名古屋港管理組合議会 一般質問 山口きよあき議員 (6月10日)

海上コンテナの安全輸送体制の確立を


山口議員

【山口議員】
5月13日、名古屋市港区大江町の名古屋環状道路線で、走行中の大型トレーラーが横転し、隣車線を走っていた乗用車が倒れてきたコンテナに押しつぶされ、二人が亡くなり一人が重傷を負うというたいへんな事故が発生しました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、重傷を負われた方、遺族の方々にもこの場をかりて御見舞を申し上げます。

コンテナを積んだ大きなトレーラーはいまも日常的に走っており「倒れてこないだろうな」との不安が消えません。この不安には理由があります。それは海上コンテナの横転事故は全国でたくさん発生しているという現実です。労働組合などの調査によると、この10年間で少なくとも約150件もの事故が起き、13人が亡くなっていることが判明しています。

コンテナを物流の主役、貨物輸送の主役にする以上、海上コンテナの安全輸送を確立する課題は、年間282万ものコンテナ取扱い個数を誇る名古屋港管理組合にとっても避けて通れない課題です。1998年(平成10年)の規制緩和で、(今回事故を起こした)40フィート(長さ約12m)コンテナの重量規制が緩和され、以前のように港で20フィートコンテナに積みかえることなく、30.48トンのフル積載のまま物流ターミナルや工場へダイレクトに運ばれるようになりました。あらためて港での安全チェック体制を確立することが必要です。コンテナ輸送の危険性はこれまでも再三、指摘されてきており、国土交通省も2005年(平成17年)に「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」をつくりましたが、その後も重大な事故が続いています。

今回の事故に関する直接の事故原因や法的責任についてはまだ捜査・調査中ですが、現時点でも改善すべき課題はかなりはっきりしていると思います。そこで以下数点、コンテナ横転事故の要因と指摘される問題についてうかがいます。


事故現場を調査する山口市議と佐野さん

海上コンテナの仕様
  20フィートコンテナ 40フィートコンテナ
サイズ 長さ20ft(6.058m)
幅8ft(2.438m)
高さ8'6"(2.59m)
長さ40ft(12.192m)
幅8ft(2.438m)
高さ8'6"(2.59m)
積載量 20,320kg
(規制緩和:24,000kg)
30,480kg
(規制緩和:32,480kg)
道路法に基づく車両の制限(一般的制限)
車両の緒言 一般的制限 備考
2.5m  
長さ 12.0m  
高さ 3.8m  
重さ 総重量 20t  
軸重 10t  
隣接軸重
(隣り合う軸重の合計)
18t 隣り合う車軸の軸距が1.8m未満
19t 隣り合う車軸の軸距が1.3m未満、
かつ隣り合う車軸の軸重が9.5以下
20t 隣り合う車軸の軸距が1.8m以上
輪荷重 5t ひとつの車軸にかかる荷重
最小回転半径 12.0m  
制限値を超える車両は「特種車両」といい、通行するには、許可を受ける必要がある。(道路法、車両制限令)

ロック確認や特殊車両通行許可書など、ゲートでチェックする体制を

コンテナをシャーシ(コンテナを載せる車体)に固定するロックが2カ所はずれていたと報道されています。このロックの徹底は、あらためて国からも関係業界に通知が出されましたが、安全輸送の基本のひとつです。しかし現状ではロック確認は運転手にまかされています。コンテナヤードから一般道に出るコンテナゲートで、運転手がチェックすることになりますが、混雑したゲートではその時間すら惜しいとロックしないこともあったという話もきいています。

ロックされているか否かが一目で確認できる仕組みが必要だと考えますが、当面の間、ロック確認を運転手だけにまかせず、ゲート業務のひとつとしてロック確認を位置づけ、ロックされない車両はコンテナヤードから一般道に出られないシステムをつくるべきだと考えますがいかがでしょうか。

ゲートでもうひとつチェックしていただきたいのが、殊車両の通行許可証です。フル積載の40フィートコンテナを陸上で輸送するには、道路法にもとづく「特殊車両の通行許可」が必要です。総重量20トン、車両の長さ12メートルを越える車両は、すべて通行許可を申請し、指定された道路しか通行できません。ところが、今回の事故では、必要な通行許可証の有効期限が切れていたことが判明しています。特殊車両の通行許可をきちんと受けているかもゲートでチェックすべきと考えます。いかがでしょうか。

