後期高齢者医療広域連合議会 8月定例会 (8月6日)
田口 かずと議員

愛知県後期高齢者医療広域連合議会が8月6日(水)に行われました。日本共産党のただ一人の議員として、田口かずと議員(名古屋市選出)が広域連合議員に選出されています。一般質問や議案質疑、請願審査の概要を紹介します。

《一般質問》
広がる怒りの声を聞け/与党の見直し案では救われない/ホームページの改善を

―後期高齢者医療制度実施にかかわって―国民の怒りをどう思うのか

【田口議員】
後期高齢者医療制度は、高齢者をはじめとする国民の大きな怒りを呼び起こしています。そのことは、私たち日本共産党の名古屋市議団が実施しています「市政アンケート」でも明らかです。このアンケートは、5月下旬から各戸に用紙を配布し、現在までに約4,000通の回答が寄せられました。この中では、後期高齢者医療制度について、約半数の人が「すぐに廃止を」、2割の人が「不安だ」と答え、「必要」と答えた人は1割しかありませんでした。

アンケートには、たくさんのご意見も寄せられていますので、若干紹介したいと思います。「後期高齢者医療制度は、75歳に達したら、死への予備軍みたいに感じてしまう制度だ」、「保険料を負担するのはやむをえないと思いますが、75歳で線引きするのが納得できません」、「若い人たちの負担も良くわかります。われわれも若いころ、毎月、給料天引きで健康保険料を支払ってきました。しかし、年をとり、働けなくなり、病気がちになったところで、この扱いは納得できないものがあります」

住民の怒りは、このアンケートの声からも、75歳以上の人を「後期高齢者」と呼び、他の世代と切り離して際限のない負担増に追い込むとともに、受けられる医療を差別するという制度の根幹そのものに向けられているのです。

そこで、お尋ねします。後期高齢者医療制度が実施されて以降、国民の怒りが燎原の火のごとく広がっていることに対して、連合長はどのように認識されているのですか。

懇切丁寧な説明が不足していた(連合長)

【連合長】
後期高齢者医療制度は、将来にわたり安心して医療が受けられるようにするための必要な改革である。しかし、事前に十分な周知等を行うことができず、高齢者の立場に立った懇切丁寧な説明が不足し4月当初に混乱を招いたことは、誠に申し訳ない。

今後は、制度の趣旨、意義の広報にも努め、市町村と密接な連携を図りながら着実に事務を行い、制度の定着に向け全力を挙げて取り組む。

制度実施後に、連合、および市町村に寄せられた問い合わせや苦情の件数は

【田口議員】
制度実施後に、本広域連合、および市町村に寄せられた住民からの問い合わせや苦情などの件数について、事務局長の答弁を求めます。

4月は6,833件、5月は2,408件(事務局長)

【事務局長】
市町村への問い合わせ等の状況は把握してないが、本広域連合事務局における、4月の問合せ件数(4月3日から記録)は、合計6,833件、1日平均263件、うち苦情件数(4月25日から記録)は、合計91件、1日平均23件。また、5月の問合せ件数は、合計2,408件、1日平均109件、うち苦情件数は、合計246件、1日平均11件となっている。市町村への問い合わせは把握していない。

―政府・与党の見直しに関わる諸問題― 凍結された終末期相談支援料を今でも後期高齢者にふさわしいと考えているのか

【田口議員】
政府・与党の見直しにかかわり、保険料軽減以外の問題について3点お尋ねします。

1点目は、診療報酬における終末期相談支援料の凍結についてです。

終末期相談支援料は、医師が回復の見込みがないと判断した75歳以上の患者や家族との間で、延命措置をとらないことなどを文書で確認すると、患者一人あたり2,000円の報酬が医療機関に支払われる仕組みです。これにたいして、週刊誌などでも「“安楽死”を勧める医療だ」などと批判が噴出しました。

政府は、終末期相談支援料など75歳以上を別建てにした診療報酬について、「後期高齢者の心身の特性にふさわしい医療が受けられる」などと、後期高齢者医療制度の“売り物”にしていました。本広域連合議会でも、連合長は、「後期高齢者医療制度の診療報酬については、後期高齢者の心身の特性に応じた後期高齢者にふさわしい医療を提供するため」のものであり、「75歳を超えると受けられる医療の内容が変わり、必要な医療が受けられなく……なるということはない」と答弁されています。

