議案外質議(10月6日) さとう典生議員

介護保険制度の改定による負担増について

保険給付の影響額はどれだけか

【さとう議員】10月1日から介護施設での居住費いわゆるホテルコスト・食費が保険給付からはずされ、自己負担になりました。

決まってから実施までの期間が大変短くて、利用者や施設関係者に周知徹底がされているとはいえず、現場で混乱が生じるのではないのかと危惧をしています。

この実施を目前にして、私どもに相談がありました。

仮にAさんとします。Aさんの母親が老人保健施設に入所しているのですが、年金が月3万円しかなく、兄弟でお金を出し合って支えてきたそうです。

住民票はAさんのところにあります。Aさんは60歳を越えた障害者で障害年金を支給されています。そして子供がパートで仕事をしてるので、課税世帯になってしまい、利用者負担区分では第4段階に分類されています。本人は非課税でも世帯では課税というケースです。

今度の改定で母親の入所費用が月3万円のアップになるというのです。

第3段階への減免措置もありますが、収入オーバーで受けられず、だからといって、これ以上兄弟でとても負担できない。「自宅に引き取るしかないが、自分に障害があり、とても在宅では介護できない。何とかしてもらいたい。」と実情を訴えられました。こうした例がほかにもたくさんあると思います。

今回は在宅介護とのバランスをとると言って負担が強行されたわけですが、同時に在宅を支えるデイサービスとかショートステイの食事代・滞在費も本人負担になっています。

在宅介護のかたも、施設から値上げの通知がきて同意を求められ、どうしょうかと迷っています。1食の値上げは少しでも、1ヶ月分になればデイサービス1回分になってしまいます。そこで、週2回、月に8回行っていた、デイサービスを7回に減らさざるを得ないという事態も生まれています。払えるお金が限られているので、今までと同じお金の範囲でケアプランをたてると言うことです。

これでは、今でも4割台の利用しかない在宅サービスの利用率はますます下がり、施設でも在宅でも安心して介護を受けられないことになってしまいます。

本当にこれでいいのでしょうか。どんどん利用が狭められていって、結局、介護保険制度そのものに対する信頼が失われるのではないでしょうか。

お聞きします。今回の改定で本市の保険給付額にどのように影響が出ますか。

保険会計の支出は5ヶ月で15億円の軽減になる

【健康福祉局長】今回の施設給付の見直しは、同じ要介護状態であれば、在宅も施設もどちらでサービスを受けても給付と負担が公平となるよう、介護保険の保険給付の範囲を介護に要する費用に重点化し、居住費や食費を保険給付の対象外とするものだ。ただし、その場合でも所得の低い方の負担額を一定の範囲にとどめるように配慮されている。

この施設給付の見直しに伴う、保険給付額全体への影響は、従来、保険給付の対象となっていた「居住費」・「食費」が対象外になったこと、一方、所得の低い方へは軽減措置が講ぜられたことを踏まえ、試算をすると、平成17年度で、保険給付費予算約940億円のうち約15億円程度の減額が見込まれる。

市内介護保険施設の居住費と食費の額の現状把握は

【さとう議員】市として民間事業所の料金改定とその影響をどのように把握しているのか。介護3施設の入所費用、デイサービス、デイケア、ショートステイの利用料改定状況と利用者の負担増の状況を調査すべきではないか。

県の報告を待っている

【健康福祉局長】現在、愛知県が、各介護保険施設からの利用料変更届出等の受付を行なっている。市としては、愛知県からの情報提供をうけ、各施設の居住費及び食費の設定状況等の把握に努めている。

市独自の低所得者対策を行え

【さとう議員】国の低所得者対策の対象にならない通所サービスの利用者の利用料軽減措置や利用負担額第4段階のなかでも本人非課税の方へもきめ細かい支援策をつくるべきだと考えるがいかがでしょうか。

