2008年6月定例会 議案外質問 うめはら紀美子議員(6月23日)

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生物多様性保全のための大規模開発の見直しについて
〜COP10名古屋開催にあたっての市長の認識について


うめはら議員

開発を優先し環境破壊してきたことへの反省はあるのか

【うめはら議員】
生物多様性条約第10回締約国会議COP10が名古屋で開催されることになりました。私ども日本共産党市議団は、名古屋開催を歓迎し、地球上の多様な生物の生育環境保全、大気汚染対策などの環境施策が、開催地にふさわしいものとなるように全力をつくしたいと思います。この間、海外の一部NGOは、名古屋開催に反対していたと報道されています。それは、これまで日本がおこなってきた森林伐採や資源の乱獲に対する、厳しい批判の表れからではないでしょうか。

COP10名古屋開催が決まって、市長は「会議を開くにふさわしい都市である事を世界に示さねばならない」と語られました。COP10開催地にふさわしい生物種保全と環境保全のためには、現在行われている開発行政の見直しをしなければなりません。環境問題に詳しい中部地方のある学者も「名古屋市や愛知県が、COP10の会場としてふさわしい政策をとっているかどうかの検証がまず必要だ」と語っています。

名古屋市では、ごみ処分場として埋め立てられようとした藤前干潟が市民の大きな運動で守られました。愛知万博では住宅地開発で破壊されようとした海上の森が、県民の運動で保全されました。しかし開発による様々な自然破壊は、過去の問題ではありません。松原市政のもとで、いまも続いています。例えば、ヒメボタルの生息地である天白区相生山緑地の真中を貫いて道路建設が進められています。千種区の池内猪高線では、ガマの穂が群生していた丘陵地に勾配のきつい道路が取り付けられ、コンクリートの連続する壁が地域を分断しかけています。この様に自然を破壊しながら道路建設を進める市政のあり方を根本的に転換しなければ、COP10の開催地としてふさわしくないと考えます。

これまで開発を優先し環境破壊してきたことへの反省をなくして政策転換ができるのでしょうか。市長の決意をお聞きします。

人間と自然、生き物が、お互いに機嫌よく暮らせる環境づくりを(市長)

【市長】
COP9と国際市長会議の連日にわたる議論の中で、生物多様性の保全は、人類が避けて通ることのできない共通の重要課題であると認識した。

都市活動と自然との共生は可能であり、知恵を集め、市民とともに市政全体の力でこうした街づくりを進めたい。 今後、まちづくりやライフスタイルが持続可能なものとなるよう、市民の皆さんといっしょに議論し、人間と自然、生き物が適度に折り合いをつけて、お互いに機嫌よく暮らすことができるような環境づくりを進めていきたい。

「木曽川水系導水路事業」に環境影響評価を

【うめはら議員】
生物多様性の問題を水問題から考えたいと思います。徳山ダムは、渇水時には必要であるとして建設されました。しかしダムは、クマタカやイヌワシの生息地である山の緑を呑み込んでしまい、生態系を破壊してしまいました。水資源開発公団や関係自治体は、100年に1度の渇水時でも大丈夫なようにダムが必要と言ってきました。しかし関係者の調査では、渇水時でも既存の水利権だけで必要な水が供給でき、全く必要のないことがわかりました。

その後、さらに必要のない徳山ダムの水を揖斐川の上流において導水管を敷設して、長良川と木曽川に放流するとしています。加えて長良川の下流部から木曽川にも導水路を作り、名古屋市は長良川の水利権の活用を図ろうとしています。

しかし、この放流はアユなどに影響を与えると指摘する学者がいます。ダムから放流された水は冷たく、濁っています。水温の違う水はなかなか混ざらず、下流まで2本の流れになることが多いと言われています。低水温は餌の食べ具合を悪くし、濁った水は餌の藻類の成長を妨げると言われています。さらに揖斐川、長良川、木曽川では、遺伝子レベルの異なった生物が生息しています。それにもかかわらず環境影響評価を行わないとは、生物多様性の保全に全く逆行しています。