それにもかかわらず、終末期相談支援料が、実施からわずか3か月で凍結に追い込まれる事態になったのはどういうことか。後期高齢者医療制度の破たんぶりを示しているのではないでしょうか。

そこで、連合長にお尋ねします。あなたは、政府の言うままに、後期高齢者医療制度の診療報酬は、心身の特性に応じた後期高齢者にふさわしい医療を提供するためのものであると公言されてきましたが、この制度の診療報酬の柱の一つであった終末期相談支援料が凍結されたことについて、どのような感想をお持ちですか。今でも後期高齢者にふさわしい医療を提供するためのものとお考えですか。

説明不足が国民に誤解と不安を与え、7月から凍結された(連合長)

【連合長】
後期高齢者医療制度の診療報酬は、後期高齢者の心身の特性に応じた、後期高齢者にふさわしい医療を提供するため、厚生労働省において検討され、決定されたもので、これまでと同様に必要な医療を受けることができるとされている。

「終末期相談支援料」は、制度の趣旨や内容が国民に十分周知されず、国民に誤解と不安を与えたため、7月から凍結された。「中央社会保険医療協議会」で検証作業を行い、議論されるので、その動向を見守りたい。制度が後出しで変わってきていることに真摯に対応したい。

天引きから口座振替への変更で税負担が軽減できる場合があることを周知徹底すべき

【田口議員】
2点目は、保険料の年金天引きの代わりに口座振替での納付が選択できるようになったことについてです。

年金天引きから口座振替への変更ができるのは、(1)国民健康保険料を過去2年間、滞納せずに支払っていた人、(2)年金収入が180万円未満の人で、保険料を配偶者や世帯主である子どもの口座振替で支払う場合とされています。

4月から保険料の年金天引きが実施されたことによって、税の社会保険料控除が受けられなくなり、税負担が増えるケースが生まれています。たとえば、国保に入っている息子が、後期高齢者の親を扶養している世帯の場合では、昨年度までは親も国保でしたので、世帯主である息子が親の分も含めて国保料を負担し、所得から控除することができました。ところが、親が後期高齢者医療制度に移り、保険料が本人の年金から天引きされるようになったために、息子の所得から控除できなくなりました。息子の所得から親の保険料を控除できないと、課税される所得が多くなり、余計に税金を払わなければなりません。

今回の見直しによって、年金額180万円未満の人が、世帯主である子どもや配偶者の口座振替に変更すれば、税の負担が軽減される場合があります。しかし、政府・与党の広報やお知らせは、このことには触れていません。

そこで、事務局長にお尋ねします。知らない人が損をしないように、年金天引きから口座振替に変更することによって税負担を軽減できる場合があることを、周知徹底すべきではありませんか。

引き続き周知を図る(事務局長)

【事務局長】
年金天引きから口座振替に変更することができることは、7月下旬に、広域連合および市町村より被保険者の方へ、チラシやハガキによる案内をした。また、7月29日付けで厚生労働省保険局総務課から社会保険料控除の適用関係についての事務連絡が出され、県から全市町村にも周知されている。

広域連合や市区町村窓口に支払方法変更に対する問い合わせがあった際には、税負担の軽減を含めた内容も説明するなど、その周知を図っているが、今後も努力する。

後期高齢者医療制度を選択しない障害者も、障害者医療費助成制度の適用を

【田口議員】
3点目は、後期高齢者医療制度に加入しない65歳から74歳までの障害者にたいする医療費助成についてです。

65歳から74歳までの障害者については、後期高齢者医療制度に入るか入らないかは、法律上は本人が選択できる仕組みになっています。ところが、愛知県では、障害者医療費助成を受ける場合は、後期高齢者医療制度への加入が条件とされ、この制度に加入しなければ、障害者医療費助成を受けられなくなりました。事実上、65歳からの強制加入です。

これにたいして、政府・与党の見直しでは、「自治体独自の医療費助成事業」などについても、自治体に「適切な対応を求める」ことを決めました。これを受けて、厚生労働省は7月23日、都道府県にたいして、「助成要件の見直し等について必要な検討を行った上で、独自の医療費助成事業について十分な情報提供を行なうなど……適切な対応」を要請する通知を出しました。「事実上の強制加入だ」という批判の前に、政府・与党も手直しを余儀なくされているのです。

