議案外質問(9月21日) 山口きよあき議員

場外舟券売場・ボートピアの誘致をやめよ
大規模地震・津波への備えは大丈夫?

《港区への場外舟券売場の誘致計画について》

ボートピア計画をやめよ

【山口議員】昨年11月議会でも取り上げた港区築地口への場外舟券売場の建設問題です。

場外舟券売場の誘致を、地元の不安を押し切り強行する動きが強まっています。しかし近隣住民のギャンブル場建設への不安は、依然として解消されておらず、根強い反対運動がいまも続き、広がっています。

港区・築地口は名古屋市の海の玄関です。名古屋市の2010計画で市長は、名古屋港周辺を、水族館や歩いて楽しい水辺空間を持つ観光の街として、またアートポート事業や市民芸術村構想など文化の街として発展させることを、めざしていたのではありませんか。安心・安全な住環境、誇りを持てるまちづくり、そして観光と文化のにぎわいづくりこそ必要であって、場外舟券売場の建設は、本市がめざす港のまちづくりとは両立できません。

地元では、賛成反対で街が二分される状況が一年以上続いています。地元町内会の公式な意思表示は、反対が多数となった昨年の投票のままです。

「地元を二分するような状態になったときは建設を強行すべきでない」との通達もボートピア推進本部から出ています。「住民同士の対立はもうイヤです。以前のように自然に笑顔で挨拶できる街にしたい」これが地元の声なのです。

松原市長。あなたが、安心安全なまちづくり、市民との協働のまちづくり、誇りと愛着のもてるまちづくりをすすめると言うのなら、新たなギャンブル場となる場外舟券売場の建設には、同意すべきではない、と考えますがいかがでしょうか。

国の定める手続きに沿って対応を決める(市長)
【市長】場外舟券発売場(ボートピア)は、民間事業者が設置・運営主体であり、本市が自ら設置・運営する施設ではないが、国土交通省の通達により、その設置にあたっては、「地元町内会の同意、地元市町村長の同意、地元市町村の議会が反対を議決していないこと」の3点が設置の要件とされている。
この計画について、地元において様々なご意見があることは、私も承知しているが、ボートピア推進本部からは、地元である西築地学区連絡協議会並びに真砂町内会及び港本町一丁目町内会の同意が既に取得されていると聞いている。
一方、西築地学区連絡協議会から、設置を求める請願が市議会に対して提出され、去る7月12日に、総務環境委員会で請願が採択されている。まだ、本会議における議決は経ていないが、このことは重く受け止めている。
これらの状況を踏まえながら、国土交通省が定める手続きに基づいて、今後の本市の対応を決定していく。

いまどき新しいギャンブル場は必要ない(要望)

【山口議員】場外舟券売場の誘致計画ですが、市長からは手続きの詳しい答弁をいただきました。でも私は、あなたのまちづくりビジョンとの関係でどう考えているのかとたずねたのですが、そこには答えなかった。笠松競馬も廃止したら、との提言も先日出され、名古屋競馬のあり方も問われる時代です。名古屋市に、いま、新しいギャンブル場が必要ですか。
市長。ぜひ築地の町も実際に歩いて、しっかり考え、賢明な判断をしていただきたい。(傍聴席より拍手)

《大規模地震災害への備えについて》

津波や水害を防ぐ水際の対策について

【山口議員】次に予想される大規模地震への備えについて何点か質問いたします。

9月5日、防災訓練のまさにその日、二度にわたって揺れた地震は、東海・東南海・南海地震への備えを急げとの警告のようでした。来年は阪神淡路大震災からちょうど10年。本市の地震への備えは十分でしょうか。

この夏に配られた「あなたの街の地震マップ」では、港区など市内南西部は東海・東南海連動地震による液状化危険度が極めて高い地域になっています。また名古屋港では最大3.91mの津波も予測されています。

国や県の津波による浸水予測は、地震で堤防などが最悪2m沈み込むことまで想定しています。本市の地震防災対策推進計画では、その想定でも津波による浸水で避難が必要な地域は港区のごく一部だけとしています。つまり、たとえ地震で堤防が壊れても、津波による浸水被害はごくごく限定的だというのです。しかし堤防が壊れてもほんとうに大丈夫なのでしょうか。

襲ってくるのは津波だけではありません。この夏、私たちが体験したように、地震と台風、津波と豪雨が、同じ日に襲ったり、短期間に連続して起こることも十分に考えられます。

防波堤や河川堤防が地震で壊れても、想定される津波による浸水被害は、確かに防げるかも知れません。しかし高潮や豪雨による水害は、堤防が壊れたら防ぎようがないのです。阪神大震災では何ヶ所も堤防や防波堤が沈み込みました。幸い地震直後に、高潮も大雨もなかったから被害が広がらなかっただけです。

名古屋でも、港の防波堤や岸壁、河川堤防などは、みんな液状化の危険性が高い地域にあるのです。津波と水害への備えは万全でしょうか。

名古屋市として、早急にこれら水際の防災施設の点検と耐震対策をたてるべきではありませんか。水際の防災施設の管理者は、国や県、企業とまちまちとは思いますが、防災計画を所管する消防長の見解をうかがいます。

