2009年6月定例会 個人質問 さとう典生議員(6月26日)

木曽川水系連絡導水路事業について


さとう議員

水需要予測は過大ではないのか

【さとう議員】
先日の代表質問でも論議になり、市長の答弁は撤退の決意が伺えるものの、上下水道局長の答弁はこれまでの説明からは出ていないようでした。この問題では市長のいわれるように頭を180度切り替える必要があります。

これまで、私ども日本共産党は徳山ダム事業への参加は止めるべきだ、と求め、徳山ダムの水は名古屋市に必要がないことを指摘しました。

そして、5年前、本体工事着工前の時期に私は本会議場で、松原市長にダム建設への参加を考え直すべきだとただし、水需要予測が過大だと批判しました。

そして、2年前には連絡導水路事業には参加しないことを求めました。このように、重要な時期に事業の転換を求めてきた立場から今回の市長の撤退表明におおいに賛意を表明するもので、一刻も早く本市として撤退を決定するよう求めます。

以下、なぜ徳山ダムの水が必要ないのか明らかにして、3点市長に質問します。

まず、水需要予測が過大だという点です。

平成27年、2015年に1日最大給水量は124万トンになるというのが当局の予測です。給水実績を見てみると、1日最大給水量の過去最高は昭和51年の122万トンです。当局が(124万トンの)基準にした2000年は112万トン。その後、増えるのではなくて、下がり続けて2007年は101万トンとなっています。1日の平均給水量では2000年で86万トンですがこちらも下がって、2003年からは81万トン台です。需要は全然伸びていないというのが現実です。

しかも、これからのエコロジーやグリーンニューディールなどといった環境配慮型の社会へという動向を見れば、一層、節水が進むと思われます。さらに、少子化で人口も減るわけですから、とても当局の予測のようにはなりません。

これまでの水源として木曽川に求めてきた水利権を合わせれば、給水可能量は1日あたり176万7000トンと余裕たっぷりです。全国で比べても、水利権と実際の使用量を比較した水源利用率という指標では、東京都の70.8%に対して、本市は47.3%、と水が余っていることは一目瞭然です。

本市のこれまでの水需要予測は過大なものだと私は考えます。

河村市長も同様に水需要予測が過大だと認識をしておられると思いますがいかがでしょうか。お答えください。

低く修正してきたが、まだ甘い(市長)

【市長】
水需要予測は低く修正してきたんですけど、まだまだ甘いではないかと思っている。市として決めるというのは、また別個にやることになっております。水源に合わせて水需要をつくったんではないか、といわっせる学者もいらっしゃる。

渇水時には結局使えない

【さとう議員】
木曽川流域に雨が降らなかったらどうするのだ、と、当局は平成6年の渇水を引き合いにします。幸い名古屋は断水せずに乗り切れたが次は無理だ、だから徳山ダムの水を、と木曽川水系の渇水対策が徳山ダム事業への参加理由とされてきました。

この平成6年の渇水時には、市民に節水への協力を求め、いよいよという時に農業用水の協力を得て水利権を使わせてもらってしのぎました。過去最悪といわれた渇水を、本市は木曽川の水だけで乗り切りました。やればできるわけで、今後も、この経験を生かせばいいわけです。

ところが、ダムを造りたい国は木曽川水系のダムの能力を59%程度に見積もる「利水安全度の低下」という考え方を持ち出しました。木曽川に雨が降る割合が減ったので、ダムの水を貯める能力が低下する、というのです。しかし、この考え方は木曽川以外には使われていないので、私には徳山ダムを造るために行った数字の操作だとしか思えません。国のこの考えを受けて、上下水道局は、「渇水時には『利水安全度の低下』によって、木曽川からは118.4万トンしか供給できない。これでは先ほどの2015年の需要予測124万トンに対して不足するので、その分を徳山ダムから給水する」と説明してきました。

ところが、実際には先ほども紹介したように、本市の1日最大給水量は2007年で101万トンですから、この「利水安全度の低下」で考えたとしても十分まかなえることになります。これが一つ目の疑問です。

そして、その説明では「徳山ダムの水があれば、節水しなくてもよい」と受け取れるわけですが、この点に、二つ目の疑問が生じてきます。それは、渇水時の取水制限は、その時期に使っている給水量の実績を基に行われるので、本市の場合、最大給水量ベースではおよそ100万トン、平均給水量ベースではおよそ80万トンが基準になります。ですから、本市が徳山ダムを入れて、184万7000トンの水利権を確保していても、それは反映されないことになります。渇水の時に必要だといって、徳山ダムに参加しても、いざというときには役に立たないわけです。

このように、検証すると、どう考えても、名古屋市民にとって徳山ダムの水は一滴もいらないということになります。水利権を持っていればダムの維持費も払い続けなけれないけません。 そこで、市長に導水路事業事業からの撤退だけでなく、必要のない徳山ダムの水利権も放棄することを求めます。市長の決断をお聞かせください。

金は払うので水利権放棄はできない(市長)