後期高齢者医療制度への加入を障害者医療費助成適用の条件としているのは、愛知県をはじめ10道県。そのうち、山口県が加入を条件にしない方向に転換しました。徳島県は、条件を維持しながらも、保険料増額分を全額助成して障害者の負担を軽減する、栃木県は、後期高齢者医療制度への移行を拒否している障害者に対し、医療費の1割補助を決めたと報道されています。全国的に見直しが検討されているにもかかわらず、愛知県からは、検討している様子が何ら伝わってきません。

そこで、広域連合から愛知県にたいして、後期高齢者医療制度を選択しない65歳から74歳の障害者にも、障害者医療費助成制度を適用するよう求めるべきではありかせんか。

県の方針等もあり、要望しない(事務局長)

【事務局長】
県の後期高齢者福祉医療費給付制度は、障害者の医療費について、自己負担相当額を、県及び市町村が公費で負担するというもので、制度の運営には、公費の投入を含め実施主体である県の方針等もある。現在は県に要望することは考えていない。

―広域連合のホームページについて― もっと親切にわかりやすく

【田口議員】
広域連合のホームページにおける議会に係る情報提供についてお尋ねします。

本定例会の開催告示は、招集日の2週間前、7月23日に行なわれましたが、広域連合のホームページでは、その開催告示が、招集日1週間前の時点でも掲載されていませんでした。これでは、住民が議会の開催について事前に知ることができません。ましてや、議案の内容については知ることができません。

東京都の広域連合のホームページには、議会開催の告示とともに、議案とその内容も掲載されています。

広域連合のホームページに、議会開催の告示、議案とその内容を掲載するよう改善を求めますが、いかがでしょうか。

一層の改善を進める(事務局長)

【事務局長】
本広域連合のホームページでは、議会開催前には開催告示を、また、終了後には開催結果と会議録を掲載しているが、本定例会の開催告示は掲載の時期が遅れた。誠に申し訳ない。

今後は、議会開催の告示と同時に掲載するとともに、議案の内容など見やすさや内容の充実に努めたい。

(要望)議案の内容などの掲示等の改善を

【田口議員】
ぜひ、議案の内容も開催告示と合わせて掲載されるよう要望しておきます。

(再質問)説明不足というが、説明すれば住民の理解が得られると考えているのか

【田口議員】
後期高齢者医療制度実施後の状況について、連合長は、「混乱を招いたことは申し訳なかった」とおっしゃいましたが、混乱を招いた理由は、「丁寧な説明が不足していた」からだという認識です。しかし、丁寧に説明すれば、住民の理解は得られるのでしょうか。この制度について、野中広務・元官房長官は、「銭勘定だけで、人間としての尊厳を認めていない」と語っています。中曽根康弘・元首相は「至急、これは元に戻して、新しくもう一度考え直す、そういう姿勢をハッキリ早くとる必要があります」と明言していますが、野中氏や中曽根氏に対しても丁寧な説明が不足していたというのでしょうか。高齢者差別という制度の本質が国民の前に明らかになったから、政治的立場の違いを超えて怒りが広がっているのではありませんか。

終末期相談支援料の凍結についても、連合長は、「国民に誤解と不安を与えた」と、誤解した国民が悪いかのような認識を示されました。しかし、厚労省の担当者が、解説書のなかで「後期高齢者が亡くなりそうになり、家族が1時間でも、1分でも生かしてほしいと要望して、いろいろな治療がされる。それが、かさむと500万円とか1000万円の金額になってしまう」と本音を語っているように、「延命治療」を制限して、医療費を抑え込む。ここにねらいがあるわけですから、野中広務・元官房長官の言葉を借りれば、「銭勘定だけで、人間としての尊厳を認めていない」ことになるのです。

それでも連合長は、後期高齢者医療制度は、趣旨や内容を丁寧に説明すれば、住民の理解が得られる制度だとお考えですか。

よく説明して理解を得たい(連合長)

【連合長】
後期高齢者医療制度は、「国民皆保険制度」を堅持し、将来にわたり安心して医療が受けられるようにするために必要な制度と考えているので、制度の趣旨や意義について説明する。終末期医療では人生観、家族の心情等むずかしい点があるので一旦立ち止まって考えるという政府の対応は妥当だ。