コンテナヤードから一般道路へは、違法・危険な状態のコンテナはひとつも持ち出せない安全管理体制をつくることが、港湾管理者の務めだと考えます。当局の見解をお聞かせください。

トラック運転者がロック確認を行い、通行許可書も取得している(部長)

【港営部長】
平成17年に「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」が策定され、船社、港湾運送事業者、トラック事業者及び荷主についての役割・取組みなどが定められ、「トラック事業者等が行うべき安全対策として、ロック確認はトラック運転手の責務、またトラック事業者は、特殊車両通行許可書のない車両にコンテナを積載しない」となっている。従って、各関係事業者がガイドラインを遵守することが、海上コンテナの安全輸送体制の確立につながる。

名古屋港では、ターミナル関係者によると、搬出時には、トラック運転者は必ずロック確認を行っており、ゲートにはロックの施行確認を促す掲示をしている。また、港湾運送事業者系列のトラック事業者は、通行許可書を取得していると聞く。

なお、港湾管理者は、ガイドラインでの役割・取り組みは規定されてないが、コンテナターミナルにおける安全対策の向上について、港湾関係者と協議の上、必要な対応を図っていきたい。

ガイドラインの遵守やコンテナ貨物の情報開示を義務付け、無理な運行をさせるな

【山口議員】
重い40フィートコンテナをのせるシャーシは、その安定性、運転性を向上させるために、車輪は3軸が前提だとされています。ところが事故をおこしたトレーラーのシャーシは2軸でした。運送業者の3軸シャーシに買い換える負担増を考慮して、一定の条件を満たせば2軸のままでも40フィートコンテナが運べる特例が経過措置として2008年(平成20年)3月まで認められていました。

小規模な運送業者の負担増には一定の配慮が必要ですが、安全輸送の面からは一刻も早い3軸車両への切り替えが求められます。コンテナヤードに出入りする車両の安全性そのものが問われています。危険な構造のままのトレーラーにはコンテナを運ばせない。この姿勢を明確にしていただきたい。

さて現在、トレーラーの運転手には、自分が運んでいるコンテナの中身についての情報がほとんど知らされておらず、ブラックボックスを運ばされているようなものだとの声が寄せられています。

過積載は大きな問題になりましたがコンテナの総重量だけでなく、危険物搭載の有無及びその内容、積み付け状況(荷崩れをおこすような不安定な積み方、荷重が偏った状態になっていないか)などについて、荷主サイドから十分な情報がドライバーに届けられるようにする必要があります。法改正の議論もあるようですが、ガイドラインが守られていないのが現実です。

なぜガイドラインをつくってもこういう状態が放置されてきたのか、どう考えていますか。安全運送上必要なコンテナ貨物の情報開示を荷主へ義務づけるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

そして、運転手に無理な走行を強いるような歩合給など賃金構造に問題はないのか、運送料金のダンピングはないのか、過積載や速度オーバーなどを強いる運行計画になっていないか、なども点検が必要です。ドライバーの働くルールを確立すること抜きに、安全輸送の確立はできません。

この点もぜひ管理組合の立場から、関係する労使双方また運送会社と荷主の双方にしっかり申し入れていただきたい。答弁を求めます。

国土交通省などが周知徹底をはかっている。安全輸送全体として、関係者からの情報収集に努める(部長)

【港営部長】
安全輸送に関するコンテナ貨物の情報開示は各業者間で実施する旨、ガイドラインに定められている。ガイドラインの遵守は、国土交通省が平成19年3月に輸送関連団体にガイドラインの周知徹底の通達を出し、平成21年5月14日に「コンテナ輸送を行う事業用貨物自動車における確実な緊締の徹底等について」の通達を全日本トラック協会宛に出し、遵守の徹底が図られている。また、港湾関係者からは安全輸送の会議等でガイドラインの遵守について、周知が行われていると聞いている。

働くルールについての労使、荷主への申し入れについてその立場にないので、実施できないが、安全輸送全体の問題に対して、関係者からの情報収集に努めるとともに協議の上、必要な対応を図っていきたい。

臨港道路でのトレーラー事故の発生状況や道路形状の影響はどうか

【山口議員】
今回の事故現場は、高速道路工事の関係で仮説道路の形状が、半径200メートルカーブから半径80メートルの急カーブに変更されていました。路面もカーブ外側に傾斜しており、車体が外側(歩道側)に大きく振られます。おまけに下り坂、その先には信号、スピードが出やすくかつ急ブレーキを踏みやすい、危険箇所だと言われていました。この道路状態を把握したうえで特殊車両の通行許可申請が出ているのか、道路管理者は安全面のチェックを十分に行って許可を出しているのか、道路形状の変更は十分に周知されていたのか、など解明すべき点はまだ残されています。

