2009年2月定例会 個人質問 山口きよあき議員(3月5日)

録画中継を名古屋市会サイトにて配信しております。
>> ご覧になりたい方はこちら(別ウィンドウで開きます)

市議会の録画中継サイトへ

貧困を予防するセーフティネットについて


山口議員

国民健康保険制度の一部負担金減免制度の活用促進を

【山口議員】
いま雇用と生活への不安が大きくなり、本市でも生活保護受給者は3万人を超えるなど格差と貧困の広がりは深刻です。こういう時だからこそ、きめ細かくセーフティネットを張り、貧困に落ち込むのを防ぐことが求められます。そこで本市の現状はどうか。施策が「絵に描いた餅」になってはいないか。貧困を予防する施策の現状について、健康福祉局長にうかがいます。

まず国民健康保険制度の一部負担金減免制度です。国保料が高くて払えず、滞納が増え、保険証の取り上げが大きな社会問題になっています。保険料の減免は、昨年度、被保険者45万世帯中13万世帯、3割の方々に適用され、命綱のひとつになっています。問題は3割負担の方です。国民健康保険法第44条には、医療機関への一部負担金の支払いが困難な時には、その支払いを減免・猶予できるとあります。ところがこの制度は、極めてわずかしか活用されていません。2006年度は15件、2007年度は22件、そして今年度も1月末時点でわずか15件です。

予算の補正が必要なほど生活保護が増え、病院では患者の未収金も増えています。しかも一方で、短期保険証を約2万3千通、資格証明書を約1千3百通も発行しているのに比べ、一部負担金減免制度の利用はあまりに少ないと思いませんか。原因はどこにあり、どう改善するのか、うかがいます。

限度額適用認定証なども利用されている。PRはしたい(局長)

【健康福祉局長】
国民健康保険の一部負担金減免制度は、災害や入院、事業の休廃止および失業等の理由により、加入者が一時的に医療機関窓口で自己負担を支払うことが困難となった場合に、自己負担額の支払いの減額、免除および徴収猶予を行うものです。この制度の利用件数が少ない原因は、限度額適用認定証や高額医療費受領委任払制度など自己負担金の支払いが一定の限度額までで済ませることができる制度を利用しているため、一部負担金減免制度の実績が少なくなっているかと考えている。

一部負担金減免制度の周知は重要であると認識しており、「医療費のお知らせ」を利用して加入者個別へ制度周知を行ったり、「広報なごや」および区役所や医療機関で配布するパンフレットの説明をわかりやすく工夫しているが、今後も、一層充実させて制度の周知に努めます。

無料低額診療事業の活用できる病院が2つでは少なすぎる

【山口議員】
社会福祉法にもとづき、生計困難者のために無料または低額な料金で診療を行う無料低額診療事業があります。生活保護の一歩手前の方、医療費の負担さえなければ保護を受けずにすむような方などを対象に、医療機関の負担で患者負担を減免する制度です。本市では民間の二病院に認められており、2007年度では延べ患者数が77,647人。医療機関の負担額は4840万円です。自治体の負担はほとんどなく、基本的にすべて医療機関の持ち出しです。

国は2001年に「事業の必要性は薄らいでいる」という通知を出しましたが、昨年9月に日本共産党の小池晃参議院議員が提出した質問主意書には「この通知は自治体が地域の実情に応じて新たな設置の届出を受理することを何ら妨げない」と答弁しています。

最近の不況のなか、あらためてこの事業の必要性を感じて、一定の負担を覚悟してでも取り組む医療機関が出てきています。全国では東京都43、京都市25、大阪市13など既に263医療機関が行っています。ところが大都市名古屋はわずか2病院。愛知県全体でもゼロ。ちょっと少なすぎると思いませんか。制度の活用を希望する医療機関から届け出があれば、積極的に受理すべきと考えますが、いかがですか。

国の抑制方針で新規の受理は難しい(局長)

【健康福祉局長】
無料低額診療事業は、社会福祉法第2条の規定に基づき、生計困難者のために無料又は低額な料金で診療を行う第2種社会福祉事業で、生活保護には至らない低所得者等に対する必要な医療を確保する上で、一定の役割を果たしている。社会福祉法第69条の規定に基づき、事業の実施を予定している社会福祉法人等は、本市に届出を行うこととなっています。