【市長】
徳山ダムの水利権について、悩ましいが、金は払ってしまったので、作ってしまった分についてはお金を払うので、その状況で水利権を放棄してしまうと市民は何のために払ったということになるので、あと300億円程度ですか、払うんだったら水利権放棄は苦しい。戻してもらえるんだったらいいが。

連絡導水路事業そのものの見直し、中止を

【さとう議員】
愛知県でも、水需要が伸び悩み、徳山ダムの水が必要なのかという議論が興っています。過日、導水路事業への参加について、「過大な投資だ」として監査請求が行われ、却下されたため、住民訴訟がなされました。法廷の場で「水がいるのかどうか」が議論されることになります。

岐阜県では、導水路が県内を通過するので、環境への影響はどうかが議論になっています。119項目の意見が出され、知事は「県民の納得するまで、着工は認められない」と表明しています。また、住民団体は「長良川に、揖斐川水系の水を流すことによる環境破壊は深刻だ」と警鐘を発して、2万5000の署名を提出しました。

一番の問題は、徳山ダムの水を渇水時に木曽川に流すという、環境用水という国の考え方に根本的な疑問が突きつけられていることです。木曽川のヤマトシジミを守るためには、木曽川大堰の下流で毎秒50?を流さないといけないという、国の主張に対して、科学的根拠がないという学者からの指摘があります。また、木曽川のシジミは守るが長良川のシジミは全滅してもよかったのかと、今度は長良川河口堰の正当性にも跳ね返っていきます。

このように、徳山ダムや連絡導水路事業を推進する側の論拠の矛盾が明らかにされ、批判が集まっています。導水路事業着工前の今こそ、再度、きちんと議論する絶好のチャンスです。市長の発言は閉塞した状況を切り開きました。この際、本市が撤退するだけでなく、愛知県など3県と国に働きかけて、連絡導水路事業そのものの見直し、中止することを求めるべきです。

そこで、市長にお尋ねします。関係者を説得し、連絡導水路事業そのものを中止する働きかけることも、河村市長の責任だと思いますが、いかがでしょう。お答えください。

説得ではなく、ひたすら説明しお願いする(市長)

【市長】
導水路事業の撤退への説得を各県にできないかということだが、まだ市としては、個人的な、議員としてやってきたことはあるが、説得ではなく、ひたすら説明してお願いしているというところだ。

政・財・官の癒着構造が問題だ(再質問)

【さとう議員】
ほんとは市長と認識はおおむね一致していると思うので、きちんと当局にデータを出してもらって考えを変え、そして当局が市民に対しこんな点が市としても違っていたと丁寧に説明して理解を求めるべきだ。ひたすら説明するだけだというが、3県や国との関係もあり、本市は撤退するだけでなく導水路事業はやめるべきといくためにもデータをきちんと説得していただきたいと思います。

実は当局も「水が余っている」ことは十分認識していると思います。10年前、環境水道委員会で、水源問題をいうなら、節水のため「雨水を貯めて浄化し、中水・雑用水として、水撒きやトイレ用水に使うとか、雨水をミニダムのようにして大きな建物をつくるときにシステム化して水需要を減らしたらどうか、都市高の雨をためて使うとかと提案したら、下水道局は「名古屋は水が余っているから必要ない」と答弁した。職員の中にもそういった実態を分かっている人がいるので、市長から言っていただくことが必要です。

もう1つは、水あまりがわかっているのになぜ、ダムを造り続けるのか。いろんな口実が言われる。市長も長良川河口堰に対してもダムということで問題意識を持って見える。なぜかと言えば、600兆円(当初、その後730兆円)の内需拡大をすると米と約束した。この中で道路工事やダム工事などで内需拡大を図ってきた。さらにゼネコンがダムを受注して、政治家に献金をするという、金丸事件をはじめ、西松建設の事件のような政・財・官の癒着構造があるとおもいます。

そういう点で行くと、今回、市長が導水路事業から撤退するということで行くと、政財官の癒着構造の中でダム建設を続けるということで、これに対して市長の撤退決断は大きな打撃を与えると思う。きちんと撤退できれば、名古屋からダム建設を見直す大きなきっかけになり全国に広がると思うが、市長の考えを聞きたい。

地方財政法5条の廃止を(市長)

【市長】
なぜこんなことが続くのか。国は民間で余った金が地方財政法5条で自治体が使えないんです。膨大な金が国債という形で国に入っていて、仕事をやらないかん状況になっている。それの分担金でもないが、また金を召し上げていくという構造で、まあ困ったもんですわ、これ、はっきり言って。根本構造を改めるには、民間でお金をたくさん使う、投資が活発になる、地方財政法5条は廃止してもらわないかん、そうでないと地方自治体の経営はできないです、実際は、ま、そんな風に思ってます。

市民の皆さんに、水が余っ取るかどうか、渇水のときには渇水・渇水というがどうなのか、ということを分かってもらわなければいけないので、近く討論会を開かせていただいて、もっと理解が深まるようにやらないかんと思っています。