(再質問)障害者医療費助成制度について、適切な対応を求める厚生労働省の通知をどのように受け止めているか

【田口議員】
連合長の立場としては、国に対して廃止せよと言えないかも知れませんが、国や県にたいして制度の改善を求めることはできると思います。

その一つとして、後期高齢者医療制度を選択しない65歳から74歳の障害者にも、障害者医療費助成を適用するよう愛知県に求めていただきたい。

後期高齢者医療制度に移った71歳の障害者の方から、「国保のときと比べて、保険料が月700円から1,650円にあがった。国保では障害者ということで減免されていたが、後期高齢者医療では減免がないのはおかしい」というご意見を伺いました。障害者の方々は、65歳からこの制度に事実上、強制加入させられて、おそらく多くの方の保険料が上がり、しかも、受けられる医療は差別される。障害があることを理由に、10年も早く「姥捨て山」制度に入らなければならないのは、何と無情なことでありましょう。

名古屋市も、障害者医療費助成を受ける場合は、後期高齢者医療制度への加入を条件としています。連合長は名古屋市長でもあります。自治体の医療費助成制度について適切な対応を求めている厚生労働省の通知は、立場が変わればわが身に降りかかってくる問題です。連合長は、この厚生労働省の通知をどのように受け止めておられますか、お答えください。

助成の対象の範囲や内容などは遜色のないもの。県が判断する(連合長)

【連合長】
厚生労働省の通知は、県が必要な検討を行った上で、十分な情報提供を行い、関係者の理解を求めながら適切な対応をされたいとの内容である。愛知県の障害者に対する医療費の助成制度は、その助成の対象の範囲や内容など他県と比較して遜色のないものと考えるが、最終的には県において、適切に判断される。

(意見)必要な制度だと考えている人は、ごく少数。国会での速やかな審議と、できる改善は直ちに行え

【田口議員】
連合長は、後期高齢者医療制度は「必要な制度だ」とおっしゃいましたが、各種の世論調査でも、私たち日本共産党名古屋市議団が実施している「市政アンケート」でも、必要な制度だと考えている人は、ごく少数です。

先の国会では、野党4党が共同で提出した廃止法案が、参議院で可決しました。衆議院では継続審議になっていますので、私は、次の国会でのすみやかな審議と可決・成立を望むものです。

同時に、緊急に改善が求められる課題については、広域連合として前向きに対応すべきです。障害者医療費助成についても、「県が適切に判断するだろう」と、ひと事のような答弁でしたが、連合長も、立場が代われば名古屋市長として、適切な対応が求められている問題です。この問題は、後期高齢者医療制度の実施に関わって生じている問題ですから、広域連合としても愛知県に改善を求めていただきたい。

広域連合も地方公共団体の一つです。地方公共団体の役割は、言うまでもなく住民の福祉の増進にあります。そのために、広域連合として最大限努力するという立場に立っていだだきたい。

 

《議案質疑》
特別軽減というが、これまで無料だった人は救われない。実態はどうか

「愛知県後期高齢者医療広域連合後期高齢者医療に関する条例の一部を改正する条例の制定について」

同一収入の世帯でも保険料負担の格差が拡大するような措置は不十分だ

【田口議員】
議案第9号は、6月12日の政府・与党の見直しを踏まえて、20年度における経過的な保険料軽減対策として、7割軽減世帯の方の均等割を8.5割に軽減する、年金収入211万円以下の方の所得割を50%軽減するというものです。

この4月から後期高齢者医療制度が実施され、重い保険料負担に苦しんでいる低所得者の方にとって、少しでも保険料負担が軽減されることは喜ばしいことではあります。しかしながら、今回の特別軽減は、十分なものといえるのでしょうか。私は疑問です。そこで、3点お尋ねします。

1点目は、今回の特別軽減によって、同一収入世帯でありながら、世帯としての保険料負担の格差が拡大するケースがあるということです。

この点について、広域連合が先の議案説明会で保険料が軽減される事例として示した「夫婦世帯の場合で、妻の年金が135万円以下の場合」を例に検証してみたいと思います。なお、135万円以下というのは、均等割の軽減措置の判定における所得がゼロの場合です。

08年度の保険料特別軽減の内容

(1)7割軽減世帯の均等割を8.5割軽減にする
・均等割額は年額12,000円から6,000円に
・対象者162,000人、財源は財政調整交付金

(2)基礎控除後の総所得金額等が58万円以下(年収211万円以下)の所得割を50%軽減する
・対象者53,500人、財源は財政調整交付金

(1)(2)あわせて208,000人が対象(重複有り)

