2月議会 個人質問(3月6日) うめはら紀美子議員

障害者自立支援法について/元ハンセン病患者の社会復帰について

障害者自立支援法について

利用者負担が重すぎると思わないのか

【うめはら議員】
障害者自立支援法の4月からの施行に向けて、名古屋市では1割負担にすることで準備が進められています。しかし障害者と家族のみなさんの中には、「福祉サービスの利用料の1割負担はとても払えない」「親が死んだ後、子どもはどうやって生きていくのか」「自立支援法ではなく自殺に追いやる法律だ」などと悲鳴があがっています。

Aさんの例です。Aさんは通所授産施設に働きに行っており、月6万6千円の障害年金の受給者です。自立支援法の施行前は自己負担がありません。ところが施行後は施設の利用料1万5千円と食事代1万5千円合わせて3万円、さらに移動介護の利用料など新たな負担がかかります。1か月働いてもわずか1万円にも満たない給料しかない中で、これでは何のために働いているのかわからないと怒り心頭です。他都市の身体障害者通所施設では4月から80人中15人が通所を断念することになるとお聞きしています。

今回の自立支援法ではトイレに行くこと、食事を受けること、作業所で働くこと、病院にいくことなど全てにお金がかかることになります。自立支援法では人として生きていく権利が奪われることにさえなりかねません。市長はこうした国の制度改悪で一割負担になると障害者が大変になることをどう認識されているのですか。お答えください。

利用抑制にならないよう、国に配慮を求めた

【市長】
「増大するサービスを確保していくためには、利用者の方々を含め皆で支えあっていくことが必要」という観点から、福祉サービス等を利用した場合に、サービス量と所得に応じた負担をお願いする。

 

障害のある方の地域生活と就労を進め、自立を支援することは重要な課題であり、これらを推進するためには、持続的・安定的な制度の構築が必要であり、国が利用者負担を改正した。

 

利用者負担で利用抑制とならないよう、国が十分な低所得者への配慮を行うことを国に要望してきた。所得段階に応じた月額負担上限額が設定されるなど低所得者に対する軽減措置がされた。これまでも支援費制度の実施や障害者施設の整備に努めるなど障害者施策全体として、一貫してその充実を図ってきた。18年度でも相談支援事業の拡充し、今後も、障害のある人もない人も共に生きる社会の実現に向けて取り組んでいく。

利用者負担の市独自の軽減措置を

【うめはら議員】
利用料減免について質問します。

1点目は自立支援法での軽減措置についてです。

国は自己負担額の上限を設定しましたが、障害福祉サービス、自立支援医療および補装具それぞれの限度額となっています。その額は「低所得1」の市民税非課税世帯で保護者の収入が80万円以下の方は1万5千円、「低所得2」の市民税非課税世帯は2万4千600円、それ以外の方は3万7千円の負担となっています。しかも、サービスが重複すれば高い料金になります。

前回の11月議会でわが党の山口議員が、こうした障害者への負担増に対して名古屋市が支援制度を設けるように質問したところ、健康福祉局長は「制度の枠内で対応する。全国一律に行うものだ」と答弁しました。ところが政令市の京都市・横浜市そして東京都などでは国の重い負担に対して自治体独自で減免制度を設け負担の軽減を図っております。

例えば、京都市では自己負担額の上限を抑えるための仕組みを導入し、所得区分を独自に6段階に設定して、年間所得が230万円以下の場合は負担額の上限がおおむね国基準の50%となるようにしました。住民税非課税世帯で、収入が年間80万円以下の場合には、福祉サービスの上限は自立支援法では月1万5千円ですが京都市の軽減策では7千500円になります。その上、福祉サービス、医療、補装具を合わせた額に総合上限制度を設け高額な負担がかからないようにしています。そこでお聞きします。

名古屋市は、障害者が安心して暮らしていけるような軽減措置が必要です。少しでも安心できるように京都のような総合上限制度の実現を強く求めるものです。健康福祉局長お答えください。

全国一律の制度の中で充分な軽減策が図られるべきもの

【局長】
1割の定率負担ですが、所得段階に応じた月額負担上限が設けられ、国において様々な軽減措置がとられることとなった。市は、国に対して要望してきた。

 

