2014年6月定例会

山口清明議員の議案外質問②子育て支援を(ワクチン接種・18歳医療費・給食費の無料化を)(2014年6月26日)

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 子育て世代に選ばれる名古屋のために

【山口議員】健康づくり・予防医療の推進は名古屋市総合計画2018(案)の44施策のトップにもかかげられているように市政の大きな柱です。河村市長の下でのワンコイン検診と任意予防接種への助成、中学卒業までの医療費無料化など、この分野での取り組みは率直に評価したいと思います。山口自席s
 名古屋市の将来について、少子化と人口減少社会の到来、また都市間競争が強調されますが、本気で危機感を持つのなら、子育て世代に選ばれる都市、子どもの育てやすさナンバーワンの名古屋を目指すのが当然です。
 子どもたちのために予算を投じることは未来への先行投資。5年、10年、さらに将来を見据えた施策展開が必要です。
 ところが、現状の施策で満足しているのか、次期総合計画案にはこの分野の新たな施策は何も見あたりません。そこで、子育て支援施策のなかで、子どもたちの健やかな成長を保障し、あわせて保護者の負担軽減をはかる施策の拡充にしぼって、いくつか提案し、関係局長に答弁を求めます。

B型肝炎ワクチン接種費用の助成を開始すべきではないか
【山口議員】
名古屋市独自の任意予防接種への助成が広がり、国による定期予防接種の対象も拡大してきました。もうひとがんばり、ぜひ助成の対象に加えるべきものがB型肝炎ワクチンです。
 肝炎は、国内最大級の感染症であり国民病とも言われています。肝硬変や肝臓ガンへつながる危険も高く、その感染と発症の防止は大きな課題です。
 現在、母子感染対策はかなり浸透してきました。そして母親以外からの感染、いわゆる水平感染を防ぐには、生まれてすぐの子どもへのワクチン接種が有効とされ、現在は任意で予防接種が行われています。
 市立病院では年間約百人の赤ちゃんに接種しています。必要な接種は3回、現在の価格で5400円×3回=16200円の費用がかかっています。
 肝炎は、注射針の使いまわしなど国の予防接種行政の問題から大きな社会問題になった経過があります。子宮頸がんワクチンの副作用についても議論があります。
 問題点をしっかりと踏まえたうえで、予防医療ナンバーワンをめざすなら、B型肝炎ワクチンの接種費用も助成対象にすべきではありませんか?健康福祉局長の答弁を求めます。

国に対して、課題の早期解決を引き続き要望し費用対効果等を十分に確認しながら、検討を進める(局長)
【子ども青少年局長】本市の予防接種は、全国的に見ても極めて充実した内容となっている。B型肝炎ワクチンは、現在、国の専門家による会議で、公的接種として導入するために解決しなければならない医学的な現題が2点提起されており、結論を得るための調査・研究が、併せて進められている。
 予防接種は子どもにとって身体的な負担を伴うものであり、公的な予防接種として取り組むためには、こうした課題について、専門的な見地から一定の結論が示されることが前提であり、まずは国に対して、課題の早期解決を引き続き要望したい。
 いずれにしても、予防接種は有効な施策の一つですので、今後とも安全性、有効性、費用対効果等を十分に確認しながら、検討を進めてたい。

