2009年6月定例会 個人質問 田口かずと議員(6月25日)

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地域委員会(仮称)について


田口議員

どういう点で”日本初”なのか

【田口議員】
私は、地域のことを住民自らが決定する仕組みを構築するという地域委員会は、住民のかかわり方と活用次第では、住民自治を強めていく上で役立つシステムであると考えています。一方で、地域の自己決定・自己責任論が、「官から民へ」という考え方とセットになって持ち込まれると、地域委員会が、行政責任を棚上げした“安上がりの市民利用”になりかねないという懸念も抱いています。

市長は、先の所信表明の中で、地域委員会によって最も「都市内分権の進んだ街ナゴヤ」をつくると述べられました。ところが、全国の自治体の中には、地域委員会と似たような「都市内分権」の仕組みをすでに構築しているところがあります。たとえば、住民自らが、地域課題を解決するために予算の一部の使い途を議論し、決定するという点では、大阪府池田市が、小学校区を単位として地域コミュニティ推進協議会を設置し、この協議会に予算案の提案権を持たせています。豊田市でも、地方自治法上の制度として確立した地域自治区の地域会議が、予算案の提案ができる地域予算提案事業を始めています。予算の限度額は、池田市は一小学校区あたり600万円から700万円、豊田市は一中学校区あたり2000万円と小さいですが、仕組みは本市に設置しようとしている地域委員会と同じではないでしょうか。

また、委員の選出に準公選制を採用するという点では、すでに新潟県上越市の地域協議会が実施しています。

市長は、地域委員会の創設は、どこの自治体も実施していない“日本初”の政策といいますが、これらの先行事例と対比して、どういう点で“日本初”なのか。地域委員会を設置する理念や目的について明快な答弁を求めます。

選挙と予算提案権を組み合わせたやり方は初めて(市長)

【市長】
「選挙をきちっとやる、予算についての一部の使い途を決定する」ことをはっきり組み合わせたやり方ははじめてです。それより、いわゆる都市内分権、住民自治いうか、仮に中学校単位とすれば1億円ということを分権して住民に決めていただく。それで、たとえば街づくりとか、子育て、介護、将来は地域の医療とか防犯、文化・スポーツ、そういうものをみなさんの手にゆだねるということまで実現しようとした街は間違いなく始めてです。今後の課題としては、そういうことをやった場合、住民の皆さんにどういうメリットがあるかをお知らせすることが私の使命になると思っている。

小中学校区を混在させるモデル実施は安易

【田口議員】
「地域予算」による行政サービスの範囲をより広く設定することを重視するならば、中学校区単位が考えられますが、中学校区というのは住民の帰属意識が弱く、「小学校区単位での予算の奪い合いになって混乱するかもしれない」という心配の声もあります。私は、住民自治を強化するという観点を重視するならば、学区連絡協議会という地域コミュニティ組織が存在している小学校区単位がふさわしいと考えます。

プロジェクトチームでは、どういう観点を重視して、地域の範囲について検討されているのか、山田副市長にお尋ねします。

「名古屋市は……モデル学区について、中学校区と小学校区のどちらかに限定せず公募する方針を固めた」と報道されましたが、果たしてこれでよいのでしょうか。住民自治の仕組みを構築する際に、地域の範囲の設定はきわめて重要な課題であり、先行する自治体でも、小さな単位にするのか、より大きな単位にするのか、それぞれのメリット、デメリットも出し合いながら、議論が深められている課題であります。

十分な議論を経ないで、小中学校区を混在させて、とにかくやってみて検証するというのは、あまりに安易なやり方ではありませんか。合わせて答弁を求めます。

いろいろ試行したい(副市長)

【山田副市長】
住民主体によるユミュニティ活動は、長年、小学校区単位で設置されている学区連絡協議会を中心に進められてきた現状を考えると、小学校区単位の方がモデル実施の円滑な導入が期待できる。