導水路計画は水質悪化が懸念され生態系に影響を及ぼすおそれがあり、中止すべきと考えます。名古屋市は生態系を悪化させてまで、その水利用はすべきではないと考えます。少なくとも生態系の影響についての環境影響評価を行う必要があります。名古屋市は、国の事業として法に基づいて環境影響評価の実施を求めるべきだと考えます。市長の見解をお聞きします。

関係する地域の方々などから意見を聴く(市長)

【市長】
木曽川での年間降水量の減少傾向から、渇水が懸念される。この重態を回避し、都市活動や市民生活を支える水を安定的に確保するために、木曽川水系連絡導水路事業はぜひとも必要なもの。

木曽川水系連絡導水路事業は環境影響評価法の対象ではないが、導水路の建設に関して、国土交通省は各分野の学識経験者を委員とする検討会を開催し、環境への影響を検討するとともに、検討結果について、関係する地域の方々などから意見を聴くことにしている。

市としても環境に配慮した事業が着実に進むよう、3県1市の協議の場を活用して、国に対して働きかける。

「木曽川水系導水路事業」の環境への影響について(意見)

【うめはら議員】
市長は大規模開発に対する反省の気持ちが全くありません。COP10開催地として恥ずかしいかぎりです。私ども日本共産党市議団は環境施策や生物多様性の保全をするという視点にたって力を尽くしたいと思います。

導水路事業は利水の面からも問題がありますが、環境の面からも問題があり中止をすべきです。「導水路事業」は、環境影響評価法の影響評価の対象となっていないとのことです。しかし環境影響評価法では、環境保全のための措置を検討することが記されており、行ってはいけないわけではありません。当局は検討会を行っているといいますが検討会ではなく環境影響評価法の手続きを踏まえるべきです。

環境影響評価法の精神からしても、またCOP10開催地にふさわしい都市であることを世界に示す立場からも、このような大事業を行うのであれば環境影響評価を行ない住民の意見を聞き、情報を公開し、議論の場を持つことが当然の責務です。

名古屋市放課後子どもプラン(仮称)と学童保育について

名古屋市放課後子どもプラン(仮称)は問題だ

【うめはら議員】
名古屋市は、子どもたちの放課後施策として「放課後子どもプラン」創設に向けて取り組んでいます。「子どもたちの豊かな放課後」の基本的な考え方を示し、「新たなモデル事業」実施のためにパブリックコメントを行ったところです。このパブリックコメントは届けられただけでも1万件あり、メールやファクスを合わせると数え切れない程に達しているといわれています。市民の関心が高いということがこの数字でも示されています。

この「放課後子どもプラン」は、児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業を、トワイライトスクールと一体的に行う事業だと説明しています。しかし、「放課後子どもプラン」には留守家庭児童のための専用部屋も専任の指導員も記されていません。これで、児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業として認められるのでしょうか。

私たち日本共産党市議団は、先日、厚生労働省に行き、市の「放課後子どもプラン」が放課後児童健全育成事業として国庫補助の対象となるのか説明を受けてきました。厚生労働省の説明は次のとおりです。「放課後児童健全育成事業は留守家庭児童を対象とした事業であり、トワイライトスクールのような全児童施策と一体としておこなう場合でも、留守家庭児童のための『生活の場』としての機能が必要である」としています。つまり中心点は、専用部屋の確保と専任指導員の配置があるかどうかです。

ところが「放課後子どもプラン」では、「一人ひとりの子どもの状態に応じて情緒の安定を図るために必要な休息やくつろぎの場としての専用スペースを確保します」とあります。しかし、すべての子どもの静養スペースであって、国庫補助の要件は満たしていません。またスタッフは「運営指導者」「子ども指導員」「地域協力員」を配置するとなっております。従って、指導員はいますが、留守家庭児童に専任する体制とはなっていません。

市長は、記者会見で「こっちの子は一歩たりともあっちに入るなとか、こっちの指導者はあっちの子をかまうなとか、四角四面のやり方でよい指導ができるだろうか」と語ったと報道されています。市長は留守家庭の子どもにとっての生活の場ということの意味がお分かりになっておられるのでしょうか。