このことは直接、管理組合の責任とはなりませんが、管理組合が管理している臨港地区内の道路では同様の事故は発生していないのでしょうか。5月13日の事故当日、鍋田ふ頭でもトレーラーの横転事故が発生したと聞いています。名古屋港でのトレーラー事故の発生状況はどうなっているのか、道路管理者として事故と道路形状との関係をどう考えているのですか。

コンテナの取り扱い個数を誇らしげに報告する当局のみなさん、このままではみなさんが取り扱った個数だけ交通事故の原因を上陸させていると言われてもしかたありません。コンテナ業務に誇りを取り戻すためにも大水深バースの推進以上の熱意をもって陸上でのコンテナ輸送についても、その安全性の確立に力を注いでいただきたくことを強く要望しておきます。

過去3カ年で3件発生。道路形状が原因のものはない(部長)

【港営部長】
組合が管理する臨港道路でのコンテナトレーラーの横転事故は、過去3カ年に平成18年度及び平成19年度は0件、平成20年度に弥富ふ頭で2件、平成21年度に入り鍋田ふ頭で1件発生している。

横転事故発生の状況としては、車両同士の接触事故によるもの2件、自損事故によるもの1件となっている。本件事故は、道路形状を原因とするものではないと考える。

港から危険な状態では出さない決意を(意見)

【山口議員】
海上コンテナの安全輸送問題ですが、通行許可証の問題、港湾運送事業者系列のトラック事業者については、通行許可証を取得しているという話でしたが、実際には、それ以外の事業者もたくさんコンテナを運んでいます。きちんとチェックする仕組みが必要です。

昨年度、名古屋市が窓口となった特殊車両の通行許可申請件数はわずか650件、1748台分です。国(国道管理事務所)から名古屋市を通るよ、と通知があったのは1272件、合計しても年間1922件に過ぎません。国土交通省が昨年行った調査ではトレーラーやクレーンの48%しか通行許可を受けていなかったとの報道もありました。

コンテナターミナルには年間何台40フィートコンテナを積んだトレーラー=特殊車両が出入りしているのですか。いちどきちんと調査するよう要望します。

このままでは名古屋港は、取り扱うコンテナの数だけ、危険をばらまいている、と言われかねません。

この問題は、引き続き、名古屋市など道路管理者や国にも安全対策の確立を働きかけたいと思いますが、管理組合は、ゲートのチェック機能をしっかり活用するなど、危険な状態のコンテナトレーラーは、港から一般道へは一台も行かせない、危ない状態のコンテナは一個も外へは持ち出させない、との強い決意をもってこの問題に取り組んでいただきたい。

入港料減免などの名古屋港緊急対策の効果はどうか

緊急措置の実施後の実績と評価をうけ、今後の対策をどうするのか

【山口議員】
4月からの入港料減免の対象拡充措置に続いて、3月議会で私もその必要性を指摘した港湾施設使用料の新たな減免制度が5月から実施されています。貿易統計では、4月に入り若干明るい兆しがみえてきたとも言われますが、まだまだ厳しい状態が続いており、港湾業者でも、賃金カットに続きこの夏からは人員整理に踏む込み事業所も少なくない、とも言われています。雇用を守るためにも管理組合としてできる限りの努力をお願いしたい。

そのひとつとして実施された緊急措置について、まだ実施後日は浅いですが、狙った効果と実績についてどう評価しているのか、また今後はどんな対策が必要になってくると考えているのか、お答えください。

施策の効果は出ており、財政状況なども考慮して適宜実施したい(室長)

【企画調整室長】
入港料減免は、4月及び5月のコンテナ船入港状況から見ると、前年並みを維持していることから、施策の効果は出ているのではないかと考える。内航船の公共ガントリークレーン使用料の減免は、施策実施後、まだ日が浅く、今後、データの集約ができ次第、評価を行う。

