意見書・決議(7月7日)

日本共産党をはじめ各会派から提案された10件、及び請願採択によって提案された意見書案について、議会運営委員会理事会で協議が行われ、9件は適切な修正や調整を行って、成立しました。

そのうち、日本共産党の提案した3案件については1件が可決しました。

意見書案に対する各会派の態度(議会運営委員会に提出された意見書・決議案)
意見書案 原案
提出
結果 各会派の態度
共産 民主 自民 公明
浪合型血管奇形の難病指定に関する意見書(案) 民主 可決
児童虐待防止施策の充実に関する意見書(案) 民主 可決 修正
臨床研修制度に関する意見書(案) 自民 可決
歯科医療の充実に関する意見書(案) 自民 可決
新型インフルエンザへの緊急対応に関する意見書(案) 公明 可決 修正
国直轄事業負担金に関する意見書(案) 公明 可決
細菌性髄膜炎ワクチンの早期定期予防接種化に関する意見書(案) 公明 可決
海上コンテナの安全輸送対策に関する意見書(案) 共産 可決 修正
後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書(案) 共産 否決
消費税の増税は行わず食料品の非課税を求める意見書(案) 共産 否決
日豪間におけるEPA・FTA交渉に関する意見書(案) 請願採択 可決

結果が「可決」となっている、セルの背景が黄色いものは可決された意見書。意見書名を修正した場合は修正後の件名を掲載。

議運に提案された段階での態度 ○=賛成 ●=反対 △=保留
●が1つでもあれば議案として本会議に上程されません。
共産:日本共産党 民主:民主党 自民:自民党 公明:公明党

《採択された決議》

混合型血管奇形の難病指定に関する意見書

混合型血管奇形は、動脈・静脈・毛細血管・リンパ管のうち複数の血管の先天性形成不全をいい、体幹部や四肢などに腫瘍やあざがあらわれる病気である。

血管の形成が不完全なことから、患部に衝撃が加わると大量出血を引き起こすおそれがあり、また、患部がウイルス等の細菌に感染すると生命にかかわる重篤な事態も予想され、日常生活は著しく規制されることとなる。

この病気は、医療関係者の間でも認知度が非常に低く、専門医も極めて少ないため、正確な病名さえ特定できない患者が多く存在し、治療方法はいまだ確立されていない。また、難病に指定されていないため、医療費支援等を受けられず、患者やその家族にとっての精神的・経済的負担ははかり知れないものがあり、安心して治療が受けられる支援が求められている。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、混合型血管奇形を難病に指定するとともに、この病気の原因解明と治療方法の確立を早期に図るよう強く要望する。

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児童虐待防止施策の充実に関する意見書

我が国では、全国的な少子化が進行しているにもかかわらず、児童虐待に関する相談対応件数は年々増加しており、子どもが安心して育つことのできる環境が実現されているとは言えない状況である。

こうした中、児童虐待防止法及び児童福祉法の改正法が昨年4月に施行されたが、急増する児童虐待等に適切に対応するためには、さらなる児童虐待防止施策の強化が求められている。また、児童虐待の増加に伴い、一時保護所等に入所する子どもの数もふえる傾向にあり、入所者個々へのケアの重要性や職員の充実・施設整備の必要性が高まっている。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要望する。

  1. 年々増加する児童虐待に対応するため、児童相談所の体制強化を初め予防から家族の支援・児童の保護・自立に至るまで一貫した児童虐待防止施策の充実を図るとともに、必要な財政措置を講ずること。
  2. 児童養護施設等の要保護児童が入所する施設において、子どもに適切な支援が行えるよう、施設の最低基準や措置費の見直しを図ること。

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臨床研修制度に関する意見書

医師不足による地域医療の崩壊が危惧されている中、国は都道府県別に研修医の募集定員の上限を設定し、各病院の募集枠に制限を加えることを内容とした臨床研修制度の見直しを進めている。

特に、救急医療や周産期医療を初めとした地域医療を懸命に支えている都市部の大学病院等において、研修医の定員が制限されることになれば、深刻な影響が生じることが強く懸念される。平成22年度の上限数については、地域の実情や研修医の受入実績等を考慮するとしているが、あくまで経過措置であり、翌年度以降の状況は不透明である。

また、地域医療の問題は、医師の総数が不足していることが最も大きな要因であり、研修医の地域的な調整という単なる技術的な方法では解決しない。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、臨床研修制度において都道府県別の募集定員の上限を設定する方針を見直すとともに、医師の総数をふやす施策の推進など、地域医療の充実に必要な一層の措置を講ずるよう強く要望する。

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歯科医療の充実に関する意見書

そしゃく能力や口腔機能を維持することが全身の健康の増進や生活の質(QOL)の向上に効果があり、医療費抑制に役立っていることが8020運動によって実証されている。また、歯周病が重症化すると心筋梗塞、動脈硬化症、肺炎、早産などを引き起こす可能性があり、歯や口腔を健康に保つことは、国民の健康維持に不可欠と言える。