障害者自立支援法における利用者負担は、法に基づく制度の枠組みの中で対処すべきであり、全国一律の制度の中で充分な軽減策が図られるべきもの。

市独自の移動介護制度は利用者負担軽減を

【うめはら議員】
2点目は移動介護利用の軽減措置についてです。

現在の支援費制度における居宅介護事業の中でも移動介護は大変喜ばれております。移動介護の主な内容は施設への送迎・通院・余暇外出支援などです。この利用により、家族が毎日の送迎から解放され、家族の体調や都合により本人の予定を変更しなくても済むようになりました。また家族以外との人間関係が深まっています。最近ではあちこちで、ヘルパーと一緒の障害者の姿を見るようになりました。障害者が街の中で生活することが、社会的に認知されるようになりました。

通所授産施設に通うBさんは、月に1度通院のために、移動介護を利用しています。両親は高齢で、病気がちで通院に付き添うことができず、施設の職員がやりくりして付き添っていましたが、ヘルパー利用が出来るようになりました。また、障害児を持っているCさんの例ですが、これまでパートの時間を削って送迎をしていたCさんがきちんと働けるようになり、他の兄弟にかかわる時間を作ることができるようになりました。

このように移動介護の利用により障害者と家族の生活にずいぶんゆとりが出来てきたのです。しかし、障害者自立支援法ではこの移動介護が介護給付からはずされ、10月から市町村事業の移動支援事業として実施されます。そのため移動介護について2つのことが懸念されます。

1つは現行の移動介護の水準が守れるかどうかです。もう1つは移動介護の利用料負担の問題です。市町村事業であるために、利用料は自治体独自で定めることができます。これまで支援費制度では応能負担であり、本人の収入が少ないので、ほとんどの方が低い負担で利用できました。自立支援法での負担とあわせての負担はさらに重いものとなります。自治体が独自で決めることができるのですから利用料負担の軽減を行い、この喜ばれている今の状況を続けることができないでしょうか。健康福祉局長お答えください。

国の制度に合わせていく

【局長】
支援費制度における移動介護は、平成18年10月から2つの形態に分かれて提供される。一つは、重度の障害者を対象として、移動と介護を併せて提供する重度訪問介護などの形態、もう一つは、「市町村地域生活支援事業」として位置づけられる移動のみのサービスを捏供する移動支援。

 

移動と介護を併せて提供される「重度訪問介護」は、全国一律のサービスとして1割の定率負担をいただく。10月から市町村生活支援事業として実施する移動支援も同様のサービスなので1割の定率負担とする。上限を設けるなど、配慮する。

 

移動支援は、国の要綱案が示されたばかりであり、具体的な内容については今後、早急に検討したい。

低所得者対策は不十分だ(再質問)

【うめはら議員】
障害者自立支援制度について再質問します。

市長は、「市は国に利用者負担について十分な低所得者への配慮を要望して来た」とおっしゃいました。今回、十分な低所得者への配慮ができていると思っておられるのでしょうか。お聞きします。

全国一律にやるべきだ

【市長】
独自に経過措置を考えている政令市があることは知っている。利用者負担は法に基づく制度の枠組みのなかで、採用すべきで、全国一律の制度の中で充分な軽減策が図られるものと考える。制度施行のあたり、低所得者に対する様々な軽減措置がある。制度実施後の状況をふまえて必要とあれば国に要望する。

移動介護は市の事業として無料で

【うめはら議員】
健康福祉局長に再度お聞きします。移動介護を1割負担とし上限設定で負担軽減を図りたいと答弁がありました。移動介護は市独自の生活支援施策として地方自治体の独自判断で行うことができるとしています。自立支援法による負担と合わせて移動介護の負担がされればさらに重い負担になります。自立支援法の負担に心痛めておられるなら、市として負担をかけない今まで通りにしてはどうでしょう。再度、お答えください。

