用の児助成 36,570 半額を全額助成に
私立学校等における結核健康診断補助 10,791 継続する
子ども青少年費 子ども青少年費 放課後子どもモデルプラン事業 △ 75,762 追加実施は見送り
留守家児童健全育成事業助成 9,000 増額
トワイライトスクールの実施 45,612 放課後モデルプランの代替
子ども医療費の助成 △ 192,344 見積もりを削減
環境費 環境保全費 「日本一おいしい空気のまち・なごや」の調査 △ 3,000 削除
市民経済費 産業費 まるはち総がかり住んでちょう!ナゴヤ大作戦 △ 49,704 新規は削除
産業立地促進助成 △ 10,000 新規を半減
住宅都市費 都市計画費 久屋駐車場経営費 △ 100,000 経費削減
教育費 教育総務費 海外演奏家等による音楽鑑賞の推進 △ 3,900 減額
    郷土学習なごや科の推進 △ 29,174 削除
  小中学校費 学校支援委員会の設置 △ 3,678 削除
  私学振興費 私立幼稚園就園奨励金 52,300 年収680万円以下5千円上乗せ
  涯学習費 自動車図書館 30,250 継続
諸収入 保育料 第3子以降保育料無料を継続、2段階保育料はやめる △ 341,748 現行制度を維持

 

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