関係機関と連携し防災対策を要請する(消防長)
【消防長】名古屋港の海岸構造物のうち、高潮防波堤は国が管理をしており、防潮壁は名古屋港管理組合が管理している。河川堤防は、庄内川は国が管理し、新川、天白川、山崎川、扇川は愛知県が管理している。したがって住宅都市局や緑政土木局など関係局と連携を図り、海岸構造物などの管理者に対し、防災施設の点検など必要な防災対策を要請していく。

消防局防災室でしっかりと集中管理せよ(要望)

【山口議員】水際の防災施設の管理者はほんとにバラバラです。それぞれどうなっているか、現状をしっかりつかんでいただきたい。

ひとつだけ例をあげますが、国の管理する高潮防波堤の現状について国土交通省に聞いてきました。高潮防波堤は延長8キロ、そのうち知多半島側の約700mが地盤の関係で液状化し崩れる可能性が否定できない、改修が必要かどうか調査できるように予算要求しているとのことでした。名古屋市からも、早く調査してほしいと国に言うべきではありませんか。

東海・東南海連動地震の津波や液状化への不安が広がっています。地震マップの問い合わせ先は消防局防災室となっています。しっかり、集中管理して点検していただくよう要望します。

耐震診断、耐震補強のいっそうの推進を
耐震診断を受けての住宅建て替えに助成を

【山口議員】続いて住宅の耐震診断、耐震補強などについてうかがいます。

個人住宅への無料耐震診断と耐震改修助成が始まり2年。診断が必要な1981年以前に建てられた市内の住宅約17万棟からすると、今年3月末までの診断数5444件、改修助成170件は、ごくごくわずかな到達です。それでも、民間・個人の住宅にも積極的に助成し災害を予防するこの制度はおおいに評価できます。そこで私は、この制度の趣旨をさらに活かす方向で、いくつか提案したいと思います。

無料になった耐震診断を受けて、この際思いきって住宅を建て替えよう、という方が少なくありません。ところが住宅改修には助成されるのに、住宅の建て替えには助成がないのです。

耐震化のための住宅建て替えにも、改修助成と同様かそれ以上の助成をすべきと考えますが住宅都市局長いかがでしょうか。

建替えや新築への助成は考えていない(住宅都市局長)
【住宅都市局長】先の阪神淡路の大震災で亡くなった方の8割以上が、古い木造住宅の倒壊による圧死だったことから、市民の生命を守るという視点に立って古い木造住宅の耐震性能を向上させることを目的に、耐震改修助成を行っている。従って、現にお住まいの建物を改修・補強される方を対象としており、建て替えすなわち新築する方を補助の対象とすることについては考えていない。

賃貸住宅での耐震補強の推進を

【山口議員】次に賃貸住宅の対策です。阪神大震災では、長屋の63%、アパートの58%が倒壊しました。戸建て住宅の倒壊率39%よりうんと高い数字です。また神戸市内でもっとも死者が多かった東灘区では、長屋の全壊率が78%、アパートも60%が全壊し、こうした借家住まいの高齢者・低所得者・そして学生や若者がたくさん犠牲になりました。

いまの助成制度は、犠牲となる可能性が高いこのような借家住まいの方には無力です。何とかしたいと考えている大家さんにも活用しにくい制度です。

抜本的には、密集住宅市街地整備促進事業の活用など、住民合意による計画的なまちづくりが必要ですが、即効薬ではありません。

そこでせめて、一棟60万円までの現行助成制度を、賃貸住宅では一戸当り60万円×入居世帯数分として計算し、大家さんに助成するなど、柔軟な運用はできないでしょうか。大きな被害が予想される賃貸住宅の耐震補強をどうすすめるのか、住宅都市局長の見解をうかがいます。

集合住宅は1棟で1件だ(住宅都市局長)
【住宅都市局長】古い木造住宅の耐震性能を向上させることを目的とした改修助成制度は、住宅の規模にかかわらず一棟を対象としており、集合住宅についても同様である。

せめて一部屋だけでも安全に・・・家具固定化等の推進を

【山口議員】でも住宅改修だけを待つわけにはいきません。とりわけ賃貸住宅にも多くが暮らす高齢者など災害弱者へは「せめて一部屋だけでも安全に」という施策を急いでいただきたい。家具固定金具の取り付けを、シルバー人材センターが行っていますがなかなか普及しません。

ここからは健康福祉局長におたずねします。ヘルパーや訪問看護師、保健師や民生委員などの協力も得て、室内の安全度を診断し、せめて一部屋だけでも安全にする積極的な手立てが必要と考えますがいかがですか。

安全な部屋を普及するために、例えば希望者を公募して、いま暮らしている部屋を、具体的に改造して、近所の仲間が見に来られるような一種のモデルルームのようにしてみてはどうでしょう。

