補正予算案等に対する質議(2月22日) 山口きよあき議員

鳴海工場のPFI事業−24年間、382億円で新日鉄に丸投げ
CO2 や価格は競争相手より悪かったのに落札?


議場で質問する山口きよあき議員

鳴海工場建て替えはPFI事業でいいのか

【山口議員】
鳴海工場建て替えに関する契約について質問します。

この契約案件は、本市が、鳴海のゴミ焼却工場の設計・建設から運営・維持管理までを、PFI方式で、新日鉄を代表とする6社が共同出資した株式会社「鳴海クリーンシステム」との間で契約を結ぶというものです。

初めての本格的なPFI事業の契約。契約の詳細を公開して議論を

【山口議員】
PFI事業として、契約額も382億円と多額ですが、契約期間も24年間と四半世紀近い長さです。この長期にわたり本市の事業内容を拘束する契約内容はどうなっているのか。これだけ長期の契約案件、かつ建設から維持管理まで含めた工場丸ごとの委託です。他の契約案件と同じように金額と相手先を示すだけでは十分な論議ができないのではありませんか。安全確認や環境保全、事故時の対応など契約の中身についても、市民と議会に明らかにすべきだと考えますがいかがですか。

インターネットで公開している(局長)

【環境局長】
PFIの手続きでは、実施方針や入札説明書等の作成時から、PFIの手続きに必要な情報を、インターネット等で公開してきた。事業契約書の案も、入札説明書等と併せて平成16年4月にすべて公開した。また、議決し、契約を締結した後に、事業契約の内容を公開したい。

24年間の長期契約で金額は変わらないのか

【山口議員】
24年間のうち建設4年、管理運営20年ということですが、その間には、生ゴミの資源化もいまより進み、ゴミの組成が変化することも当然予想されます。技術革新も進みます。ゴミ量の変化や技術革新などによるコスト削減に伴って委託契約は見直されるのでしょうか。燃やす中身や量により契約金額が変わるのならば、今回契約する金額とはいったい何の金額なのかが問われます。

今回結ぼうとする契約金額は24年間変わらないのでしょうか、見直されるとしたら、どんな場合に、どのくらいの幅で変更されるのか、お答えください。

変動を加味した金額だ(局長)

【環境局長】
PFI事業契約は、民間事業者による長期に渡る事業運営を前提にした契約だ。したがって、契約期間中に、事業量の変動や制度変更等を加味した金額としている。

分別したプラスチックも燃やしてしまうのか

【山口議員】
今回導入しようとするガス化溶融炉とは、どんなゴミでも溶かして処理してしまうことが最大の特徴です。容器包装以外のプラスチック類も分別リサイクルでなく燃やしてしまうのでしょうか。もしそうならば、いままで市民が懸命に行ってきたゴミ分別の努力は何だったのでしょうか。

今回の契約では、破砕済み不燃ゴミも可燃ゴミといっしょに溶融することを前提にしているのでしょうか、明らかにしてください。

破砕不燃ゴミも溶融する(局長)

【環境局長】
埋立て量を削減するために、当初より、破砕不燃ゴミを溶融により資源化をはかる予定だ。

2グループだけの入札で競争原理か

【山口議員】
入札にあたり競争原理が働いたのか、なぜこの事業者を選んだのか、うかがいます。

そもそも入札に応じたのはわずか4グループです。しかもそのうち2グループは、グループを構成する会社が指名停止の措置を受けたため「入札参加資格がない」と判定され、結果的に2グループのみの入札でした。わずか2グループだけの入札で、PFIのメリットとして強調されてきた民間事業者同士の「競争性が確保」されたと言えますか、局長の認識をお聞きします。

総合的に評価した(局長)