配慮がされているので必要ない

【健康福祉局長】今回の国の改正は、在宅と施設における給付と負担は、公平であることが必要であるとの観点から、実施され、制度改正と併せて、制度の枠組みの中でいくつかの所得の低い方へのきめ細かな配慮が実施された。

本市独自の利用料負担の軽減策は、実施する予定はない。

36億円も負担増となる改悪だ(意見)

【さとう議員】給付が15億円減るという答弁でした。

給付は1ヶ月遅れるので5ヶ月分で15億円ですから月に3億円です。

1年に換算すれば、36億円になります。それだけの負担が高齢者にのしかかるのです。まさに改悪です。

一回の食費の値上げはわずかかも知れませんが、その分積み重なって、介護サービスを減らさなければならないことになります。場合によっては施設から出なければならない人も出てきます。結局お金がなければ、福祉も受けられないことになります。

介護でも高齢者がいじめられるということです。

調査して、実態をつかみ、助けのいる人に、市独自の減免をするべきです。

それをやらないということは、本当に冷たい市政だと思います。一刻も早く考えを改めることを強く求めます。

もう一点、低所得者への「きめ細かい配慮がされた」という答弁でした。しかし、認識が全く違うということを指摘しておきます。

多くの人が配慮からもれて何とかしてほしいと要望してくるのです。

全国の自治体で独自の減免をするところが増えているのはなぜなのか。国の制度では救われない人がいるから行うわけです。

現に目の前に困っている住民がいれば何とかして救う、そして国に制度の欠陥を直すように求めるのが自治体の役目だと思います。そのことを強く指摘します。

《マンションの地震対策について》

分譲マンションの耐震性の実態調査を

【さとう議員】昨年秋には新潟中越地方、今年の春には福岡西方沖地震と地震が相次ぎました。

これらの地震で、マンションの被害が発生しました。特に注目すべきは福岡のマンション被害であります。先日調査に行ってきました。

福岡市は他の政令市に比べて、高層住宅、マンションの比率が高いところだそうです。3月の地震では市の中心にあるマンションに被害が発生しました。

現地を見てきましたが、幅4mほどの狭い道路を挟んで、両側にマンションや共同住宅などが林立する地域でした。

そして道路の片方にある3つのマンションで壁や柱がX型に割れ、玄関が歪んで開かないなどの被害が発生していました。しかも、いずれも比較的新しく、建築後1年から8年のマンションです。ところが、周囲にある古いマンションには被害が出ていません。

いま福岡では、なぜ新しいマンションに被害が集中したのか?耐震設計がおかしかったのではないのか?と問題になっています。

ところが、建築基準法の耐震基準では「柱と梁りが壊れなければよい」ということになっていて、建物が倒れなかったので目的は達したということになってしまうのです。

「隣との壁や廊下の壁は雑壁と言って、壊れるものだ」そこが壊れることによって建物全体が壊れないようにしているのだと専門家はいいます。

しかし、住んでいるものにとってはそれではとても納得できません。壁が壊れれば生活ができなくなります。また将来のことを考えれば、大きな不安が残ります。

福岡のマンション管理組合の人々は「設計・施工に問題があったのではないか。この原因究明をおろそかにすれば同じ事態が福岡に限らず全国で発生する可能性がある」と警告を発しています。

この警告をきちんと受け止めなければなりません。私なりに「なぜ、新しいマンションだけに被害が発生したのか」を考えてみました。たぶん、「耐震基準は一定のレベルを超えればよい」というので、ぎりぎりの設計がしてあったのだと思います。

余裕のある設計をしてあれば、持ちこたえたと思われます。

ちなみに、名古屋市の建物は設計上の余裕はどうかと聞いてみましたら、避難所になるところは基準の25%増し、市役所・区役所・病院などは50%増しで設計してあるとのことでした。