今後の対策について、本港4月の取扱貨物量は、主要貨物のコンテナ及び完成自動車においては下げ止まりの気配が見られるが、今後の動向を注視していく。現在実施している施策は、各々の施策の有効性及び財政への負担を考慮し、入港料は6ケ月の延長を、ガントリークレーンは、その後の延長を検討することも考えている。世界経済の情勢変化や貨物量の推移を見極めつつ、他港の状況や本港の財政状況も勘案しながら、有効な施策を適宜実施していく。

港湾事業者の経営状況や労働者の雇用や賃金などにも配慮を(意見)

【山口議員】
緊急対策は、貨物量の推移や管理組合の財政状況だけでなく、港湾事業者の経営状況、そこでの労働者の雇用や賃金の動向などにも十分に配慮していただきたい。

港湾事業者からは、ガントリークレーンの減免と同じように、上屋や荷さばき地の使用料についても、実際に貨物を扱っている期間・時間だけの料金にしてもらうとありがたい、との要望も出ています。よく実態をつかみ、希望も聞いて、必要な手だてを、迅速に打つことを要望しておきます。

国直轄事業に対する地方負担金の見直しをついて

廃止を求めるのか、肯定するのか

【山口議員】
3月議会で私は、国直轄事業に伴う地方自治体の負担金は問題ではないか、とたずねました。当局の回答は「全国的な議論の動向について注視していきたい」とのことでした。その後、全国知事会は4月に「国直轄事業負担金に関する意見について」を発表し、維持管理費のみならず、整備費に係る負担金についても最終的には廃止すべきものとの見解を示し、5月に発表した「地方分権改革の実現を求める緊急アピール」でも「最終的な直轄事業負担金制度の廃止について改革の方向性を早急に示すこと、を強く求める」としています。

神田知事は4月20日定例記者会見では「道路や河川などの維持管理費用は本来は国が責任をもって維持管理するもの」と述べ、早期廃止が望ましいとの考えを示した」(4月21日読売)と報道されましたが、6月の定例会見では「地方の負担がなくなっても、進めようとしている事業まで大幅に遅れたりストップしてはいけない」(6月2日中日)と述べたと報道されています。知事会の見解と微妙に違いがあるようにも感じられますが、今日は港湾に関わる点にしぼって専任副管理者にうかがいます。

港湾の整備や維持管理についても、道路や河川とまったく同じと考えて制度の廃止を求める立場なのか、それとも同じ国直轄事業であっても港湾管理者としては全国知事会とはちがうスタンス、地方負担金を肯定する立場に立つのか、現時点での認識を聞かせて下さい。

必要に応じて詳細な説明を求めつつ、必要な事業に取り組みたい(副管理者)

【専任副管理者】
港湾は道路や河川と異なり、原則、国が直接管理者になることがなく、開発整備及び維持管理は地方が行うこととなっている。開発整備にかかる国直轄事業は、港湾法52条に基づき、国と港湾管理者との間で協議が整い実施した事業について、港湾管理者分の費用を負担している。本港における国直轄事業は、東航路の拡幅・増探や鍋田ふ頭コンテナターミナルの整備など、いずれも本港の港湾機能の強化を図る上で大変重要な事業です。

一方、国直轄事業については、全国知事会において、地方負担金に係る情報開示や負担金制度の改革について議論されている。こうした中、本港でも中部地方整備局から平成20年度及び21年度の国直轄専業の管理者分の負担について内訳の提示があった。

今後、必要に応じて詳細な説明を求めるとともに、引き続き全国知事会などの議論の動向を注視しながら、中部地域の経済社会活動を支える名古屋港の開発整備に遅れのないよう、必要な事業に取り組みたい。

国の意向にふりまわされずに身の丈にあった事業展開を(意見)

【山口議員】
直轄事業の地方負担金については、港湾は地方自治体が開発整備し維持管理を行うのが原則だとの答弁がありました。国の意向にふりまわされずに身の丈にあった事業展開を心がけていただきたいと思います。

負担金の内訳については今後の決算審議などでさらに精査していきたいと思います。

伊勢湾台風50年の今、高潮防波堤の耐震改修で安心な港に

高潮防波堤の耐震診断結果がなぜ公表されないのか

【山口議員】
今年はあの伊勢湾台風からちょうど50年です。あらためて防災についてしっかりと考える年にしたいと思います。

名古屋港には、伊勢湾台風による高潮被害を踏まえて、1964年(昭和39年)、伊勢湾内には海面からの高さ6.5メートル、全長7.6キロもの高潮防波堤が築かれ、いまも名古屋港の防災対策上、重要な施設となっています。

