個人質問(3月3日) さとう典生議員

LRT(新世代路面電車)―公共交通中心のまちづくりに
傾いた歩道…「ポスト万博」は生活道路整備を

《名古屋交通戦略について》


議場で質問するさとう典生議員

LRTの具体化を

【さとう議員】
通告に従い、質問します。今日は「人に優しい街づくり」をどう進めるかについて、二つのテーマで市長並びに当局の考えをお聞きします。

まず、初めのテーマは名古屋交通戦略についてです。さて、来年度の予算などを見てみますと、いわゆる「ポスト万博」について、当局は名古屋駅前の超高層ビルづくりや「都市再生」地域内での再開発ビルの建築をすすめることに重点を置いているように見受けられます。結局、「都市再生」という名の開発を続けていこうと言うことです。果たして、名古屋の将来はそれでいいのでしょうか。都市再生だと行って街を壊して、開発を続けていては、いずれは破綻すると思います。

市長は「環境首都」をめざす、と言いますが、「都市再生」の再開発ビルによってそれが実現できるのでしょうか。私にはとてもそのように思えません。名古屋が「環境首都」をめざすというなら、「車に頼らない」まちづくりに重点を置くことが大事だと思います。

CO2の10%削減の課題や、排ガスによる大気汚染の問題を考えても「自動車の使用を抑える」ことが、21世紀の名古屋のまちづくりの基本になると考えます。当局も2010年に公共交通機関と自家用車の割合を3:7から4:6にするといっています。名古屋交通戦略ではパークアンドライドや違法駐車対策、エコポイントTDM、ちょい乗りシステムなどの提案がされています。しかし、こうした施策で4:6が本当に達成できるのか疑問を持たざるを得ません。例えば「パークアンドライド」ですが、ヨーロッパでは駅の前に駐車場があり、料金も一日で350円程度と大変安くなってます。また月決めでも、5、6千円程度です。電車バスの料金はセットでさらに安くなります。比べてみて本市の場合はどうでしょう。駅からは遠く、料金は高いというのでは利用がすすまないのではないでしょうか。

今回提案されているのは、いわば交通政策の周辺の施策といってもよいことだけです。果たして、これで、自動車の使用を止めて公共交通機関に移行するのでしょうか?何か足りないと思います。本当に4:6にしようとするなら、もっと総合的に公共交通機関の体系を考えなければならないと思います。また、市民に対して、ダイナミックにアピールすることも必要であります。いま、21世紀の「名古屋の交通システムとして何がふさわしいか」の議論を行うことが大切です。

名古屋交通戦略では今後の課題として「新しい交通システム・技術の導入」として、超低床式の新世代路面電車すなわちLRTがあげられ、調査研究が必要とされています。さて、LRT・新世代路面電車とは何でしょうか。90年代にヨーロッパで最新の技術革新の結果生まれたシステムで、道路上の低いホームから段差なしで乗り降りできる、高齢者や障害者にとって大変使いやすい路面電車です。デザインも新しく超低床式で昔の市電とは全然別の乗り物です。ヨーロッパではLRTの導入は中心市街地の再開発・活性化の切り札とも認識されています。また、横に動くエレベーターともいわれます。

私は都市内の自動車交通を劇的に減らすにはLRTが切り札だと思います。

そこで、まず、市長に、LRTの調査研究を具体化するつもりがあるのかどうか、お尋ねします。

地下鉄の10分の1でできるLRT導入を

【さとう議員】
LRTに一度乗ればその快適さは実感できます。フランスのストラスブールやドイツのフライブルグについては交通戦略でも紹介されています。国内でも広島や熊本、岡山、富山の万葉線などに導入されています。(パネル1を見せながら)この写真はストラスブールのLRTに車いすの人が乗る場面です。ホームから車いすのまま自由に乗り降りができます。(パネル2を見せながら)こちらの写真はフライブルグのトランジットモールです。車の乗り入れは禁止されて歩行者が自由に歩けます。その間を路面電車が走って行きます。

ストラスブールではいったん廃止した路面電車を90年代にLRTとして復活、中心市街地にトランジットモールつまり自動車の乗り入れを禁止した歩行者専用道と商店街を作りました。その斬新なデザインの列車と古い町並みとの組み合わせがユニークです。活性化の成功例として世界に紹介されています。フライブルグは環境先進都市として有名ですが、路面電車網が整備され、やはりまちの中心はトランジットモール化されていますし、もちろん低床式の電車が導入されています。同じくドイツのカールスルーエは路面電車と鉄道網のネットワークで有名です。路面電車が鉄道路線に乗り入れて、となりの市や町まで走っていきます。そして、ふたたび市内では路面電車として街の中心地へ乗り入れています。路面電車と鉄道バスのネットワークが整備され、料金システムもゾーン制といって、各交通事業者の連合体が共通の料金体系をつくって、大変便利で割安になっています。こうした先進都市の例をぜひ研究していただきたいと思います。