パネルを用意してきたので、ご覧ください。仮にAさん世帯としますが、夫の年金収入が168万円、妻の年金収入が135万円、夫婦合わせた年金収入が303万円の世帯と、仮にBさん世帯としますが、夫の年金収入が239万円、妻の年金収入が64万円、夫婦合わせた年金収入はAさん世帯と同額の303万円の世帯について、保険料の比較をしてみます。Aさん世帯の現行の保険料は、均等割の7割軽減が適用されるため、世帯の年間保険料は3万5100円です。一方、Bさん世帯の年間保険料は14万4100円。Bさん世帯は、均等割の軽減対象にならないために、Aさん世帯と年金収入は同じなのに、保険料負担では4倍の格差が現在でも生じています。

この格差が、今回の特別軽減でどうなるか。Aさん世帯には特別軽減が適用され、夫婦の均等割が8.5割軽減、夫の所得割が50%軽減となり、世帯の保険料は1万7500円に軽減されます。ところが、Bさん世帯は特別軽減が適用されないため、保険料は現行のままです。その結果、保険料負担の格差は8倍へと拡大するのです。

そこで、連合長にお尋ねしますが、今回の特別軽減によって、同一収入の世帯でありながら、世帯としての保険料負担の格差が拡大する事例が生じることをお認めになりますか。こうした矛盾が生じるわけですから、今回の軽減措置では不十分ではないでしょうか。お答えください。

そのような例も生じる(連合長)

【連合長】
今回の特別軽減では、7割軽減世帯の方の均等割額が8.5割軽減となるが、この7割軽減に該当するかどうかは、政令で「被保険者及びその世帯の世帯主」の所得が一定額以下の場合に適用するものと規定されている。したがって、所得税法に基づき、個人ごとに収入から所得を算出することとなり、指摘のような事例が生じることもある。

名古屋市の国保で無料だった約55,000人には新たな負担であり、不十分な措置だ

【田口議員】
2点目は、連合長が市長を務めておられる名古屋市の場合では、昨年度まで国保の75歳減免による10割減免を適用されていた人、約55,000人は、7割から8.5割に均等割が軽減されても、これまでは保険料負担がなかったわけですから、新たな保険料負担が生じることには変わりはありません。この点からも、今回の軽減措置では不十分であると考えますが、連合長の認識を伺います。

低所得者には減額制度がある(連合長)

【連合長】
後期高齢者医療制度は、高齢者の方々も一定の保険料負担をし、社会全体で高齢者の医療を支えようとするものだ。したがって、すべての方に、県下一律の基準により保険料を負担していただくことになるが、低所得者には減額制度があり、均等割額7割軽減の場合、年額12,000円が今回の特例軽減により6,000円に減額され、月額1,000円の負担が500円へと減額される。

後期高齢者保険料負担の世帯による比較
(夫婦世帯で、妻の年金が135万円以下の場合)

現行制度
  年金収入 収入合計 軽減 所得割額 均等割額 年額保険料 保険料計
Aさん 168万円 303万円 均等7割 11,145 12,052 23,100 35,100
135万円 均等7割 0 12,052 12,000
Bさん 239万円 303万円 なし 63,898 40,175 104,000 144,100
64万円 なし 0 40,175 40,100
Cさん 239万円 239万円 なし 63,898 40,175 104,000 144,100
0円 なし 0 40,175 40,100
軽減改定後 (BさんCさんは影響なし)
Aさん 168万円 303万円 均等8.5割
所得割50%
5,573 6,000 11,500 17,500
135万円 均等8.5割 0 6,000 6,000

21年度以降の軽減対策の実態はどうか

【田口議員】
3点目は、来年度になると軽減対象からはずされてしまって、保険料負担がもとに戻ってしまう低所得者が少なくないということです。

政府・与党の見直しでは、21年度以降の対策は、7割軽減世帯のうち、被保険者の全員が年金収入80万円以下の世帯について9割軽減にするとされています。したがって、今年度は8.5割軽減の対象となる世帯であっても、年金収入が80万円を超える被保険者がいる世帯は、来年度には7割軽減に戻ってしまいます。

そこで、事務局長にお尋ねしますが、来年度には保険料負担がもとに戻る人は何人いると推計しているのか、お答えください。

21年度以降の保険料の軽減はわからない。今回の軽減では33%が該当(事務局長)