学童保育は、毎日通わなくてはならない留守家庭の子どもたちにとって「第二のおうち」です。いつも同じ指導員と同じ仲間と同じ場所がきちんと確保されてこそ生活の場なのです。学童保育の充実を求める国民的な運動によって、国もそのことを認めるようになって、学童保育が児童福祉法にも明記されたのです。

ところが、「放課後子どもプラン」は、留守家庭児童にとっての「生活の場」の持つ特別な重要性を認めておりません。すべての子どもたちにとって、生活の場も遊びや体験の場も必要だと一般化してしまいました。これでは法に基づく学童保育の実施とは言えません。

そこでお尋ねします。留守家庭児童にとって「生活の場」をどのように考えているのでしょうか。名古屋市は「放課後子どもプラン」で、最低限、すべての子どもを対象とした事業から、学童保育を明確に区別する、専用部屋と専任指導員を確保した、児童福祉法に基づく学童保育を行うと考えているのかどうか、局長お答えください。

名古屋市放課後子どもプランは児童福祉法にもとづくもの(局長)

【局長】
留守家庭児童にとっての「生活の場」は、毎日、放課後多くの時間を保護者と離れて過ごす留守家庭等の子どもにとっては、安心感やくつろぎを感じ、ありのままの自分で過ごすことができる居場所として大切だと認識している。

名古屋市放課後子どもプランでは、一人ひとりの子どもの状況に応じて、情緒の安定を図るために必要な休息やくつろぎの場としての専用スペースを確保することとしており、この専用スペースが、留守家庭等の子どもの生活の場としての機能をもつ。また、遊びや生活の指導や援助、保護者に対する子育て支援を行う「子ども指導員」を新たに配置、国の「放課後児童指導員」に位置づけられる。

名古屋市放課後子どもプランは、児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業に該当するものであり、厚生労働省と十分協議を行いながら、プランの具体化を図る。

既存の学童保育の充実こそ必要

【うめはら議員】
市の「放課後子どもプラン」が実施されたとしても、小学校における一体型の事業だけで学童保育を必要とする子どもたちに十分な量と質の保育を提供できるのでしょうか。

今年2月に厚生労働省が発表した「新待機児童0作戦」では、10年後の目標として学童保育に通っている割合を現行の19%から60%に引上げることを目標とし、今後3年間を集中重点期間としています。名古屋市の場合1学年は、おおよそ2万人ですから1年から3年までの6万人のうちの60%である3万6千人が目標となります。

ところが現在、名古屋市の学童保育に通う児童数は約4000人で6%にしかすぎません。せめて、保育園に行っている子どもが学童保育に入れるように箇所数を増やすことが必要です。10年後に国の目標値の60%に引き上げるためには、小学校における一体型の子どもプランを実施するとしても、現行の学童保育所の数も大幅に増やさなくてはなりません。

長年、親や指導員が苦労して築き上げてきた名古屋の学童保育と、その中で培われてきた指導員の専門性は大変素晴らしくかけがえのないものです。ところが今、運営が厳しいために学童保育は減り続けています。この様な状況を放置して学童保育のニーズに答えられるとお考えでしょうか。

そこでお聞きします。名古屋市はどれだけの子どもたちが学童保育を必要としていると考え、どのような目標を設定するというのでしょうか。私ども共産党市議団は、先日「放課後対策プラン」を提案させていただきました。学童保育のニーズにふさわしい目標を達成するには、既存の学童保育所の助成拡充や増設が必要だと考えますがいかがでしょうか。局長、お答えください。

モデル事業の検証・評価を踏まえてから(局長)

【局長】
名古屋市放課後子どもプランは、すべての小学校区での実施が目標で、具体的な数値目標は、それぞれの地域の状況に応じ、今後、検討していく。

学童保育所に対し運営助成を行う現行の留守家庭児童健全育成事業の今後の方向性は、モデル事業の検証・評価をふまえて、検討したい。

専用スペースと専任指導員の確保を(再質問)