さて、LRTの建設コストは地下鉄建設費の10分の1で、1キロあたり10億円から20億円程度といわれています。地下鉄建設には1キロあたり約270億円(4号環状化)かかっていることから比べれば、コスト面では断然有利です。地下鉄線の建設は、来年度から徳重までの延伸に着手する予定とのことですが、その後はどのようにするのか?考える時期だと思います。正直なところコストや需要を考えても、地下鉄の建設は非常に難しいと思われます。また高齢化社会の進展の中で階段を使って地下に降りるということは、高齢者にとって大きな負担になります。エレベーター・エスカレーターを設置するとしてもそのコストが跳ね返る訳です。

そこで、徳重まで延伸した後は地下鉄建設をやめて、LRTを導入整備することにしてはどうでしょうか。

広小路のにぎわいはLRTで

【さとう議員】
また、ヨーロッパでは、LRTの導入で、トランジットモールを整備して街のにぎわいを取り戻しています。

本市も広小路ルネッサンスとして中心市街地の活性化にも取り組んでいるわけですから、是非、広小路にLRTを導入して、活性化の契機にしてはいかがでしょうか?この点もあわせてお聞きします。LRTの導入は 名古屋市民に「夢」をかたり、公共交通機関中心の街づくりへの大きな契機になることは間違いありません。是非、決断するべきであります。

【市長】
LRTは、国も、その導入支援を目的とした「LRT総合整備事業」が今年度新設され、近年注目を集めている。ヨーロッパの都市では、まちの風景にあったデザインであるとともに、環境に優しく、高齢者や障害者に優しい乗り物であり,LRT自体が都市の魅力形成に大変大きな役割を果たしている。私もかつてフライブルグ、カナダのカルガリーを見た。それぞれ都市の成り立ちが違っているし、現在の状況が相当違っているから、いちがいにどこにいれるかということは難しい面と思っているが、これは新しい大変魅力のあるシステムと思っている。

名古屋交通戦略システムでも、LRTなど軌道系の新しい交通システムにおいて、調査・研究が必要であると位置づけられている。

こうした輸送手段の選択にあたっては、まずは、「どこにどのような公共交通サービスが必要なのか」、そうした議論をふまえて、そのサービスを担う適切な輸送手段を見極めていくことが必要だ。あわせて、その町の成り立ち、そういったものも総合的に考えていく必要がある。注目をしている。

環境面を重視した総合対策室に

【さとう議員】
先日、新聞報道で「交通政策室」を新設すると紹介されていました。課長級の室長に交通局、住宅都市局、緑政土木局の主査5人が交通担当主査を兼務・併任し各局横断型の総合的な施策づくりに取り組むということでしたが、この組織は具体的に何をするのか?たとえば、いま取り上げたLRT導入の研究などもするのでしょうか?

また、CO2の削減など「環境首都」を目指す本市として、もっと総合交通政策における環境面を重視する意味で環境局からも主査を入れた組織きにするべきだと考えますがいかがでしょうか?総務局長の答弁を求めます。

【総務局長】
「なごや交通戦略」の推進を図っていくためには、関連する施策を総合的に管理・調整していく役割とともに、新たな施策を具体化の軌道に乗せていく役割を果たす体制が求められると考える。このため、交通政策室を新設する。

「なごや交通戦略」の目標は「環境にやさしい交通」、「まちの賑わいを支える交通」、「「安全・快適な交通」の3点である。

これらの目標を達成するために、環境面も含めて関係局と連携を取りながら、施策の推進を図っていくことが、この交通政策室の役割と考えている。

《傾斜のある歩道の改善について》

生活道路の改善こそ「ポスト万博」

【さとう議員】
歩道の整備、特に傾斜のある歩道の改善について質問します。

名古屋市はこれまで道路を新しく通したり、広げたりと、車にとって便利なまちづくりをすすめてきました。その結果、いま歩道が歩きにくくなっています。自動車は、車道を快適に走ることができますが、いったん車を降りて、歩行者として街を歩けば、とても快適とはいきません。歩道は平らではありません。駐車場などへの乗り入れが作ってあり、傾いて、波打っています。非常に歩きにくい箇所が多くなっています。私の住んでる地域で高齢者が悲鳴を上げています。「歩道が歩きにくくてしょうがない」「傾いているので、歩いていると寄っていってしまう」「自転車をよけたら、隅の傾斜に足を取られ転んだ」「歩きにくいので、側溝のふたの上を歩く。蹴躓く危険があるが、水平で歩きやすい」。高齢者だけではありません。若いお母さん方からも「ベビーカーが隅の方へよっていってしまう」「ベビーカーが乗り入れの段差に引っかかって、子供が前に放り出された」などの声が寄せられています。

そこで、わたしは、多くの苦情が寄せられている、昭和区八事日赤交差点からいりなかへの歩道を調査してきました。車いすやベビーカーを実際に持っていって歩いてみました。車いすやベビーカーは、少し油断するとすぐに道路の隅にむかって回ってしまいます。手製の道具を使って調査した結果を紹介しますと、一番きつい勾配は15%程度あります。1メーターでおよそ15センチの食い違いです。(角度では8度から9度)。幅2メートルの歩道では30センチの食い違いができます。(パネル3を見せながら)調査の時の写真ですが、車いすがこんなに傾きます。八事日赤と杁中との中間に児童センターがありますが、その前でも8%くらいの勾配です。(4度から5.5度)幅2メートルで13センチから19センチの食い違いです。緩いところでも、杁中の聖霊病院のまえあたりは2%から3%です。それでも実際に歩いていて、歩きにくいのです。2メートルの歩道で7センチの食い違いです。