かねがね、言われるとおり、倍くらいの能力があるし、渇水の時は結局はみんなで助け合うよりしょうがない。30%くらいちょっと節水して、その場合農業用水で1%から2%援助いただければやっていく数字だと思いますのできちんと説明してやらないかん。農水との調整をしながら水の利用を全体で考えていくという流れが名古屋から日本に広がっていけばこれほどええことはないかと思っています。

撤退にむけ丁寧に説明を(要望)

【さとう議員】
ダムをつくってしまったから水利権は確保していくとのことだが、ダム本体の工事費は払わなければいけないと思うが、しかしこれから毎年ダムを維持管理していく費用の分担がある。これは水利権があるからあるわけで、ここを国に話して水利権を放棄したら毎年の維持費も勘弁してちょうともっていくべきです。徳山ダムの目的が利水、都市用水として使うことは破たんしている。それなら国でダムの目的を変えて水利権を放棄して整理するということもあるので研究してやっていただきたい。とにかく導水路事業では本市が撤退することが最重要です。そこから、3県も含めて連絡導水路事業についての是非の議論がもう一度始まる。丁寧に説明しながら一刻も早く決断をしていただきたい。

永金荘の建替え計画について

建築協定との関係をただす

【さとう議員】
永金荘の建て替えについて、昨年11月議会では解体工事について質問しましたが、今度は建築協定との関係について質問します。

名古屋市の建築計画では南向き6階建て2棟、41戸を予定しています。永金荘の東に位置する丸屋町と西の滝子町で高さは12m、4階までとする建築協定が結ばれています。二つの地域に挟まれたこの地域(丸永地域、丸屋町と永金町)でも永金荘の建て替えを契機に、同様に高さは12m、4階までとする建築協定を結ぶ気運が高まり、準備が進められています。名古屋市に対しても、建築協定の主旨にそって、永金荘を4階建てにして欲しいと求めています。そして、4階建てにしても建物の配置を換えるなどすればれば、市の予定している41戸は確保できるという計画案も示しています。

ところが、住宅建設担当課は「6階建ては譲れない」といいます。4階にすると南向きの部屋を原則にするので、戸数が確保できないというのです。市営住宅の居住環境をよくするというのは理解できますが、周辺住民を無視してまで追求するものなのでしょうか。

河村市長は選挙の前、3月末にこの地域を訪れ、住民と懇談したと聞いています。その際、「市長になったら、検討する」という主旨の返事をされたようです。みなさんは大変期待をしたわけです。しかし、残念ながら、いまのところ期待にこたえられていません。名古屋市は住民が建築協定を結んで、豊かなまちづくりをすすめることを施策として進めています。ところが、永金荘の建築では、住民が建築協定を結ぼうとしているときに、無視をして市営住宅を建てようとしているわけです。建築協定と市営住宅の建設、両方とも住宅都市局が所管しています。一方で建築協定を推奨・援助・指導しておきながら、一方でそれを無視をするというのは大変な矛盾ではないですか。 名古屋市が建築協定を認めないようなことをしたら、民間業者が守るはずがありません。永金荘の建築をこのまま強行するとすれば、本市の建築協定に関する行政の権威は失墜し、崩壊するといっても過言ではありません。

私は河村市長に、いま指摘した観点からもう一度、永金荘の建築計画を見直すことを求めるものです。市長の答弁を求めます。

現状で計画を進めいていく(市長)

【市長】
選挙中か前に地元へ行って話を聞いたが、その時もよくわかりませんで、あとまた、うまいこと行ったら市と話をしますからという話をしてきました。まあちょっと高さがならんかとやってきたが、今の現状では非常に困難なようでございます。建築協定はまだ結ばれていない、建て替え事業を推進することも重要である、ということから総合的に勘案した結果、現時点においては現状で計画を進めいていくのが適切ではないかと判断している。

一緒に建築協定に参加を(再質問)

【さとう議員】
市長は「まだ協定が結ばれてないから」といったが、これでは民間のマンション業者がいうことと同じだ。自分の利益第一で地域住民の意見を無視する時の言い分と同じです。名古屋市がこんなことを言っていてはだめだ。建築協定を結ぶことを薦める立場の名古屋市だからこそ、住民の希望を聞き入れて一緒に建築協定に参加すること、この場合は4階建てに押さえるということが道義的に求められる。

名古屋市が建築協定を無視をしたら、おしまい。「庶民革命」というのは市民の意見を聞いて市政を進めること。もう一度市長に考え直すよう、求めます。お答えください。

高さの問題がうまくいかん(市長)

【市長】
永金荘は、わたしもいろいろ言ったが、高さの問題がうまくいかず、どうしても向きの関係なんかがうまくいかず、今の時点で判断させていただいてます。

住民のみなさんとよく話し合え(要望)

【さとう議員】
答弁は納得できません。市長が、「庶民革命」とか「民主主義発祥の地」というなら、もう一度、よく住民のみなさんと話し合うことを求めておきます。

 

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