国にあわせて1割にする

【局長】
各区役所、保健所で障害者の方からの利用者負担の軽減申請の相談や受付などを4月からの円滑な実施に向けて全力で取り組んでいる。10月から実施となる移動支援は、重度の障害者を対象とした同様のサービスが1割の定率負担なので、同様の負担の仕組みを考えているしかし、低所得の方に負担が過大とならないよう負担の上限を設けるなどの配慮することが必要であると考えている。

住民を守る意識にかけている(意見)

【うめはら議員】
この回答では納得できません。

障害者の方への負担増に対して心を痛める言葉は聞こえませんでした。国が福祉切捨ての負担増を押し付けてきた時、地方自治体の役割は防波堤となり、市民を守るのが本業ではないでしょうか。納得できませんが、時間がありませんので委員会での論議にゆだねて私の質問を終わります。

元ハンセン病患者の社会復帰について

【うめはら議員】
らい予防法は1996年廃止されるまでの90年間続きました。その上、廃止された後も患者に対しての人権無視の隔離政策がとられ、偏見や差別が根強く残り、2001年の「らい予防法」国家賠償請求訴訟で原告勝訴の判決が出て、やっとハンセン病に対し差別扱いをした国の責任が問われ、名誉回復がされるようになりました。しかし、いまなお偏見や差別のため療養所に4千100人の方が帰るふるさともなく生活を送っています。入所者のほとんどが治癒しているにもかかわらず社会復帰できた方はごくわずかです。入所者の家族は周囲からさまざまな差別を受けて、転居、一家離散の憂き目に会っており、家族に受け入れられる状態にないと言われています。

先日高齢の元患者のお一人に会いしました。この方は病気を罹ったためそれまで住んでいたところを追われ、お父さんのふるさとである名古屋市で住んでいました。その後強制隔離されて、長い間の差別で家族は離散しました。こうした差別や偏見をなくすこと、正しい知識を持って2度と過ちを起こさないようにしなくてはなりません。

そこで3点うかがいます。

市長も謝罪に訪問を

【うめはら議員】
第1点目です。療養所に残っておられる4千100人のうち愛知県出身者は130人ほどといわれています。かつて愛知県は全国に先駆けて「無らい県運動」として、ハンセン病患者の強制隔離に取り組んできた県です。この反省に立ち愛知県知事は、療養所を訪問し謝罪なさったそうです。療養所におられる愛知県出身の中には、名古屋市内の方も少なくないと思います。この点では、県に協力した本市の責任も免れません。国及び地方自治体によって人権侵害されてきた元ハンセン病患者に対する、市長の姿勢をきちんと示していただくことが大切だと思います。療養所に市職員は慰問をされているようですが、市長自身が訪問されることが必要だと思います。お答えください。

職員が毎年行っている

【市長】
ハンセン病患者の患者あるいは元患者並びに御家族の方々が長い間、偏見と差別の中で筆舌に尽くしがたい苦痛と苦難を受けてこられたことに対し、大変お気の毒に思うと同時に、心より遺憾の意を表します。

 

市は昭和40年代より訪問事業を開始し、現在では、局長を始めとした健康福祉局幹部職員が、全国で6箇所の国立療養所を毎年訪問している。この訪問事業は、療養所の皆様も大変楽しみにして頂いており、今後とも続けていきたい。

市営住宅への優先入居を

【うめはら議員】
第2点目です。療養所にはふるさとに帰り余生を過ごしたいと思いながら、帰れない人がたくさんいます。長い間の断絶で、家族や親類と連絡が取れなくなっているのです。こうした方々を受け入れる住宅が必要です。しかし、住むところを探すのは大変です。元患者さんは市営住宅の応募資格はありますが、現行では、なかなか当選できません。せめて余生をふるさとで過ごせるように市営住宅の福祉向け入居ができるようにしてはどうでしょうか。健康福祉局長お答えください。

福祉向け優先入居の対象に加えたい

【局長】
市営住宅の福祉向け入居は、一般募集とは別に、年2回、「高齢者世帯」、「障害者世帯」などが優先入居の対象となっている。ハシセン病療養所入所者の方の市営住宅の入居は、現行の福祉向け入居の対象に含める方向で検討する。