【事務局長】
21年度以降の保険料の軽減は、具体的に明らかにされていない部分も多く、現段階では対象者数を把握できてない。

なお今回の特別軽減の対象者は、均等割8.5割軽減に該当する方が、約162,000人で26%、所得割50%軽減に該当する方が、約53,000人で9%、両方に該当する方が約7,500人おりますので、合計で約208,000人、33%の方が該当すると見込んでいる。

(再質問)軽減措置は個人単位で判定し、低所得者からは保険料を徴収するな

【田口議員】
連合長は、今回の特別軽減によって、同一収入の世帯でありながら、世帯としての保険料負担の格差が拡大する事例が生じることはお認めになりました。私が紹介したのは一例ですが、ケースによっては、同一収入の世帯でありながら、保険料の格差が、10数倍にも拡大する場合があります。

それから、こういうケースもあります。もう一度、パネルをご覧いただきたいと思います。議員の皆様は振り向かないと見えないと思いますが。仮にCさん世帯としますが、夫の年金収入がBさんの夫と同じ239万円で、妻が無年金でゼロの世帯の場合。このCさん世帯の保険料は14万4100円で、Bさん世帯と同額です。Cさん世帯は、Aさん世帯より年金収入が少ない――Aさん世帯は303万円、Cさん世帯は239万円。それにもかかわらず、Cさん世帯の保険料は今でもAさん世帯の4倍で、さらに、特別軽減後は、この格差が8倍へと拡大するのです。

なぜ、こんなことが起きるのか。それは、後期高齢者医療制度が個人で加入させられる保険であるのに、保険料の軽減制度は、世帯の所得で判定されるからです。矛盾を解決するには、保険料軽減の判定を個人単位に改めることが必要です。

そこで連合長にお尋ねします。保険料の軽減措置については、世帯単位でなく、個人単位で判定するよう改めること、さらに低所得者からは保険料を徴収しない新たな減免制度を設けることなど、さらなる見直しを国に求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

年金収入で見た軽減イメージ(夫婦世帯、妻の年金135万円以下の例)

国の動向を見守る。低所得者も、能力に応じた負担をしてもらう(連合長)

【連合長】
保険料の軽減判定を「世帯」でなく「個人」単位で行うことは、6月12日政府・与党が発表した負担軽減対策の中で、さらに検討すべき課題として、「他制度との関連も含めて引き続き検討し、早急に結論を得る」とされているので、その動向を見守りたい。

また、後期高齢者医療制度は高齢者も一定の保険料負担をして、社会全体で高齢者の医療を支えるものなので、低所得者も、負担能力に応じて一定の負担をお願いする。

(再質問)愛知県に対して健診事業への費用負担を求めよ

【田口議員】
所得割率や均等割額を引き下げればすべての被保険者の保険料を軽減できます。そのために、都道府県や市町村から補助金等を広域連合に投入することは法的には可能です。たとえば、愛知県が健診事業にたいして補助金を投入すれば、その分、保険料を軽減することができます。そこで、愛知県にたいして健診事業への費用負担を求める考えはないのか、連合長に伺います。

必要に応じて要望する(連合長)

【連合長】
後期高齢者医療制度の健康診査の費用、3分の1は国の補助金、その他は保険料という財源内訳で実施しており、制度上、都道府県や市町村の負担は義務付けられてない。

国には保健事業への国庫補助金の措置などを要望し、実現した。

県には今後の事業の実施状況を見ながら、必要に応じて対応したい。

(意見)制度そのものを廃止して、考え直す必要がある

【田口議員】
保険料の軽減判定を「世帯」でなく「個人」単位で行うことについては、国の動向を見守るだけでなく、国にたいして要望していただきたい。また、愛知県に対する健診事業への費用負担については、「必要に応じて対応する」という答弁でしたが、必要性を認識していただいて、県に求めていただきたいと思います。

最後になりますが、私は、後期高齢者医療制度が抱えている様々な問題の根本的な解決のためには、制度そのものを廃止して、考え直す必要があると考えています。ただし、今回の特別軽減によって、33%の人の保険料負担が、今年度においては軽減されるという点は、評価できるものであるということを申し上げて、質問を終わります。

愛知県後期高齢者医療広域連合議会定例会の議案概要と結果(2008年8月6日)