制度紹介の広報活動から、一歩踏み込んだ取り組みを求めます。

転倒防止金具をPRしている(健康福祉局長)
【健康福祉局長】シルバー人材センターに委託し、生活援助軽サービス事業を実施している。その中のサービスのひとつとして、家具の転倒防止金具の取り付けを行なっている。昨年秋以降「防災のしおり」や「生活援助軽サービスのご案内」のちらしの中で耐震留具をPRするほか「民生名古屋」で民生委員さんへの周知を図っているが、今後もこのサービスの利用促進を図るため、様々な機会をとらえ引き続きPRに努めたい。また、最近の地震の発生で、多くの問い合わせがある。
なお、こうした制度を活用し、耐震留具を設置された方が、その部屋を地域の方々に自主的に公開されることは、自助、共助の観点から好ましいことだ。

震災時の透析患者の安全と透析医療の確保を

【山口議員】また本市では、防災上重要な公共建築物の耐震化を6年後には100%にするとしていますが、この対象は、学校や消防署など防災拠点や避難所に限られています。私はこれらに加えて医療機関や保育園なども公的責任で耐震化を進めて、災害弱者への備えを強化する必要があると考えます。

例として、市内で4千人とも言われる人工透析患者への防災対策についてうかがいます。透析技術はずいぶん進歩しましたが、いまなお二日に一回、一回4時間ほどの透析が欠かせません。透析中に地震に襲われたら、との不安がつきまといます。そして震災直後でも一日おきの透析は中断できません。医療機関には震災直後も透析を続けてもらう必要があります。また患者の多くは身障1級であり、震災後の通院手段も不安だらけです。糖尿病から進行するなどしてこうした透析患者は年々増えています。

安心して治療が継続できるよう医療機関の耐震化は不可欠です。また震災後の通院手段の確保もあわせて必要だと考えますが、健康福祉局長の答弁を求めます。

耐震化の促進と緊急時の情報提供につとめる
【健康福祉局長】市内病院における耐震診断・耐震改修の実施状況は、平成14年度に愛知県が実施したアンケート形式による病院建物の耐震性に関する調査で把握を行った。本市としては、本年度、医療法に基づく定例立入検査時に再調査を実施し、順次確認している。未実施の病院に対しては、早期の耐震診断・耐震改修の実施を働きかける。
愛知県透析医会において災害時の透析ネットワークが整備されており、愛知県医師会の災害対策本部と連携を図りながら、独自に情報収集し適切な指示を出す体制がとられている。また、透析液原液など備蓄医薬品の確保は、愛知県透析医会において一定量の備蓄が行われている。震災後の応需可能な透析医療機関の把握を行うとともに、愛知県や関係団体と連携し、透析患者に必要な情報の収集と提供に努めたい。

震災時の保育園での安全確保を

【山口議員】最後に保育園です。公立保育園は耐震診断が終了し、必要な補修に取りかかろうとするところまできましたが、保育園の約半数を占める民間保育園の耐震化は、事実上各園まかせです。やっと今年度、避難所に指定されている4園の耐震診断が予算化されただけです。

保育園でも避難訓練は行いますが、ゼロ歳児を屋外に避難させるのはたいへんです。保育園そのものを安全な空間にすることが一番良いのです。

またある保育園で災害時のシュミレーションを行ったところ、職場から保育園には迎えに来れても、保育園から家に帰れないケースが少なくなかったそうです。帰宅困難者問題は駅やオフィス街だけではありません。いざというとき泊り込める食料や寝具など、保育園にも一定の備蓄が必要と痛感したそうです。

保育園はまた、震災の翌日からでも休まず機能することで、働き盛りの若い世代が、災害復旧に従事することをしっかり支える重要な施設です。

そこでうかがいます。耐震診断が必要な保育園はまだいくつ残っているのか、また保育園を防災上重要な公共施設として、市の責任で耐震診断と改修をすすめるべきだと考えます。

耐震診断はおくれている(健康福祉局長)
【健康福祉局長】民間保育所149か所のうち、現行耐震基準の施行前に設計された施設が106か所ある。この内、63か所は、耐震診断が必要かどうかを判断するための簡易診断がこれまでに実施され、19か所が耐震診断を必要とする施設となっている。なお、現時点では43か所の保育所で簡易診断が未実施と承知している。
保育所の耐震対策は、乳幼児の安全を確保するため、引き続き、簡易診断の早急な実施を勧奨するとともに、各保育所の診断結果を踏まえて、今後、必要な対策を検討したい。

災害弱者への対策をしっかり(要望)

【山口議員】地震にそなえた予防、耐震診断、耐震補強の重要性は繰り返しません。私はなかなか進まない耐震補強を、必要としている市民に、どうやって普及していくのか、おたずねしましたが、答弁をきく限りでは、いつになったら安心・安全なまちになるのやら、という気持ちです。

災害弱者へのきめ細かい防災対策、マンションをふくむ集合住宅への耐震対策をしっかり進めていただくよう要望します。せっかく市の建物だけでなく民間の建物にまで耐震化の助成を始めたのです、その方向性はおおいに支持します。その方向でぜひ、耐震対策を加速させていってください。