療養相談体制づくりを

【うめはら議員】
また療養相談の問題も重要です。元患者さんはらい菌はすでにもっていないですが,一般の病院に行くことに抵抗を感じて病院に行けない方がいます。愛知県はふるさとに帰った方たちに対して、一宮市の県立循環器呼吸器センター(元尾張病院)で年に2度の機会をつくり療養所から医師が来て対応しています。そこでお聞きします、名古屋市も愛知県のように療養所から医師をよび療養相談ができる体制を作り元患者さんに安心をしていただけるようにしてはどうでしょう。お答え下さい。

広域でやるべきで市では行わない

【局長】
元ハンセン病患者に対する療養相談事業は、愛知県が、国立療養所から派遣された専門医により、愛知県立循環器呼吸器病センター敷地内の施設で5月及び11月の年 2回実施している。平成16年度の相談者数は延べ19名で、そのうち名古屋市民は7名であり、相談者数は年々減少している。

 

療養相談は、専門性が高い点などを考慮し広域的に取り組むべきこと。現在、本市に療養相談を出来る体制を作るという考えは持っておりません。

差別や偏見をなくす取り組みを

【うめはら議員】
第3点は、名古屋市が差別や偏見をなくすための人権教育や啓発活動に取り組む問題です。

中学1年生にはハンセン病のパンフレットが厚生労働省から配布されています。これを活用して、説明をしたり、少し話したりして渡したのは市内の中学校の半数だそうです。ただ配るのではなく、せっかくのパンフレットですからぜひ人権教育の生きた教材として活用していただきたいのです。ある学校で人権教育の一環としての元患者の講演を聴いた愛知の高校生が感動して演劇を作ったそうです。すばらしいことではないでしょうか。また先日も蟹江町の中学校では、元ハンセン病の患者さんを招き講演会を開きました。名古屋市の学校現場において元患者の話を聞く講演会や元患者さんと触れ合う機会を持つことなどを計画してはどうでしょう。教育長の考えをお聞きします。

学校だけでなく人権啓発の活動も重要です。名古屋市は3年前にパネルを作って1度展示をされたものの、その後の活用はないと聞いています。名古屋市では人権施策推進室を設け、4年前「なごや人権施策推進プラン」を策定しました。ハンセン病について正しい知識の普及や啓発をはかり、ハンセン病に対し十分な理解を得るようにすることが大切です。市民経済局長にどう進めるのかおたずねします。

元患者の話を聞いたりすることは学校教育でも有効

【教育長】
ハンセン病に関わる偏見や差別をなくすためにはハンセン病は不治の病ではないことや誤解や偏見から差別されてきた経過など、正しい知識を身につけることが大変重要だ。学級活動や道徳の時間で厚労省のパンフレット「私たちにできること」を活用したり、社会科に授業でふれるなど、ハンセン病に関する対する学習を進めている。ハンセン病の元患者を講師に招き、話を聞いたり、ふれあうことも子どもたちがハンセン病に対する正しい知識を身につける有効な方策だと考える。

「なごや人権施策推進プラン」でも位置づけている

【局長】
「なごや人権施策推進プラン」で、ハンセン病に関する正しい理解を深めるため、人権教育や啓発活動の推進を、重要な課題の一つとして位置づけている。

 

国は昨年3月、ハンセン病に対する偏見・差別が助長されてきた実態の解明等を柱とした報告書を取りまとめた。

その内容を踏まえ、ハンセン病に関する正しい理解を促し、偏見や差別をなくすための啓発を、継続的に推進していくことが重要で、昨年7月に栄一帯で国・県等との共催で実施した「人権啓発フェスティバル」の中で、ハンセン病を正しく理解するためのパネル展示を行った他、11月には、広報なごや「人権を考える」特集号の中でも、元患者の皆さんの人権への配慮について取り上げた。

 

ハンセン病をはじめとする人権に関する市民啓発は、関係局との連携を図りながら、憲法週間や人権週間等のさまざまな機会を捉え、一層の推進に努めたい。

対策は急いで(要望)

【うめはら議員】
答弁いただきました。元ハンセン病患者の社会復帰については、少し前向きの答弁をいただきましたが、高齢の方が多く具体的な対応策を早急に行って下さることを要望いたします。

(以上)