議案名 議案に対する
態度
結果 内容
共産党 他議員
議案
第9号
愛知県後期高齢者医療広域連合後期高齢者医療に関する条例の一部を改正する条例の制定 可決 国の特別軽減策。7割軽減世帯の均等割りを8.5割に、基礎控除後の所得金額が58万円以下の所得割を50%軽減する。
議案
第10号
平成20年度愛知県後期高齢者医療広域連合一般会計補正予算(第1号) 可決 8850万3千円の補正。啓発費1383万5千円、電算システム維持管理費7466万8千円。
議案
第11号
平成20年度愛知県後期高齢者医療広域連合後期高齢者医療特別会計補正予算(第1号) 可決 特別軽減の費用、15億3000万円の補正。財源は財政調整交付金。
議案
第12号
平成19年度愛知県後期高齢者医療広域連合一般会計歳入歳出決算の認定 可決 30億9734万3103円。市町村分担金11億8913万4千円など。
請願
第2号
後期高齢者医療制度の改善を求める請願書(請願者:愛知県社会保障推進協議会) 不採択 保険料の引下げ、独自減免制度の創設、資格証明書は発行しない、希望者全員への健診の保障、運営協議会の設置を。
請願
第3号
健診は国・県・市町村で負担することを求める請願書(請願者:愛知県社会保障推進協議会) 不採択 愛知県と市町村に3分の1づつの負担を求め、保険料への転嫁の解消を
請願
第4号
後期高齢者医療制度の改善のために国と愛知県に意見書の提出を求める請願書 (請願者:愛知県社会保障推進協議会) 不採択 保険料軽減のための努力を求める意見書を
陳情
第1号
後期高齢者医療制度廃止を求める陳情書(陳情者:農林水産省愛知県退職者の会) 不採択 制度の廃止、70歳以上は1割に、天引きやめよ。

態度:○=賛成 ●=反対  日本共産党以外の31人の全議員は同じ態度でした。

《請願審査》
制度の廃止が当然だが、それまではできる限りの改善をすべきだ。請願採択を

全員協議会での趣旨説明

制度の抜本的改善は市民の願い

【田口議員】
請願第2号、同第3号、同第4号について、趣旨を簡単にご説明申し上げます。

4月に始まった後期高齢者医療制度は、保険料は2年ごとに値上げされ、医療の差別をもたらすものであり、高齢者の尊厳を踏みにじるこの制度の廃止を求める国民の声が沸騰しています。この制度が抱えている問題は、政府・与党が決めた見直しを実施しても根本的には解決せず、制度そのものを廃止することが必要だと考えます。

しかし、制度が開始され、運用されている状況を鑑み、請願第2号は、今直ぐ改善すべき課題として、広域連合に対して、保険料の引き下げや独自の保険料減免制度の創設、資格証明書は発行しない、希望者全員への健診の保障、および運営協議会の設置を求めるものです。

また、同第3号は、健診にかかる費用について、概ね国が3分の1を負担し、残りの3分の2は被保険者の保険料で負担していることは問題であることから、愛知県と市町村に3分の1づつの負担を求め、保険料への転嫁を解消することを求めるものです。

また、同第4号は、後期高齢者医療制度の改善のために、国に対しては、保険料軽減のための財政負担割合の引き上げなどの実現を、愛知県に対しては、保険料軽減のための一般財源の投入などの実現を求める趣旨の意見書の提出を求めるものです。

各請願に対する賛成討論

請願第2号「後期高齢者医療制度の改善を求める請願書」

保険料の引き下げや減免など、できる改善をすぐに実施せよ

【田口議員】
「後期高齢者医療制度の改善を求める請願」について、賛成の立場から討論を行ないます。

まず、第1項、第2項の保険料の引き下げ、減免について、政府・与党の保険料軽減対策では不十分であることは、先の議案第9号にたいする質疑で明らかにさせていただきました。国の対策が不十分ならば、広域連合として低所得者に対する独自の保険料減免制度を設けるべきです。そもそも愛知県の一人あたりの保険料額は、全国で5番目に高い額となっています。平均の保険料額を引き下げるために、愛知県からの一般財源の繰り入れが求められています。

第3項の資格証明書の発行について、医療なしでは生きていけない高齢者から保険証を取り上げることは、行政が命綱を断ち切るむごい仕打ちです。

第4項の健診について、生活習慣病で通院や入院をしている後期高齢者は、健診を受ける必要はないというのが、政府や広域連合の立場です。しかし、生活習慣病には様々あり、一つの疾病で治療中であっても、健診を受けなかったために、他の疾病を見落とすことが起こりえます。疾病の予防と早期発見のためには、希望者全員が健診を受けられるようにすべきです。