国の考えは、この事業は国民皆保険制度の施工前に創設されたものであり、近年における社会保険制度の改善、公費負担医療制度の充実、国民所得水準の向上などに伴い、その存立意義について「必要性が薄らいでいる」として新規の届出の受理について抑制方針をとっている。しかし、どのような場合であっても届出を受理してはならないということではなく、地域の状況などを考慮したうえで判断する必要があるとしている。

市としては、国の抑制方針もあって、新規の受理は難しいと考えますが、もし、この事業を希望される法人等があれば、国と調整や協議をしながら慎重に検討たい。

無料低額診療は市の自治事務であり国の意向に従う必要はない(再質問)

【山口議員】
国の抑制方針といわれましたが、この事業は、国に従う義務がある法定受託義務ではなく、自治体の裁量によって処理すべき自治事務です。確認してください。

国の顔色をうかがう必要はない。市が主体的に判断すべき問題です。

市として、生活保護世帯の増加に象徴される、この地域の状況をどう認識しているのか、答えてください。

法人等の届出内容を慎重に吟味し判断したい(局長)

【健康福祉局長】
無料低額診療事業にかかる届出の受理は自治事務です。生活保護受給世帯の増加傾向は、本市だけでなく、全国的な傾向であり地域の特別な状況にはあたらないものと認識していますが、事業を希望される法人等の届出内容が、無料低額診療事業の本来の意義に合致しているかどうかを慎重に吟味した上で、受理について判断していきたいと考えている。

他都市並に無料低額診療をおこなえる医療機関を増やせ(要望)

【山口議員】
全国的な状況だと言いましたが、それならこの事業は全国的な数が必要です。せめて他都市並に無料低額診療をおこなえる医療機関、増やすという方向で届け出があれば積極的に受理していただきたい。

急増する保護世帯の周りにはその何倍も貧困予備軍が存在します。医療費の3割負担と生活保護との落差は大きいのです。この狭間を少しでも埋める努力を強く求めておきます。

生活福祉資金貸付制度を利用しやすく

【山口議員】
サラ金、多重債務が大きな社会問題になりましたが、ようやく法も改正され、相談体制も一定充実してきました。派遣切りが多発するなか、国は離職者向けの「就職安定資金融資」事業も始めました。

生活のために資金を借りたい市民はいまも大勢います。目の前に必要なお金がないために、住まいを失ったり、病気を悪化させて貧困に落ち込むケースが少なくありません。早め早めのちょっとした手当で多くの市民が救われます。

ところが、社会福祉協議会の生活資金貸付制度の実績はどうでしょうか、今年2月までの実績は、保証人が要らないと宣伝された限度額10万円の緊急小口資金は全市で44件、限度額が月額20万円の離職者支援資金にいたってはわずか6件です。これもあまりに少ないとはおもいませんか?

名古屋市はかつて市社協に原資を貸し付けて、独自の緊急小口資金制度(限度額13万円)を行っていましたが、この制度が2003年度で廃止されて以降は、市独自の貸付制度は皆無です。

本市独自の資金貸付事業の復活も視野に入れ、この事業をもっと利用しやすいものへと充実・改善すべきです。答えてください。

県の制度がある(局長)

【健康福祉局長】
緊急小口資金の利用件数を、月別にみますと、4月から12月までは、月平均約2件であったものが、昨年末からの厳しい経済情勢を反映し、1月は9件、2月は14件と増加しています。離職者支援資金は、利用件数は2月末現在6件ですが、電話や窓口への相談件数を月別にみると、4月から12月までは約15件であったが、1月、2月とも52件と増加しています。愛知県と協力し、各資金のリーフレットを増刷し、本年2月に各区役所に配布した。今後とも、愛知県と連携し、引き続き広報・啓発に努めたい。

本市独自の緊急小口資金は、生活福祉資金にある緊急小口資金が類似の制度であり、緊急小口資金が生活福祉資金の中に新設されたときに、市の独自事業を廃止した。

敬老パスの無料化で交付率を上げ、健康促進を

【山口議員】
敬老パスが有料化されて5年。有料化直後は74%だった交付率が、71%、69%、67%、と毎年下がり、今年度は市全体でわずか65%、ある区ではとうとう6割を切るところまで落ち込みました。市営交通が不便な地域、高齢者の所得が相対的に低い地域での落ち込みが目立ちます。年金が減り、税金や保険料の負担が増え続ければ、さらに落ち込むことも予想されます。

6年前、私は、有料化されたら交付率が下がるのでは、と質問しましたが、その時は「80%には下がるかもしれない」との答弁でした。この交付率、やっぱり低すぎるとは思いませんか。敬老パスは、高齢者の社会参加を促し、閉じこもりを防ぐ効果があると言われています。加えて、消費を増やし地域経済を下支えする、健康を保持して医療や介護の社会的費用を抑える効果も期待できます。