こうした勾配がどのくらいのものか、理解するために例をあげます。下りの道路で勾配が5%をこえると道路標識で急な下り坂として表示されます。アクセルをゆるめてもどんどん加速される状態になるので注意するようにということです。それよりも大きい勾配の所を傾きながら歩き、車いすなどを押していくわけですから、大変なんです。斜め歩道、すなわち傾いた歩道は高齢者・障害者にとってはバリアー(障害)になっています。ベビーカーや健常者にとっても歩きにくいのです。

こうした歩道をこのままにしておくわけには行かないと思います。名古屋が環境首都を目指すのであれば、こういうところにこそ、予算を回して、一刻も早く改善することが求められるのではないでしょうか。そこで緑政土木局長にお尋ねします。

一点目は市内の傾いた歩道の実態についてどのように把握しているのか。
二点目は歩道の傾斜について、基準はどうなっているのか。
三点目は、今日、紹介したような傾斜の大きな歩道について緊急に対応する必要があるのではないのか。また、計画を立て早急に歩道を改善する必要があるがどのように考えているのか

以上、当局の答弁を求めて、第一回目の質問を終わります。

【緑政土木局長】
2015年には4人に1人が65歳以上の高齢者となる本格的な高齢化社会を迎える中で、高齢者、身体障害者などだれにとっても利用しやすいことが求められている。昭和50年代を中心に整備をした歩道の中には交通安全を目的として車と人の分離をしておく必要から、既存の車道の高さを変えずそこに歩道を上乗せしたために傾斜の大きい歩道となっている。このような傾斜の大きい歩道は歩きづらい歩道となっている。

そこで傾斜の大きい歩道の状況を把握するために、平成6年度に調査を実施した。調査結果では、歩道の傾斜の改善が必要な道路延長が約67キロメートルあった。歩道の傾斜の基準は、国の道路構造令では横断勾配は2%を標準としているが、市は福祉都市環境整備指針により、沿道宅地の利用形態等により基準に適合した整備が困難な場合を除き、さらに基準を高め1%以下を基準としやむを得ない場合は2%以下としている。

傾斜の大きい歩道の改善では、歩道とともに車道の高さを同時に下げる必要があり、費用がかかる。改善の必要な道路延長約67キロメートルのうち、おおむね50%の整備が完了。残る路線も引き続き優先順位の高いところから改善をすすめていく。

今後の計画を示せ

【さとう議員】
答弁にあったように、国でも「LRT総合整備事業」が始まります。広島では、超低床式の電車をはじめはドイツから空輸で輸入したが、この3月から国産のLRTが走り始めます。国内でもLRTの技術開発が進んで、LRT導入への気運が高まっています。一昨日以来、この議場でもデザイン都市、環境都市と議論されていますが、それにふさわしい都市を造るために、また、CO2の10%削減という目標の達成のためにも、切り札はLRTの導入であると思っています。ぜひ検討を急いでいただくように希望します。

歩道の再質問。平成6年に調査して、67キロメートルのうち50%が完了ということでした。10年で30キロメートル少々なので、年平均3キロメートルということになりますが、実は、名古屋市の道路予算はこの数年間、万博のためにといって広小路路線の拡幅など大きい道路を造るところへ集中的に予算を使ってきました。そんな中で、こうした歩道の整備が遅れてきたのではないでしょうか。そして今度は財政健全化で予算を削られている中で、歩道の改善が遅れていくのではないかと危惧するものです。そこで改めてききますが、残っている30キロメートルの改善は引き続き進めるということでしたが、いつまでに行うのか、具体的に何年度を目標にどういった計画でやっていくのか。

【緑政土木局長】
10年間で年平均3.3キロメートルの整備をしてきた。厳しい財政状況の中着実に整備していく。

早急に歩道の改善を

【さとう議員】
10年で30キロだからあと10年かかるのか、そこもはっきり答えがなかった。目標を持って鋭意努力することが大事だと思います。今回調査してみて感じましたのは、不十分な歩道があるとかえって歩きにくいということです。歩道は交差点のところでスリ付けがあったり、無理しているので変なところにデコボコがあったり、整備してない歩道によってかえって歩きにくい、けつまずいて転んだりするのだと思います。一歩横に回れば歩道がない道路だとそこはスイスイと歩けるんだと思います。

共産党にも問い合わせとかいろいろ声をかけられて、「よそで転んだことがある、歩道が低くて」。高齢化社会の進行の中で歩道の改善は急がれていると思います。傾斜だけでなく、乗り入れについても考えなければいけないと思います。歩道の改善は目立たない仕事だが、日々の市民の暮らしに直結していると思います。そういう点で、「ポスト万博」はこうした生活道路の改善にこそお金を使うべきであります。早急に歩道を改善することを求めて質問を終わります。