ちなみに、40歳から74歳までの特定健診では、名古屋市の国保の案内を見ますと、健診を受ける必要がないとされているのは、6か月以上継続して入院されている方や介護保険施設入所者などに限定されています。健診を受ける機会においても後期高齢者を差別することは問題です。

第5項の運営協議会の設置について、全国の後期高齢者医療広域連合では、運営協議会あるいは懇話会を設置しているところが少なくありません。お隣の三重県も運営協議会を設置し、7月に開催された運営協議会では、制度開始からの現況報告や後期高齢者の健診、保険料の軽減対策などについて協議が行われています。本広域連合にも、住民や高齢者の意見を制度運営に反映させるために、運営協議会を設置すべきです。

請願第3号「健診は国・県・市町村で負担することを求める請願書」

健診費用について、県と市町村が3分の1づつ負担し保険料への転嫁の解消を

【田口議員】
「健診は国・県・市町村で負担することを求める請願」について、賛成の立場から討論を行ないます。

昨年度までの健診では、愛知県と市町村も3分の1づつの負担をしてきたわけですから、愛知県と市町村に対して健診費用の負担を求めることは、何ら躊躇することではないと思います。愛知県や市町村には制度上の負担義務はないかもしれませんが、保険料の軽減のために、県や市町村から補助金等を広域連合に投入することは法的には可能であり、すでに健診事業への補助を実施している都府県があります。

石川県は、健診事業への補助金として国の補助金と同額を広域連合に交付し、一人あたりの平均保険料が年額505円引き下げられました。京都府も、保険料の負担を軽減するとともに、後期高齢者の健診事業を促進するため、保険料軽減事業助成費を広域連合に交付し、年額約230円の保険料引き下げとなりました。東京都も、広域連合にたいして、保健事業にたいする財政支援として約6億7千万円の支援を行なっています。

愛知県や市町村が健診費用を負担すれば、本県の平均保険料を254円引き下げることができるという試算もあります。保険料がわずかでも安くなれば、県民にとって喜ばしいことです。そのための努力を広域連合として行なうべきです。

請願第4号「後期高齢者医療制度の改善のために国と愛知県に意見書の提出を求める請願書」

保険料軽減のために国と県は努力せよ

【田口議員】
「後期高齢者医療制度の改善のために国と愛知県に意見書の提出を求める請願」について、賛成の立場から討論を行ないます。

政府は、後期高齢者医療制度について、「公費を重点的に投入する制度」といってきましたが、実は、国の財政負担は、後期高齢者医療制度の導入によって、以前の制度と比べて減っていることが、国会質問で明らかにされました。老人医療費全体に占める国庫負担の割合は、昨年度が37.3%だったのにたいして、今年度は35.4%に減っているのです。仮に、昨年度と同じ国の負担割合を今年度も維持すれば、国の負担は2,340億円増えます。

政府・与党が6月12日にまとめた低所得者の保険料軽減対策の財源は、21年度以降については年間330億円といわれています。しかし、すでに、その7倍もの国の負担を削っていたのです。

請願が意見書の提出として求めている国の財政負担割合の引き上げや、新たな低所得者減免の創設、健診費の国負担の引き上げなどは、国が削った財政負担を元に戻せば可能であります。

また、愛知県からの一般財源の投入は、先に述べましたように、法的には可能であり、すでに実施している都府県もあります。愛知県は、広域連合に派遣している2名の職員の人件費についても、3分の1しか負担せず、残りは広域連合が市町村からの負担金で賄っているのが現状です。本当に愛知県はお金を出し渋っている。その愛知県に対して、本広域連合議会として、はっきりものを言うべきです。

平成20年第1回愛知県後期高齢者医療広域連合臨時会(7月8日)

7月8日(火)午前10時から、KKRホテル名古屋4階「福寿の間」にて、 平成20年第1回愛知県後期高齢者医療広域連合議会臨時会が行われました。

議長及び副議長選挙が行われ、指名推薦の結果議長に長瀬悟康議員(北名古屋市)、副議長に木村正範議員(安城市)が選出されました。また、加藤武夫(名古屋市)を監査委員に選任することも同意されました。

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