 18歳までの医療費無料化を
【山口議員】
中学生までの医療費無料化は市民にたいへん歓迎されています。子どもの医療費無料制度は、親の経済事情に関係なく必要な医療サービスを子どもたちに提供できる優れた仕組みです。
 全国1742自治体が導入しており、国として無料制度に踏みきることが強く求められています。そしていまでは原発事故による子どもたちへの影響も考慮した福島県をはじめ、全国あちこちで医療費無料化を18歳まで拡大する自治体が生まれています。
 名古屋でも子どもの医療費無料化を18歳まで延長することを提案します。
 現在、国民健康保険では18歳までの子どもには、保護者(世帯主)の保険料納付状況にかかわらず、必ず保険証を交付することを義務づけました。山口資料 
 なごや子ども条例では、「子どもとは18歳未満の者」と定義しています。この世代に対し医療を受ける権利を保障するのは国と自治体の責任です。
 対象は高校生だけではありません。名古屋市では全日制高校進学率が90%台前半です。働きながら学ぶ若者も少なくありません。この年代で働く若者の多くが不安定な非正規就労を余儀なくされ、経済的にも苦しんでいます。 
 そういう状態では食生活も乱れ栄養バランスも崩れがち。歯科の疾病などは、虫歯で死ぬことはない、と放置されがちです。こうした治療の放置が成人してからの病気につながりかねません。
 予防医療に力を入れるのなら、個々の疾病予防にとどまらず、大人になる前に健康状態を改善しきり、健康人として社会におくりだす、こんなスケールで考えてみませんか。
 成人前に、病気を治しきり、健康な生活習慣を身につけた社会人を増やすことは将来の医療費軽減にも有効です。長期的に見れば少ない費用で大きな効果を発揮します。
 予防医療の重視の名古屋だからこそ18歳までの医療費無料化をすすめるべきではありませんか。子ども青少年局長の答弁を求めます。 

全国トップクラスの制度。新たに10数億円の経費が必要。他のニーズも多い(局長)
【子ども青少年局長】指定都市では本市を含め6都市が中学生までの入院・通院医療費を助成対象とし、所得制限や一部負担がなく助成しているのは、本市とさいたま市のみで、トップクラスの施策である。
 平成26年度予算で約100億円を計上し、仮に18歳まで現在の医療費助成制度を拡大した場合は、新たに10数億円の経費が必要になる。
 子ども青少年局では、待機児童対策や在宅の子育て支援の他、様々な困難を抱えた子ども・若者の支援などさらに充実させていく必要があり、ニーズを見極め、施策の優先度を十分勘案しながら課題に取り組んでいく必要がある。

小中学校の給食無料化を

 保護者が義務教育9年間に負担している学校徴収金及び給食費はいくらか
【山口議員】
義務教育段階での学校給食無料化を提案します。なぜ給食無料化が必要か。
 第一に、子育てに関する保護者の経済的負担のうち学校給食費がかなりの比重となっており、その軽減が強く求められているからです。
 第二に、学校給食が教育の一環ならば「義務教育は無償」の原則が当然に適用されるべきだからです。
 第三に、格差と貧困が広がる中で、全ての子どもたちに、とりわけ成長期の子どもたちに、親の経済状態に左右されず、食育を通して健やかな成長を保障するためにです。
 さて、名古屋市内の義務教育諸学校の給食費の保護者負担はどうなっているのでしょうか。小学校では月3800円、年間41,800円。中学校のスクールランチは1食280円+ミルク代約50円、月20日だと6600円、年間すべて利用すると約5万5千円。利用率は約6割です。
 「義務教育は無償とする」のが憲法の要請する原則ですが、実際には教科書の無償配布以外は、さまざまな保護者負担が生じています。現状で「無償」と言えますか。
 教育長、義務教育の9年間で保護者が学校におさめる学校徴収金及び給食費はいくらか、保護者負担の現状を示してください。その負担額、重すぎると思いませんか、教育長はどう考えているのか、答えてください。山口資料6山口資料2

 9年間で42万円(教育長)
【教育長】保護者負担の現状としては、修学旅行費、学用品費等の学校徴収金は9年間で一人当たり約13万円、学校給食費は小学校給食とスクールランチをすべて喫食したと仮定すると9年間で約42万円となる。