個人にとっても社会にとっても貧困を防ぐ効果が敬老パスにはあります。この予防効果をフルに発揮するためには、多くの高齢者に元気な時から使ってもらう、つまり敬老パスの交付率を上げることが不可欠です。そのためには、無料化復活がいちばん確かな方法だと私は考えますが、交付率をどう向上させるのか。答えてください。

負担の公平性の観点から、一部負担金制度を維持する(局長)

【健康福祉局長】
敬老パス制度は、高齢者の社会参加を支援し、福祉の増進を図ることを目的として実施し、閉じこもりの予防や健康の保持にも役立っている。

敬老パスの交付率は、平成19年度末現在で67.7%と、徐々に低下しているが、交付数は、平成18年度以降、増加している。平成20年7月の利用状況調査によると、敬老パスの交付を受けない主な理由として、年齢により多少の違いはあるが、「病弱だから」と「自分で車を運転するから」とする回答が、それぞれ約3割でした。こうしたことから、一部負担金の導入よりも、身体機能の低下などが主な理由で、敬老パスを使用する機会のない方が交付を辞退したことによるものです。

本市の独自性である65歳からの交付を維持しつつ、この事業を持続的・安定的に実施し、さらに負担の公平性の観点から、一部負担金制度は維持したい。

せっかくの福祉施策は使いやすく改善を(意見)

【山口議員】
松原市長が当選した1997年、生活保護受給者は1万4千人でした。あなたの12年間で3万人を超えるまでになりました。それなのに福祉施策の活用がこれでは「仏つくって魂入れず」です。まだまだかなりのことができます。

敬老パス。いちど交付申請しなかった人へは、翌年以降は案内通知も送っていない、ここを改善していただきたい。

生活福祉資金。ひと月で2件だったのが14件に増えたといって胸を張れますか、市独自で、保証人の肩代わりや、利子補給、融資額の上乗せなどもっと努力してください。

国保の一部負担金減免制度でも、例えば、受診した医療機関から代理申請できるようにするとか、改善の余地はまだまだあります。

子どもの貧困について

子どもの貧困の実態をどう認識していますか

【山口議員】
日本は先進諸国の中でも、ひとり親世帯を典型に、子どもの貧困率が高いと指摘されています。さらに経済的貧困が、学力の貧困につながり、貧困が次世代にも再生産される、とも言われています。だからこそ、子どもたちに対しては特に意識して、頑丈でしなやかな、そしてきめ細かいセーフティネットを張る必要があります。

私は昨年の2月定例会で、生活保護世帯の児童生徒に支給すべき教材費がほとんど支給されていないと指摘しました。質問前の昨年12月には103件、41万円の支給でしたが、今年度は12月末で、延べ2070件、1042万円、支給は約20倍になりました。セーフティネットの綻びを一つ縫えた、という思いです。

ところでその後、教育委員会と学校は、子どもたちの貧困について敏感になったでしょうか。昨年、保険証のない子どもが大きな社会問題になりました。名古屋市でも小学生71人、中学生45人の児童生徒に保険証が渡っていませんでした。短期保険証の子どもたちも増えています。この実態を、教育委員会は把握していたのか。学校では4月に保険証のコピーを提出させるところが多く、稲武や中津川、修学旅行と保険証を確認する機会も何度かあるはずです。変だな、と思った先生もいたはずですが、学校からの問題提起や情報発信があったとは聞いていません。

一方で、児童虐待は増加が続き、いじめや不登校などへの対応も待ったなしです。これらは、教育の問題であると同時に、家庭や地域の問題でもあります。教育委員会と児童相談所の統計を重ねあわせると、児童虐待や非行相談の多い行政区と、母子世帯や就学援助が多い行政区の相関関係がはっきり見えてきます。家庭の経済的状態が様々な問題行動の背景にあることが少なくないのです。

教育長、100人を超える児童生徒が無保険だったことを例に出しましたが、貧困の広がりがこんな形をとって、学校現場にも現れてきていると思います。「子どもの貧困」という問題をどう認識しているのか、まず聞かせてください。

学校が子ども達の心の支えとしての役割を十分果たせるように配慮したい(教育長)

【教育長】
不登校や児童虐待の増加傾向が深刻な状況にありますが、友人関係など学校生活での影響、親子関係や経済的不安定さなど家庭生活での影響など、さまざまな要因が指摘されています。子どもが成長していく上で、社会的、経済的環境がきわめてきびしい状況にあると認識しています。