マンション住民にとっては自分のマンションがどの程度の余裕を持って設計してあるのか、大変気になると思います。

この地方では東海地震、東南海地震の発生が懸念されています。名古屋市が強化地域に指定されて3年がすぎましたが、この間に建てられたマンションの耐震はどうなのでしょうか。

そこでお尋ねします。マンションの耐震設計のランクについて調査することを求めます。特に建築年の新しいマンションを調査すべきと考えます。

民間建築確認になって以降の分について、調査し、住民からの依頼があれば情報を提供することを考えていただきたいと思います。

所有者みずから行うことだ(局長)

【住宅都市局長】建築基準法に基づいて行う地震に対する構造計算は、建築物の保持すべき水準を満足しているかを判断するものであり、耐震設計水準のランク付けをするものとはなっていない。

建築年が新しいマンション等についての耐震性能調査は、住宅購入者等の利益保護を図ることを目的として制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき住宅の性能評価を利用したり、耐震診断等により確認していただく。

これらの調査は、基本的には建物所有者が実施すべきものだ。

新たな評価方法「パブリックレポート制度」の導入を

【さとう議員】次にマンション購入時に耐震基準をどの程度超えているのか、購入者にわかるような制度をつくるべきだと考えます。たとえば、分譲マンションについては、建築関係書類を公開させ、専門家の意見を求めて公表する、「分譲マンションパブリックレポート制度」をつくることを提案します。

現行の住宅性能表示制度の活用を(局長)

【住宅都市局長】パブリックレポート制度」が意図する消費者保護の立場と同様の視点で、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて、建築主が第三者機関に依頼し、耐震性能を含んだ住宅の性能評価をする「住宅性能表示制度」がある。

これらの制度は、すべての分譲マンションに対して義務づけるものではないが、制度開始から数年を経過し、今では多くの建築主や事業者に周知されている。新築分譲マンションの相当程度に活用され、住宅購入者の不安解消が図られている。今後もこの制度が一層活用されるよう努める。

「パブリックレポート制度」の具体化を(要望)

【さとう議員】答弁では「住宅性能評価制度」がある、ということでした。

では、その制度があれば今回の福岡の地震被害を防げたのでしょうか。

先ほども紹介しましたが、「柱と梁が壊れなければ、耐震性に問題はない」という基準であれば、住宅の性能にも問題はなかったということ弱点があるのです。

福岡のような事例は、たとえば、建設の前に、誰か第3者が設計図をみてが「この設計はぎりぎりだ」と声を出せば、避けられたかも知れません。

この第3者が声を上げて、警告を発しようというのが、今日私が提案した「パブリックリポート制度」です。

米国カリフォルニア州で実施されています。

新規分譲時点で中立の専門家がソフト面、ハード面からチェックするシステムにより、欠陥マンションの販売を防止しようというものです。

一生のうち、マンションを買うというのは一回あるかないかです。しかも、高い買い物です。

そのマンションに欠陥があったり、地震ですぐに壊れてしまうというのでは人生設計が大きく狂うことになります。

それを未然に防ぎ、消費者を保護しよう、という思いで今日は質問しました。

今後、さらに研究をしてより具体的なものにしていきたいと思います。

《地下式マンションの規制について》

低層住居専用地域での建設を規制せよ

【さとう議員】建築基準法の規制緩和で共同住宅の場合、最大で20%容積率を越えて建築できるようになり、より高い建物が建てられるようになったので、多くの日照被害を引き起こし、周辺住民との紛争が増えています。

また、容積率の緩和と併せて、地下室を容積率に入れないという緩和もありました。

この規定を利用して、斜面に地下室をつくって、マンションを販売する業者が現れ、横浜・川崎・横須賀などで大問題になりました。この地下室マンションがとうとう名古屋でも現れました。

「地下室マンションとは何か?」たまたま自宅にチラシが入ったので、見てきました。急な斜面地に道路面から見ると5階建てのマンション。広告では地下1階地上4階、建築基準法上は地下2階地上3階と紹介されています。