【うめはら議員】
局長さんは「名古屋市放課後子どもプラン」は児童福祉法に基づく放課後児童健全育成事業に該当するものと認識しており、厚生労働省と十分協議行いながら、プランの具体化を図ってまいりたい」と答えられました。このことは、留守家庭児童のための学童保育の専用部屋と専任指導員の確保がされるということですね。これを満たさなければ児童福祉法による学童保育とは言えません。全児童のための部屋とは別に学童保育の専用の部屋がきちんと確保されるんですか。指導員は留守家庭児童の学童保育の専任の指導ですか。国との協議はこれからなのですか。

学童保育の助成拡充や増設については答えていません。国の新待機児0作戦ですが、国でさえ国民の声に押されて国が目標値60%としたのは、喫緊の課題だからです。名古屋市はどれだけ保育を必要としている子どもがいるのか調べましたか。名古屋市はどれだけの子どもに提供するのか目標を持たずに事業を行うのですか。

名古屋市の子どもプランの策定にはモデル事業を複数年行ってからつくると言っており3年近くかかりることになります。これでは、いま行われている学童保育は減少してしまいます。

厚労省もこの3年が大事だといっています。その理由は、少子化社会の克服、男女平等参画社会の建設、女性の社会進出の上からも、なんとしても解決の方向を見出さなければならない、という社会的課題からであります。学童保育のこれまで培ってきた財産を継承し発展させることが重要です。既存の学童保育所の充実はどのようにされるのか再度お聞きします。

当面の目標として全学区に放課後子どもプランを設置(局長)

【局長】
名古屋市放課後子どもプランにおける専用スペースや専任指導員は児童福祉法にもとづく放課後児童健全育成事業に該当する。具体的な数値目標はそれぞれの地域の状況に応じて検討する。小学校区全区にまず放課後健全児童育成事業を設置する。

学童保育への助成を行っている留守家庭児童健全育成事業の今後の方向性についてはモデル事業の検証・評価を踏まえて検討したい。

安心して子どもを預けて働くことができるよう学童保育の充実を(意見)

【うめはら議員】
小学校での「一体型」だけでは足りません。既存の学童保育の充実も図らなければなりません。安心して子どもを預けて働くことができる「豊かな放課後の実現」を求めます。

学童保育の要件を満たさず、トワイライトスクールに
一元化する「放課後子どもプラン」は撤回せよ
―名古屋市「子どもたちの豊かな放課後」の基本的な考え方(案)についての見解―

>> PDF:A4 4ページ(184KB)

妊婦健診公費助成の助産所への拡大を

【うめはら議員】
妊婦検診の5回の公費助成が決まりました。しかし、名古屋市では、助産所は公費助成の対象になっていません。公費助成の対象に助産所も含めてほしいとの要望が妊婦や助産師から寄せられています。

私はある助産所にうかがいました。助産師さんは妊婦さんに対して、出産に対する不安を取り除くために相談にのっています。出産の方法も自宅、助産所、と自分が安心できる方法を選ぶことができ、何かトラブルが起こったときは産婦人科医のバックアップを受けることができます。

産婦人科が減少しており、助産所がますます重要になっております。厚生労働省も昨年6月、助産所を公費助成の対象に含めるよう促す通知を出しています。名古屋市でも助産所も公費助成の対象とすべきです。局長いかがでしょうか。お答え下さい。

臨床検査を実施していない助産所へは今後の課題(局長)

【局長】
妊婦健康診査の公費負担回数を平成20年7月から出産予定の時期に応じて、現行の2回から5回に拡大し、5回全てにおいて血液検査を含めた健診内容を指定し、医療機関に委託している。

助産所は、産科医等との連携のもとに、正常な分娩の手助けや妊産婦・新生児の保健指導を行うところであり、血液検査などの臨床検査を実施していない。したがって、助産所は、公費負担による妊婦健康診査の委託先としていない。

助産所を公費負担の対象とすることは、今後の研究課題としたい。

 

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