一方、中学校区単位で考えると、従来のコミュニティの範囲を超えた広域的な視点での住民自治の取り組みが期待できる。

このようなことからモデル実施に際しては、様々な地域で試行できるよう想定し、いずれの範囲が適切であるか本格実施に向けた検証をしていく。

「地域予算」への住民の合意形成が重要

【田口議員】
数人の地域委員会委員の個人的な意見でお金の使い途が決められたり、不適切な目的のためにお金が使われたりしてはたまりません。そのためにも、「地域予算」の使い途にたいする住民の合意形成が、きわめて大事であります。住民の合意形成を図る上で、区政協力委員や各種地域団体の代表などによって構成される「諮問会議」を設置するといいますが、その「諮問会議」に諮るだけでなく、住民アンケートを実施したり、自治会・町内会単位で住民懇談会を開いたりするなどのプロセスが必要ではないでしょうか。

豊田市の地域会議の地域予算提案事業でも、事前に地域住民や住民自治組織にたいするアンケート調査や聞き取り調査を行ない、地域予算案の案を作成した後には、地域説明会や意見交換会の開催、広報紙による住民への周知などを行ない、住民の合意形成のために、相当の手間をかけています。

私は、「地域予算」の使い途を決める過程で、住民の合意形成を重視してこそ、住民自治の水準を高めることできると考えるものであります。

「地域予算」の使い途にたいする住民の合意形成を図るために、町内会・自治会を基礎にして、アンケート調査や住民懇談会などを行う考えはありませんか。山田副市長の答弁を求めます。

諮問会議の設置などを検討(副市長)

【山田副市長】
地域委員会で「地域予算」を決定するにあたり、住民のみなさんが会議に参加して、しっかり議論できるようにするとともに、地域団体等で構成する諮問会議の設置やその活用を検討するなど、住民の意見ができるだけ反映されるようにしたいと考えている。

いずれにしても、今後、様々な方法を検討していく。

実施に向けたプロセスは民主的に

【田口議員】
市長は昨日の答弁の中で、「秋には地域委員会の姿が見えないといけない」と述べられましたが、モデル実施の地域を選定する時期について、市長はいつごろを考えているのか、まず伺います。

7月中にモデル地域を選定するなどということは、到底無理だとしても、来年度の予算化に間に合わせるためには、委員の選出や地域委員会での「地域予算」の使い途の議論に要する期間を考慮しますと、どんなに遅くとも9月中には地域を選定する必要があるでしょう。したがって、きわめてわずかな期間にモデル事業の実施内容を確定しなければなりません。その過程では、市民や地域団体などへの説明や意見を聞く機会を設けなければならず、議会への丁寧な説明も当然必要です。

プロジェクトチームの会議資料では、市民や地域団体などへの説明や意見聴取について、「進捗具合に応じて複数回、きめ細かく実施する」とされていますが、具体的にはどのように実施されるのですか。地域への説明会は小中学校区単位ぐらいで開かなければ、モデル地域に手を上げる地域は出てこないのではありませんか。また、パブリックコメントを実施する考えはありませんか。市長の答弁を求めます。

秋の早い時期にモデル地域を選定(市長)

【市長】
わたしは確かに7月ぐらいにやれんかといったが、来年の予算では実行したいので、どこかで選挙をやって地域の皆さんが決めた予算を2月の議会に提出しなければいけない。そうなると秋深まったころには地域の委員会ができていないといかん。となると秋に入った辺、モデル地区はなるべく早いほうがいいという認識でして、とにかく早くしなければいけない。

市民や地域団体への説明方法ですが、すでに市役所に見えた学区関係の人もあるし、区政協力委員のみなさんのところとは話し合いもしているが、たたき台がないことには何ともならないの。一応たたき台ができたので学区連絡協議会というきちっとした組織でなくても、何名かいれば、そこへ出て行って、「かくかくしかじかこういうものだ、みなさんのことはみんなで決めて、それをやると住民にどういうメリットがある」とか、そんな説明を大至急いろんなところで開きたい。