私はこの議場で繰り返し「この防波堤は老朽化が進み、かつ液状化する恐れが大きい地盤のうえにあり、大規模な地震の時には沈下してしまうのではないか」と指摘してきました。しかし当局からは「この防波堤は国が管理する施設だから管理組合は直接責任がない、国がいま調査中で、調査が早期に取りまとめられるように国に働きかけていく」という答弁がくりかえされてきました。

しかし伊勢湾台風50年という節目の年に当たり、いつまでも調査や取りまとめ中では済まされません。私は先日、待ちきれなくなって直接、国土交通省から、高潮防波堤耐震強度診断について、お話をうかがってきました。

その結果は二重に衝撃的なものでした。第一に耐震診断のデータそのもの、第二にこの結果が管理組合からはいまだに発表すらされていないという点です。

診断結果は、まず液状化が起こるかどうか調べたところ、高潮防波堤のうち知多半島側の防波堤(置換砂部)で液状化が予想されると判定されました。

続いて、液状化による構造物被害予測プログラムFLIPにより、高潮防波堤の変位照査を知多側、鍋田側の双方で行い、防波堤が大地震でどれだけ沈み込むのか沈下量を試算しました。

その結果は、地震動レベル1=名古屋港では防波堤の供用期間50年のうちに発生する可能性が高い地震動では0.1mから0.9m沈み込む。

地震動レベル2=想定される地震動のうち最大規模のもの、東海・東南海・南海地震の複合波などでは、0.3mから実に2.7mも沈下が予測されるとの結果が判明しました。高さ6.5メートルの防波堤が3m近く沈み込むのです。幸いバタッと倒れる恐れはないとも説明していただきましたが、事態は深刻です。

地震と台風の複合被害を想定した防災訓練が行われるようになりましたが、防波堤の機能が損なわれた状態で、大型の台風が直撃したらどうなるのか、高潮被害をどう防ぐのか、真剣な検討が急がれます。

第二に、管理組合の対応です。国によるこの調査は、2005、2006年度(平成17,18年度)に行われ、データが2008年度(平成20年度)にようやくまとまったので、今年(2009年、平成21年)3月5日に国土交通省中部地方整備局名古屋港湾事務所から名古屋港管理組合に説明をしたということでした。

昨年11月の本議会で専任副管理者は私の質問への答弁で「高潮防波堤における防災上の重要性については、本組合としても十分認識しており、早期の調査の取りまとめを国土交通省中部地方整備局に引き続き要望していきたいと考えている」とおっしゃった。

3月5日、つまり3月定例会前に、国から調査結果の取りまとめを受け取っていたにもかかわらず、3月議会には何の報告もありませんでした。そして今日の時点でもこの耐震診断結果はみなさんからは正式に公表されていません。耐震診断の結果を意図的に隠していたのではありませんか。

高潮防波堤の耐震診断結果は、私が国土交通省から聞き、いま紹介した数値だと認めていただけますね、はっきり答弁してください。そしてこの結果をみなさんはどう受け止めたのか、またなぜいままでこの結果を公表してこなかったのか、あわせて答弁を求めます。

中部地方整備局から説明を受け、しかるべき段階で公表する予定と聞いている(室長)

【企画調整室長】
中部地方整備局から調査途上の試算の数値として説明を受けている。現在、国に対して、試算の前提となる地震の考え方など内容確認を行っており、早急に調整を進めたい。

国ではさらに詳細な調査の必要性や対応策などを検討しており、その結果を踏まえ、関係機関と十分議論し、しかるべき段階で公表する予定と聞くので、早期の公表を国に働きかける。今後は、背後地への影響や対応策の調査など、地域の防災にとって、より重要な検討が必要となるため、国に対して関係機関との協議を急ぐよう強く要望する。

耐震診断結果の報告をいつ受け、数値をどう受けとめるか(再質問)

【山口議員】
「調査途中の試算の数値」といいましたが、説明を受けたことを認めましたね。説明は3月5日です。なぜ3月議会に中間報告だけでもしてくれなかったのか、残念です。もう3か月もたってます。