しかしながら、医療技術の進歩に伴う新しい治療行為の多くは保険給付の対象とされていないことから、患者の窓口負担が大きく、歯科診療が受けにくくなっている。また、歯科診療報酬は抑制されているのが実情であるが、歯科医療に関する技術の進展や保険医療における歯科の位置づけの重要性を踏まえ、診療報酬の面からも適正な技術評価を行うことが求められている。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、患者窓口負担を軽減するとともに、歯科診療報酬を改善するなど、国民が安心して良質かつ適切な歯科医療を受けられる措置を講ずるよう強く要望する。

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新型インフルエンザへの緊急対応に関する意見書

メキシコ等における新型インフルエンザの発生と世界各国における感染の広がりが見られる中、世界保健機関(WHO)は警戒レベルを「フェーズ6」に引き上げ、各国に対策強化を求めている。

また、我が国においても、いわゆるパンデミックに対応するため、新型インフルエンザ対策行動計画等に基づいた対策が講じられており、既に各地方公共団体では、情報の共有と総合的な対策を講じているところである。

こうした中、日本人の新型インフルエンザ患者が確認されただけではなく、渡航歴のない患者が本市でも発生しており、国内における感染拡大を防ぐため、今後予想される事態への早急な対応が求められている。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要望する。

  1. 国の万全の危機管理体制のもと、感染情報やWHOの発する情報などについて、地方公共団体への迅速な情報提供を行うこと。
  2. 新型インフルエンザ対策について、国民への周知を徹底するとともに、地方公共団体における相談体制整備のため、十分な財政措置を講ずること。
  3. 新型インフルエンザのパンデミックワクチンの製造、接種体制の整備を早急に行うこと。
  4. 新型インフルエンザに係る医療体制の整備について、各地方公共団体と連携を図るとともに、発熱外来の設置に必要な感染防護具、簡易検査キット等の器材や遺伝子検査のための各種検査機器の整備に必要な財政措置を講ずること。
  5. 感染防止措置を図るための医療機関の改修整備や人工呼吸器等の経費助成を初めとした支援を早急に行うこと。また、発熱外来で診療に当たる医師等が感染した場合の補償を行うこと。
  6. 感染者の早期発見を行うことができるシステムの構築を早急に図ること。
  7. 休止することを余儀なくされた保育所等に対する財政的補償を行うこと。
  8. 強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1)に由来する新型インフルエンザを想定した「新型インフルエンザ対策行動計画」を早急に見直し、ウイルスの感染力、病原性に応じて柔軟な対応を図ることができる内容へ改定すること。

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国直轄事業負担金に関する意見書

公共事業に係る国直轄事業の負担金のあり方については、地方分権改革推進委員会から出された「第2次勧告」や「国直轄事業負担金に関する意見」などで廃止・縮減等の制度の抜本的見直しと事業の縮減や透明性の確保が必要との認識が示された。

こうした中、国からは負担金に係る地方への資料提供の充実が図られるとともに、政府においては、今般の追加経済対策に地方負担の軽減策が盛り込まれるなどの対応がなされたところである。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、次の事項を早急に実現するよう強く要望する。

  1. 国と地方の役割分担の見直しを行い、最終的に国が行うべきとされた国直轄事業については、負担金を廃止すること。特に、維持管理費については、管理者である国が全額負担すべきであり、地方負担については直ちに廃止すること。
  2. 地方分権の観点から、最終的に地方が行うべきとされた直轄事業については、地方と十分な協議を行った上で移譲し、必要経費を税源移譲により全額財源措置すること。
  3. 国直轄事業負担金のあり方が見直されるまでの間、国直轄事業の実施に当たり、国が事業内容等を決定する前に、地方と事前協議を行い、合意形成ができる制度を導入すること。

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細菌性髄膜炎ワクチンの早期定期予防接種化に関する意見書

細菌性髄膜炎の日本での患者数は、毎年約1000人に上ると推定され、その約6割強がインフルエンザ菌b型(ヒブ)によるもの、約2割強が肺炎球菌によるもので、この2つの起因菌によるものが全体の約9割を占めている。

細菌性髄膜炎は早期診断が大変難しい疾病であり、治療には起因菌に有効な抗生物質を多く投与することが必要だが、近年、ヒブの薬剤に対する耐性化が急速に進んでおり、適切な治療が難しくなってきていると指摘されている。

ヒブと肺炎球菌による細菌性髄膜炎は、ワクチン接種により効果的に予防することが可能である。日本では平成20年12月にヒブワクチンが販売開始となったが、定期予防接種化はされておらず、任意接種のため費用も自己負担となっており、子育て世代には重い負担となっている。

また、肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)は世界80カ国以上で承認され、米国やオーストラリア等の定期接種化した国々では、発症率が大幅に減少しているが、日本ではいまだ治験を終え承認審査段階にある状況である。