地域委員会と町内会・自治会との関係はどうするのか(再質問)

【田口議員】
地域委員会についてですが、市長は、地域の皆さんがお金の使い方を決めてもらいますよと、医療や子育て、文化・スポーツ、防犯と、こんなことが決めれますよ、と答弁されました。自分たちの地域のことを自分たちが決めることはいいことです。ただ忘れてはならないことは、名古屋市民であるならば、どこに住んでいても、福祉・医療や保育などの基本的な市民サービスが、平等に享受できる権利があるということをきちんと押さえて、地域委員会のあり方について検討していただきたい。

そのうえで市長に再質問します。

実施に向けて、市長は、秋の早いころには地域を選定したいとおっしゃいました。9月ですか。あと2か月足らずしかない。しかし山積している課題は山とある。昨日の議論を聞いていても具体的な答弁はありませんでした。今日の私の質問にも住民合意の話を聞いても具体的な仕組みはおっしゃいませんでした。課題は山とある。一方で市民の皆さんは地域委員会のことがよくわからない。今日傍聴に来て見える方もよくわからないという思いを持って見えると思います。そういう中で、市長は数名のところでも出て行って説明しますとおっしゃいましたが、本来なら小中学校区単位くらいで説明会をやらなきゃいかんでしょう。パブリックコメントやるかやらないか、はっきりした答弁がありませんでした。

「日本民主主義発祥の地なごや」をこの地域委員会で作るんだというんなら、制度の内容を定めるまでのプロセス自体が、民主的でなければならないとおもいます。

「民主主義発祥の地」にふさわしい市民的な議論をどのように起こすのか、具体的にお答えください。

もう1点、住民の合意形成にかかわって、地域委員会と町内会・自治会との関係について伺いたいと思います。

地域課題を解決するための予算の使い途を決定する権限は地域委員会が持ち、町内会は、その代表である区政協力委員が諮問会議で意見を求められるだけ、という関係でよいのでしょうか。

地域の中で、住民の意思のとりまとめをしている組織は町内会であります。もちろん、町内会の運営においては、私も、自治会長を務めておりますので、自戒の念で申し上げるのですが、なおいっそう民主的で公正な運営が必要でしょう。しかし、だからといって、地域において共同の利益、すなわち共益を代表する町内会の存在を否定することはできません。

ところが、辞任されましたが、経営アドバイザーだった後氏は、あるシンポジウムの席上で、地域委員会のような組織ができた後の、町内会の姿について次のように語っています。

「公選制の……地域協議会ができれば、明らかにそこが公式の代表者だということが名実ともにはっきりすると思う。それとの対比で町内会というのは一民間組織であるということになる」、町内会のような「地縁組織の整理ができる」と後氏は語っています。

そこで、市長に、地域委員会が創設された場合における町内会・自治会の位置づけについて伺いたい。私は、地域予算の提案権を実効あるものにする上で、住民合意組織としての町内会・自治会の果たすべき役割が、ますます大きくなると思いますが、いかがお考えですか。それとも、地域委員会ができれば、町内会は整理されていくだろうとお考えですか。以上、答弁を求めます。

どういうメリットがあるかを皆さんに知らせる(市長)

【市長】
そこは大事なところで、私の親もやっとりまして、みなさんボランティアでどえりぁあ大変で、決まった仕事以外もやらされて苦労している。大きく変わるのは、今までの活動は市役所や区役所が決めたことをやってきたのが中心。今度は180度変わる。みんなで決めることになる。これが庶民革命のゆえん。その時にお金がなしでは何にもらんのではいけない。予算編成権を渡すことは法的にはできないようだが、考えるところを地域に持っていただくには、やっぱり選挙で選ばれた人でないと無理です。老人会長さんや区政の委員長に1億、自由に使ってとはいきません。皆さんそうおっしゃる。なぜか、税金だからです。