用途地域は一種低層住居地域です。もっとも規制がきつく、3階までしか建てられないところです。

隣の建物では盛り土のよう壁がある部分に部屋ができています。これが地下室ということです。なるほどうまく考えるものだと思いますが、感心ばかりはしていられません。

緑区の1種低層住居地域でも、この地下室マンションの建設が計画され、周辺住民のみなさんが困っているというので、現地を見に行きました。

なだらかな北だれの傾斜地が建築予定場所でした。

そこに、道路から見れば最高で7階建てのマンションを建築、分譲するという計画でした。1種低層住居地域なので、回りには2階建ての戸建て住宅が立ち並んでいる地域です。そこに地下2階地上5階建ての計画というのですから、当然のことのように、日照被害が問題になってきます。

戸建て住宅しか建たない、低層住居専用地域だからと終の棲家を求めた人々にとっては災難が降りかかってきたので、大騒動になりました。

さて、なぜ7階が建つのか。まるでマジックです。からくりは「平均地盤の計算」「マンションの容積緩和」「地下室不参入」「公開空地」など規制緩和の規定を駆使して、高さも緩和され、回りの家より高い建築物が可能となってくるのです。

しかし、なぜ、マンションだけがそのようなことが許されるのでしょうか

1種低層住居という用途地域指定で良好な住宅街をつくろうという法の趣旨に反するのではないでしょうか。このようなマンションはまちをむしばむ存在となってしまいます。

緑区の例はさいわいなことに、住民との最近の話し合いで、建築業者は当初計画を撤回して、最高でも地上4階地下1階に計画変更して、戸数も減らし、高さも10メーターの制限に従うということを表明しました。今回は住民のみなさんの働きかけで解決の方向に向かいそうですが、このような事態を防ぐため、建築基準法の改正によって、地下室について自治体の独自規制が可能となっています。

横浜では市条例で地下室マンションを規制して地下1階のみを認めることにしたと聞きます、そこでお聞きします。

名古屋市でも1種低層住居地域では地下1階しか認めないように条例を制定すべきと考えますが、いかがでしょうか?

低層住居地域での住環境を守るため早急に検討する必要があります。

さらに言えば、地下式マンションの建築確認は本市が行うようにすることも考えるべきだと付け加えたいと思います。

今は被害がないが研究課題(局長)

【住宅都市局長】現行の建築基準法の規定は、斜面地では建築物の高さの基準となる地盤面を高低差3メートル以内ごとにそれぞれ設定することができる。また、住宅の地下室については容積率の算定に含めなくてよい。そのため、敷地の規模にもよるが、ときには斜面に沿って階段状に共同住宅を建築することが可能となる場合がある。

他都市では、開発事業者と住民との間で紛争となるケースが見受けられるが、本市では、低層住居専用地域に、多くの場合重複して指定されている風致地区で、斜面地においては、既に、地盤面の設定方法を限定し、斜面地マンションの建築規制を行っており、低層住宅に係る良好な住居の環境を害するような事態には至っていない。

しかし、風致地区外の低層住居専用地域の斜面地であれば、他都市で問題となっているようなケースが出てくることも考えられる。先行自治体の状況やその効果等について、今後、調査研究したい。

地下室マンションの建築確認は、建築基準法に基づきなされる行為であり、特定の物件について特定の審査機関への提出を義務付けることは出来ない。

地下室マンションの規制を急げ(要望)

【さとう議員】当局も本市の現在行っている風致地区内の地盤の規制だけでは、歯止めがかからない場所が生じることを認められました。今日紹介した緑区の事例のようなことが今後も起きてきます。被害が発生して、紛争が起きてからでは遅いのです。結局、住民が泣き寝入りをさせられることになります。日照被害は取り返しが利かないのです。建物がある限り永久に被害が生じます。そのようなことにしないために、一刻も早く、規制条例を作ることを強く求めます。