まず管理者にうかがいます。あなたはこの耐震診断結果について、いつ報告を受けましたか。3月に国から管理組合に情報提供がありました。いまは6月です。重要な防災上の情報が、担当から管理者にすぐにあがってこなかったことは問題だとは思いませんか。管理者には、県民市民そしてこの議会に対して、防災上の重要情報を説明する責任があります。高潮防波堤の高さは名古屋水面より6.5メートルですが、この水面は名古屋港最低水面です。伊勢湾台風の最高潮位は5.31メートルでした。2メートル沈み込んだら、高潮は防波堤を超えます。しかも名古屋港水面というのは実は名古屋港最低水面、大潮など満潮時は2.61メートル水面があがります。2メートル沈み込んだら、防波堤の高さは水面よりわずか2メートル弱です。

私は、この診断結果を深刻に受けとめましたが、神田管理者、あなたはどう受けとめたのか、率直な感想を聞かせていただきたいと思います。

詳細な確認が必要と判断し、報告しなかった。協議を急ぎたい(管理者)

【管理者(神田知事)】
情報の取扱は、正確性が必要な情報や迅速性をきすべき情報があり、その時々に重要度を判断し、適切に報告されるべきものです。

今回の試算値は、担当部署が詳細な確認が必要であると判断し、私に報告しなかったと聞いており、ご指摘の通りです。

高潮防波堤の耐震性は、地域住民の生・財産に関わる大変重要度の高い事項であり、今年は伊勢湾台風から50年という大きな節目の年でもあり、安心・安全な港づくりを目指し、必要な事項の早期の確認と関係者間での協議を急ぐよう指示した。

結果が出てからの対応では問題だ。危機管理、防災対策への認識が不足している(再質問)

【山口議員】
山田専任副管理者にもあわせてうかがいます。あなたは、いつ、この診断結果について報告を受けましたか。さっきの答弁では、国による耐震調査について、いまごろ「試算の前提となる地震の考え方の確認を行っている」つまり、想定した地震規模が過大だと言っているように聞こえました。いったい、いままで何をしていたのですか。国が調査を始めたのは平成17年〜18年。5年も前からですよ。国が調査中のこの数年間、管理組合は、耐震診断について国に対して、協議も打合せも一切してこなかったのですか。お答えください。

いまから協議を急ぐといいますが検討が終わるまで何年かかるのか、防波堤の耐用年数は50年、あと数年です。緊張感が足りないのじゃありませんか。

危機管理、防災対策に取り組むあなた方の姿勢には大きな問題があると指摘せざるを得ません。この結果をどう受け止め、これからどうするおつもりか、専任管理者としてのあなたの認識をうかがいます。

5月末に報告を受けた。これまで以上に国や関係機関との協議、議論を深める(副管理者)

【専任副管理者】
耐震診断の状況は、5月末に担当部署より液状化の予測結果、沈下量の試算数値、高潮防波堤の挙動について説明があり、現在、試算値の内容について確認中であるとの報告を受けた。組合は、これまで国に対し、高潮防波堤の耐震診断などの検討について早期取りまとめを求めてきたが、今回その内容の一部が報告されたと思っている。

シミュレーションモデルによる試算値が示されたことから、今後は、試算値の客観的評価、背後地への影響や対応策などソフト・ハード両面からの検討が必要となる。したがって、今後これまで以上に国や関係機関との協議、議論を深めていくことが重要であり、組合も、スピード感を持って危機管理、防災対策を進めたい。

緊張感とスピード感を持って、防災対策に取り組め(意見・要望)

【山口議員】
管理者は、現時点まで報告を受けていなかったことがはっきりしましたね。

伊勢湾台風50年の様々な行事の前に、管理者や議長はじめ議員のみなさんにこのことを知っていただき、正直ほっとしています。

また「高潮防波堤の対震性」は重要度が高い、とも答えていただいた。耐震診断結果は重要な情報です。広く情報を公開し、どういう対策が必要か、広く知恵を出し合うことが大切です。

私は国の診断結果をそのまま鵜呑みにしろとは言いません。問題は、自治体としての主体性を持って、防災施設の維持管理、必要な補修にあたっていただきたい、ということなのです。

いままでの質問では「防波堤は国の施設です。管理責任は国にあります」という答えでした。ところが国が耐震結果を出すと、あわてて「検討が必要だ」と言い出す。だったら初めから国と一緒に耐震調査に取り組めばよかったじゃないですか。国まかせの姿勢をしっかり反省していただきたい。

伊勢湾台風の死者は4637人。多くの尊い犠牲者を忘れずに、いまの答弁どおり、緊張感とスピード感を持って、防災対策に取り組まれることを重ねて要望し、私の質問を終わります。

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