学校現場では地域や家庭と連携して教育課題に取り組んでいる。保険証の状況のみならず、子どもの家庭環境を現場の教員が十分把握することは、プライバシーの保護の観点からむずかしい面もあるが、子どもの実態を踏まえて教育活動に取り組むことを基本にすることが大切と考えており、そのためには現場の教員が、日々の子どもの様子などから、洞察力を持って子どものサインを受け止め、その背景を感じ取ることができる確かな指導力を持つことが重要であり、期待されています。

教育委員会としては、今後とも、経済的な理由が原因となって就学が困難な状況に陥らない様、就学援助制度の適切な運用とあわせ、学校が子ども達の心の支えとしての役割を十分果たせるように配慮したい。

スクールソーシャルワーカーの導入が必要だ

【山口議員】
子どもの貧困に対応する基本は、親の就労条件の改善であり、児童手当や就学援助、学費の免除や奨学金制度など、経済的支援の充実です。でもそれだけでは足りません。経済的支援だけでなく、子どもと保護者にしっかり寄り添い支援する仕組みを、学校にもつくる必要があります。

教育員会では、以前から教育センターに生徒指導相談員を配置して、不登校の児童生徒などの家庭に訪問する支援に取り組んでいます。でも相談員は、なぜか退職後の校長先生に限定されています。だから社会資源の活用などに弱さがあります。児童虐待への対応で、児童相談所のケースワーカーとの連携もそれなりにつくられてきましたが、どうしても問題が起きてからの対応になりがちです。

そこで具体的な提案として、スクールソーシャルワーカーの配置を求めたいと思います。この事業は、今年度から文部科学省の補助事業にもなりました。子どもの問題行動の背景にある家庭の人間関係や経済状況にもアプローチできるソーシャルワークの専門職を、学校教育の分野にも配置する事業です。「子どもたちの最善の利益」を守るためには、教育と福祉をしっかりとつなぎ、子どもたちを複眼的に見守る体制が必要だと私は考えます。社会福祉の視点を教育現場に導入することは、待ったなしの課題だと考えますが、教育長の答弁を求めます。

生徒指導相談員の質の向上に努める(教育長)

【教育長】
不登校など子どもたちが抱える問題の中には、経済状態や社会環境の悪化などから、カウンセリングなどの心理的援助だけでは十分なケアができず、どうしても福祉の視点から、専門機関に頼らざるを得ない事例が少なからずある。

教育委員会としても、そうした点を重視し、昭和50年度、全国に先駆けて、不登校の子どもや保護者の相談相手や生活支援を行う訪問専門の生徒指導相談員を配置した。本年度も13人の生徒指導相談員が、心理や福祉の専門家で学校現場にも詳しい臨床心理士の助言を得ながら、訪問相談を行っている。虐待が疑われた家庭に対して、生徒指導相談員が児童相談所や子ども家庭支援セシターに働きかけ、合同ケース会議を開催し、連携して支援を続けた事例などがある。

スクールソーシャルワーカーの資格や活用の在り方には様々な考え方があり、地域や家庭、子どもの実情に応じた取組を工夫していくことが大切です。生徒指導相談員は、スクールソーシャルワーカーとしての一定の役割を果たしているが、福祉に関するより深い専門性を身に付けることや、子どもたちを支える地域の人材との連携をより深めることなどの課題もある。今後は、子どもたちが安心してそれぞれの可能性を発揮できる環境づくりを進めるために、生徒指導相談員が、より福祉の視点を考慮した訪問相談を行うことができるよう、課題解決の方法を研究し、質の向上に努めたい。

正規教員を増やし、福祉の分野とも連携した取り組みを(要望)

【山口議員】
子どもの貧困について、教育長に3点要望します。

現場の教員の指導力が大事と答弁された。そのとおり、教職員は多忙で、臨時教員の比重も増える一方です。正規の教職員をしっかり増やしてください。

二つ、福祉の視点を大事にすると答弁された。相談員の努力には敬意を表しますが、相談員を校長OBに限定する理由は何一つありません。学校関係者だけで問題を解決しようとする姿勢が問題なのです。

三つ、経済的な理由が原因となって就学困難な状況に陥ることがないようにしたい、と答弁された。その通りです。そのためには、その思いを子ども青少年局や健康福祉局としっかり共有していただきたい。

 

▲このページの先頭へ戻る