【環境局長】
鳴海工場整備・運営事業の事業者選定にあたり、総合評価一般競争入札方式により、価格点と性能点の合計点の高い提案を行った応募グループを落札者とした。結果的に2グループによる入札となったが、学識経験者による審議委員会からも、いずれも技術面・運営面において、市があらかじめ提示した要求水準を上回る提案内容であるとともに、コストの削減という観点からも優れた提案であったとの評価だったので、競争性は十分確保されていたと考える。

今後は、より多くの民間事業者が参加しやすい条件整備について、更なる検討が必要ではないかと考える。

CO2 も多く排出し価格も高いのになぜ「新日鉄」溶融炉を選んだのか

【山口議員】
事業者の選定に関する評価結果を見ると、入札提示価格は落札できなかったグループが23億円も安かったとあります。この差は小さくないと思います。

また二酸化炭素=CO2 排出量の評価でもABCDの4ランクで、もうひとつのグループがA評価なのに落札した「新日鉄」グループはC評価と判定されています。CO2 排出量は重要です。そこでまず、この評価の差は、CO2 排出量でどのくらいの差だったのか、数量的に明らかにしてください。このような問題点があるのに、あえて新日鉄グループを選んだのはなぜか、総合的な判断と言われるとは思いますが、端的にお答えください。

導入する予定の「新日鉄」製の溶融炉について、ガス化溶融炉とは一般的には、まずゴミそのものを蒸し焼きにし、そこで発生するゴミ自身の高温ガスを利用してゴミや灰を溶かします。ところが新日鉄のシャフト炉と呼ばれる溶融炉は、ゴミを溶かす補助燃料にコークスを大量に使います。いわば熔鉱炉のような構造を持つところに大きな特徴があります。

先日2月16日、京都議定書が発効しました。本市も地球環境問題に取り組む目標のひとつとしてCO2 の10%削減を掲げています。ところが新日鉄のシャフト炉は、コークスを原料に燃やすため、一般のゴミ焼却工場よりも、また他の方式のガス化溶融炉よりも大量にCO2 を排出するのです。

環境局長!京都議定書発効直後にあえて、このいかにも製鉄企業ならではの溶融炉を使おうとするのか。新日鉄の溶融炉には他にも多々問題点がありますが、CO2 を大量に排出する点は、本市が、とりわけ環境局が導入するうえでは致命的な弱点だと私は考えますが、局長としてこの点をどう認識しているのか、お答えてください。

CO2 排出量は新日鉄が35%多いが、総合的に判断した(局長)

【環境局長】
新日鉄グループの事業提案では、もう一方のグループに比べて、CO2 の排出量が約35%多い数値でした。しかし、落札者の事業提案は、価格点とCO2 排出量以外の評価項目が高く評価され、総合点ではもう一方のグループの提案を上回り最優秀提案者として選定され、落札者として決定した。

CO2 が多くてもいいのか(再質問)

【山口議員】
CO2 排出量が35%も多いという答弁でした。私は、環境局が導入するにはやはり致命的な弱点だと思いますが、この点の認識だけ再度、環境局長お答えください。

屋上緑化などを評価(局長)

【環境局長】
屋上緑化を含む緑化率の向上、エネルギー効率を向上させるコージェネレーションのシステム採用などで、配慮できていると考えている。

本市の環境・ゴミ行政にも逆行する契約だ

【山口議員】
いま国は、大型溶融炉建設への補助金をテコに、ゴミの広域処理の推進、廃プラスチックの焼却をすすめようとしています。この工場でも、分別したプラスチックゴミまで燃やす、溶かしてしまうという計画との答弁でした。経費削減と言いますが、この工場建設にも国から59億円もの補助金が直接PFI 事業者に支払われるのです。

しかし大型の溶融炉で何でも燃やす、溶かすというのではゴミ問題の根本的な解決にはなりません。ましてCO2 の削減計画にも逆行するような炉の採用には首をかしげざるを得ません。 大型溶融炉を建設してしまえば、(営業に必要な)ゴミ量を確保するため、かえってゴミを呼び込むことになることも危惧されています。