給食費の負担額の認識はどうか。金のない人は給食を食べなくてもいいのか
【山口議員】
名古屋市のホームページには「学校給食は健康教育の一環(小学校)」とあり、スクールランチも「特色ある給食」と紹介しています。
 学校給食法では「義務教育諸学校において学校給食が実施されるように努めなければならない」とあり、給食は努力義務であり実施義務ではない、と読めます。
 しかし義務教育段階での給食は、やれるだけやればいい施策でしょうか。教育委員会はこの春、給食費の徴収を促すためとして、学校給食申込書の記入を保護者に求めました。
 この書類は一見すると契約書のようです。うちの子は給食いりません、と選択できるのですか、と市民から聞かれて私も困りました。
 教育長、学校給食とは、保護者が例えば経済的利用などで給食費の支払いを拒否し、子どもに食べさせないことも選択できる施策ですか。学校給食はお金を払う人へ食事を提供する「契約」にもとづくサービスですか。選択制のスクールランチも学校給食と位置づけていますが、義務教育における学校給食の位置づけについて、あらためて答弁を求めます。

 在籍するすべての児童生徒に対し提供し、食育推進の上で重要な役割(教育長)
【教育長】学校給食法に基づく基準により「給食は在籍するすべての児童生徒に対し提供されるもの」とされており、本市の小学校では、主食・おかず・ミルクによる完全給食を、中学校では、ミルク給食を行い、加えて弁当かスクールランチかの選択という形で学校給食を実施している。また、学校給食は、児童生徒に食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身につけ、健全な心身の育成を図るなど、食育を推進する上で重要な役割を担っている。山口資料4

子育て世帯の負担軽減、全ての子どもたちの健やかな成長を保障するために、学校給食の無料化に踏みだすべき
【山口議員】
学校給食は、教育の一環だと素直に考えてきました。しかしいま、中学校ではスクールランチも弁当も食べない生徒が存在します。
 昼食の時間、ミルクだけ飲み、教室からいなくなる生徒がいるといいます、みんなが何を食べているのか学校は把握できますか。
 市の調査では、朝食を毎朝とる子どもの割合も小学5年生から中学2年生になると男子で5ポイント、女子で9ポイントも減り、中学2年生では5人に1人が朝食抜きという現状です。山口資料5
 中学生にこそ、栄養バランスを考えた給食を保障することが、子どもたちの心身の健康な発達と成長に欠かせません。
 いま全国各地で小中学校での給食無料化に踏み出す自治体が増えており、実施しているところは住民からの評価も高いようです。
 学校給食法には、食材費は保護者負担とありますが、これは経費区分の問題で、保護者負担分を自治体が肩代わりすることは否定しておらず、無料化した自治体が法律違反と指摘された例を私は知りません。
 経済的な負担軽減には就学援助がありますが、援助が必要な世帯をもれなくカバーするのは難しい。たとえば名古屋市の就学援助利用率は小学校13.7%、中学校17.9%です。なぜ差があるのか。
 子どもが大きくなると所得が減るのか、そうではなく、子どもの成長に伴い増えてくる負担の重さに耐えきれずSOSを発信しているのではないでしょうか。
 教育長、子育て世帯の負担軽減、全ての子どもたちの健やかな成長を保障するために、学校給食の無料化に踏みだすべきではありませんか。山口資料1山口資料3

引き続き負担をお願いする。就学援助制度を利用すれば無料だ(教育長)
【教育長】学校給食費の負担額は、一食あたり小学校227円、中学校330円軽度の食材費相当額のみの必要最小限の負担で、引き続きお願いしたい。
 経済的にお困りの方には就学援助制度を利用することで無料となる。真に援助を必要とする方を的確に認定し、適切に就学援助ができるよう努めます。就学援助2012