早期発見が難しく、迅速な治療を施しても予後が悪く、さらに薬剤耐性の高まりによる治療の困難化が指摘されている細菌性髄膜炎は、早期に定期予防接種化することが非常に重要であり、これにより、国内の細菌性髄膜炎の多くを防ぐことが可能となる。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、次の事項を早急に実現するよう強く要望する。

  1. 速やかにヒブ重症感染症(髄膜炎、急性咽頭蓋炎、肺炎及び敗血症)を予防接種法による定期接種対象疾患(一類疾病)に位置づけること。
  2. 肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)の早期承認のための措置を講ずること。
  3. ワクチンの安定供給のための措置を講ずること。

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海上コンテナの安全輸送対策に関する意見書

本年5月に名古屋市内で発生した海上コンテナ運搬トレーラーの横転事故は、隣車線を走行中の車を押しつぶし3人もの死傷者を出す惨事となった。

コンテナによる貨物輸送は今や国際物流の主役となり、ここ10年間でコンテナ取扱量は倍増し、名古屋港では年間282万TEU、全国では1900万TEUを超えるコンテナが取り扱われている。

しかし取扱量の急増に伴い、大型トレーラーによる海上コンテナ輸送中の事故も、ここ10年間で少なくとも約150件発生し、死亡者も10人を超えたと言われている。そのため国土交通省は2005年に「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」を策定するなどの事故防止に取り組んできたが、残念ながら、その後も重大事故の発生が後を絶たない。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、本ガイドラインに基づく安全対策が確実に実施されるよう関係機関に指導を徹底させるとともに、必要な法整備も含めた新たな海上コンテナの安全輸送に係る対策を確立するよう強く要望する。

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日豪間におけるEPA・FTA交渉に関する意見書

現在、第8回目までの会合が行われているオーストラリアとの経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)に関する交渉において、オーストラリア政府は、農産物を含む関税撤廃を強く主張している。

しかしながら、日豪間で大きな生産格差のある農産物について、関税が撤廃されることとなれば、日本の農産物市場はオーストラリアの安い農作物・乳製品に圧倒され、日本の農業・酪農業が深刻な影響を受けることが予想される。政府の試算によれば、その影響は牛肉・乳製品・小麦・砂糖の主要4品目の農業生産額の減少として約8000億円に上り、関連産業や地域経済への彩響も含めるとさらなる影響が懸念される。

日本の農業を守り、食料の安定的な供給を確保していくためには、オーストラリアとの交渉において、関税の引き下げ対象から影響の大きい品目を除くことが求められている。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要望する。

  1. 日豪間のEPA・FTA交渉に当たっては、牛肉・乳製品・小麦・砂糖・米等の農林水産物の重要品目を除外するとともに、万一、これが受け入れられない場合は、交渉を中断すること。
  2. 農産物貿易交渉は、農業・農村の多面的機能の発揮と国内自給による食料安全保障の確保を基本とし、各国の多様な農業が共存できる貿易ルールを確立すること。

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《日本共産党が提案し、採択されなかった意見書(案)》

後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書(案)

昨年4月から実施されている後期高齢者医療制度は、政府・与党による部分的見直しが行われたものの、制度の抜本的見直し・廃止を求める声はますます広がっている。少なくない地方議会で同制度の見直し・廃止を求める意見書が可決されており、愛知県を含む多くの医師会が、政府に対して撤廃・見直しを求めている。

そもそも後期高齢者医療制度は、国の医療費支出の削減をねらい、高齢者に保険料の重い負担、差別的な医療を押しつけるものであり、一部の高齢者に一時的な負担軽減を図る政府の軽減措置では、制度の問題点は抜本的に改善されるものではない。制度の欠陥を解決するためには、後期高齢者医療制度を廃止するしかない。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、後期高齢者医療制度を廃止するよう強く要望する。

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消費税の増税は行わず食料品の非課税を求める意見書(案)

政府は、2009年度税制改正関連法案の附則に、2011年度からちの消費税率引き上げを明記し、今国会で法案が成立した。

最近の世論調査では、2011年度からの消費税の増税について、「評価しない」が6割から7割を占めている。

昨今、景気悪化や物価高騰などによって、国民の暮らしは厳しさを増している。消費税の増税計画は、国民の生活不安をかき立てて消費をさらに冷え込ませ、中小企業の経営難を増大させるものとなる。しかも、消費税は、低所得者ほど負担率が重くなるという「福祉破壊」税であり、政府が言う社会保障の財源としては全くふさわしくない税金である。

経済危機の中、緊急に実施すべきは、家計を応援し、内需拡大につながる庶民減税である。消費税の逆進性の大きな要因となっている食料品への課税をやめ、食料品非課税が求められている。

よって、名古屋市会は、国会及び政府に対し、消費税率の引き上げを行わず、食料品は非課税にするよう強く要望する。

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