ゴミ問題の解決のためには、本市から国に要望しているように「循環型社会の構築」に向けて「拡大生産者責任の考え方を徹底」し「発生抑制、再使用を促進する」ことこそ重要です。そしてプラスチック類などは、「リサイクルの対象を容器包装に限定せず、わかりやすい素材別リサイクルとすること」を、本市は国に要望していたのではありませんか。

提案されている議案が、環境首都をめざすという本市の環境行政・ゴミ行政の方向にそった契約内容なのかどうか、所管の委員会での徹底した審議をお願いして質問を終わります。

ガス化溶融炉
熱分解炉でごみを加熱し、熱分解ガスと炭素を含んだチャー(無機物)に分離。その後、熱分解ガスのエネルギーにより高温(1200-1700℃)となった溶融炉にチャ−を投入し、溶融スラグにする(キルン式・流動床式)。熱分解炉と溶融炉が一体となったものは、ごみに含まれる炭素と副資材(コークスや純酸素など)を使用することにより高温とし溶融スラグ化するもの(シャフト式・ガス改質式)もあります。

 

(別表) PFI事業選定にかかる総合評価得点結果
評価項目 配点 神鋼環境ソリューションG 新日本製鐵G
評価 得点 評価 得点
ア 事業計画に関する評価
事業実施方針 5 B 3.75 A 5.00
採用技術の信頼性 4 B 3.00 A 4.00
事業遂行上の独創性 3 B 2.25 B 2.25
小計 12 9.00 11.25
イ 施設計画に関する評価
建築計画 4 B 3.00 A 4.00
施設配置・レイアウト 3 B 2.25 B 2.25
景観 3 A 3.00 A 3.00
工事計画 2 B 1.50 A 2.00
小計 12 9.75 11.25
ウ 中間処理の性能に関する評価
処理システム 4 B 3.00 A 4.00
施設の安全性 4 A 4.00 A 4.00
ごみ量変動への対応 4 C 2.00 A 4.00
ごみ質変化への対応 4 A 4.00 A 4.00
ごみ供給条件 3 B 2.25 A 3.00
用役量の妥当性 3 A 3.00 B 2.25
小計 22 18.25 21.25
エ 運営・維持管理計画に関する評価
運営体制 3 B 2.25 A 3.00
運転管理 3 B 2.25 A 3.00
安全・衛生 3 A 3.00 A 3.00
緊急時の対応 3 B 2.25 A 3.00
点検・整備・補修 3 B 2.25 A 3.00
地域社会への配慮 3 B 2.25 A 3.00
小計 18 14.25 18.00
オ 環境・循環型社会への配慮に関する評価
環境保全対策 4 A 4.00 A 4.00
(温室効果ガス)
地球環境への配慮
4 A 4.00 C 2.00
(自然エネルギー等) 2 A 2.00 A 2.00
(引き渡し量)
溶融スラグの活用
4 A 4.00 A 4.00
(需要の確実性) 2 B 1.50 A 2.00
(引き渡し量)
溶融飛灰の活用
2 B 1.50 A 2.00
(市への協力提案) 2 B 1.50 A 2.00
金属類の活用 2 A 2.00 A 2.00
余熱の活用 2 B 1.50 A 2.00
小計 24 22.00 22.00
カ 経営計画に関する評価
収支計画 5 A 5.00 A 5.00
資金調達計画 4 A 4.00 A 4.00
リスク対応の適切性 3 B 2.25 A 3.00
小計 12 11.25 12.00
性能に関する評価点  合計 100 84.50 95.75
 
入札価格の評価点 100 100.00 94.72
(参考:入札価格) 予定価格は 429億5千万円 341億6,646万4,349円 364億1,617万5,166円
 
総合評価   合計 200 184.50 190.47
順位 2 1

名古屋市鳴海工場整備・運営事業審議委員会の審査講評(平成16年11月25日)より