そういうことなので、委員に立候補することも結構ですし、パトロールや子育て、スポーツ、文化などの活動が始まっていくと、今ある団体、連絡協議会の団体にさらにご活躍いただく、福祉関係なんかよく知っている、女性会のひとはタダでものすごく働いている、実際やっている。そういうところの力を借りてやっていかないかんとなることは明らかで、もっと活躍していただくようになる。

お金があってできる。若い人の雇用の場がものすごう広がる。なぜか、縦割りの補助金が上からいくのと、地域にまとまっていくのとでは効率が圧倒的に違う。中間搾取がなくなる。地域の団体にはさらにご活躍いただくことになる。一刻も早く、どうゆうメリットがあるのかを住民の皆さんにお知らせする活動を一刻も早く、やらないかんと思っている。

町内会・自治会に依拠しない地域委員会づくりは形骸化のおそれがある(意見)

【田口議員】
最後に、町内会・自治会に依拠しない地域委員会づくりが想定されますと、地域委員会は、地域住民に基盤を持たない根なし草の組織となり、形骸化してしまう恐れがあるということを申し上げておきます。

地球温暖化対策について

地球温暖化の原因について市長はどう認識しているか

【田口議員】
2007年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した第4次評価報告書では、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い」と指摘するとともに、「気候システムの温暖化には疑う余地はない」と結論付けています。産業革命以降、人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やして使用することで、二酸化炭素の排出を大量に増やし、気温が上昇しているという地球温暖化は、疑う余地がないと思います。

ところが、「二酸化炭素が気温変化を招くようなことはない」「地球温暖化への人間の寄与は見られない」「温暖化の主な原因は太陽活動だ」といっている論者が一部にいます。私は、こうした議論は、世界中の科学者の知見を結集してIPCCが導き出した結論を否定するものと言わなければなりません。

そこで市長にお尋ねします。市長のマニフェストには、「地球温暖化」という言葉こそありませんが、「低CO2の街」という言葉はありますので、よもや二酸化炭素の増加が温暖化の原因ではないというような考えは持っておられないとは思いますが、地球温暖化の原因についての認識をお聞かせください。

IPCC判断には従う(市長)

【市長】
IPCCも温暖化があることは断定している。その原因が温室効果ガスということもほぼ断定している。温室効果ガスの主たる要素はCO2だと言っているので、世界の大眼目には従っている。

日本は温帯モンスーンで雨がよくふり、住みやすい気候なので、日本の風土を十分頭に入れた温暖化対策をしなければいけない。

CO2削減の2020年までの中期目標は30%を

【田口議員】
次に、CO2削減にかかる2020年までの中期目標について伺います。わが国の中期目標は、05年比で15%削減、基準年の90年比では8%削減というものであり、先進国に90年比で25%から40%削減を求めたIPCC報告に応えた科学的で、野心的な削減目標とは到底いえないものであります。

それでは、環境首都をめざす本市の中期目標はどうするのか。「脱温暖化2050なごや戦略(仮称)」のたたき台では、2050年までの長期目標については、CO2排出量の8割削減をめざすとする一方で、中期目標については、一人あたり15%から25%の削減という目安が示されているにすぎません。

私は、昨年の11月定例会で、中期目標として90年比で30%削減を提案しました。この目標は大変困難でしょうが、この困難を打開することこそ、地球温暖化抑止で果たすべき大都市名古屋の責任であると考えます。

市長、2020年までに30%削減という野心的な目標を掲げる考えはありませんか。答弁を求めて、質問を終わります。

中期目標は検討中(市長)

【市長】
市のほうで2050年を見据えた有識者による検討会をやっており秋までにとりまとめを行うということなのでそれをご期待いただきたい。目標にはいろんな意見はあるが、マイナス目標を決めた所は、基準設定年が日本はうまくいかず、実際はマイナスがプラスになってしまって、それが当たり前になってはいけないと思う。

 

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