ワクチン接種や給食費などの無料化を段階的にでも進めよ(意見)
【山口議員】
子育て世代に選ばれる名古屋のために、子どもたちの健康と保護者の負担軽減で三つの具体的な提案をしました。
 B型肝炎ワクチンは、公的接種には解決が必要な課題がまだあるとの答弁でしたが、任意接種のワクチンに独自助成してきたと自負しているのですから、国に課題解決を迫りつつ、保護者の負担軽減へとぜひ一歩踏み出していただきたい。要望しておきます。
 18歳までの医療費無料化。子ども局としては、相対的に遅れた施策の充実に力を入れたい、局配分型の予算編成方針の下ではそう考えるのもよくわかります。でもね、18歳まで見守るのが子ども局の責任です。
 給食費の負担、一食だとわずかなようですが積み上がると大きな負担です。
 今回、成長期の中学生にこそ給食が必要と強調しました。経済的にも高校受験を控えて負担が増える。朝食も抜きがちで健康状態も心配。中学校では在籍するすべての生徒に提供しているのはミルク給食だけです。
 お昼は学校が責任もって給食がんばるから、保護者のみなさんは朝食がんばって、と言える名古屋市になりたいと思いませんか。
 市内の小中学生は約16万4千人。一学年ずつとか、第三子、第二子への助成とか、まずミルク代からとか、部分的、段階的な負担軽減も考えられます。子育て支援の大きな柱として引き続き要求し、議論していきたいと思います。

18歳までの医療費無料化を(再質問)
【山口議員】
そこで市長に再質問します。子育てするなら名古屋、多くの課題がありますが、親の経済的負担の軽減が必要だという問題意識は共有できますよね。
 名古屋市の「子ども子育て家庭意識・生活実態調査」では理想とする子どもの人数(2.59人)よりも実際の子どもの人数(2.04人)が少ない。その理由をたずねると5割が「経済的に余裕がない」と回答しています。
 批判された子ども手当のような現金給付も否定しませんが、負担軽減が子どもたちの健康に直接役立つものを回三つ提案しました。
 それぞれ市長の見解をうかがいたいが時間もありません。一つだけ。市長、局長もその意義は否定しなかったと思いますが、子育て世代に選ばれるためにも18歳までの医療費無料化やりませんか、答弁を求めます。

熱心に研究している(市長)
【市長】えー、今、どえりゃあ熱心に研究しとるところでございます。

前向きに進めると理解していいか
【山口議員】
熱心に研究してるということは、前向きに進めるという方向で研究されていると理解してよろしいですか。

熱心だからそういうことではないか(市長)
【市長】
市長そりゃあ、どえらい熱心ですから、そういうことじゃないですか。

市長がその気になってイニシアティブ発揮すれば、十分実現できる
【山口議員】子ども局に配分された予算の中で実現するのは厳しいと思います。
 でも市長がその気になってイニシアティブ発揮すれば、十分実現できる。子育て世代に「名古屋は日本一子育てに力をいれているまち」と、メッセージを出せると思います。
 十数億円財源がかかりますが、いま名古屋市が障害者や子どもの医療費助成を行っていることで、国は国保への給付を13億7千万円もペナルティとして減額されています。
 国による自治体いじめのようなこのしくみを撤回させるだけで、少なくとも18歳までの医療費無料化をまかなう財源は十分につくれます。
 特別秘書まで設置されたそうなので、国にもはっきりこのことを言ってもらいたい。そうして財源も確保していただきたいと思います。

 病気も戦争も予防が大切です。でも方法は全く違います。
 病気の予防は、徹底して病気を防ぐワクチンなどの予防と、保健・健康増進、そのうえに、いざというとき頼れる医療機関も必要になります。備えが大事なんです。
 では戦争はどうか、心配だ、備えを固めろ、と軍備を備えれば備えるほど、構えれば構えるほど、緊張を高め、結果的に戦争を招くことになります。
 戦争の予防には、近隣職国や姉妹友好都市との間で、相互の交流を深め、名古屋港貿易など経済関係も発展させていく、国際紛争は武力ではなく交渉で解決するルールーをしっかりつくっていく。そういう方向こそ市民の命と平和を守る道だと、私は確信します。

 市長として自治体の長としてやるべきことは何か、その職責を誠実に果たすことを強く要望して質問を終わります。

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